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『サイタマノラッパー 
ロードサイドの逃亡者』
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サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者

(C)2012「SR3」製作委員会
『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』
〜魂のラップが、栃木で唸りをあげる!北関東ローカル青春ムービー第三弾登場!〜

(2012年 日本 1時間50分)
監督:入江悠
出演:奥野瑛太、駒木根隆介、水澤紳吾、斉藤めぐみ、
    永澤俊矢、ガンビーノ小林、美保純他

2012年4月14日〜シネクイント、5月5日〜第七藝術劇場、6月2日〜京都みなみ会館、他全国順次ロードショー
公式サイト⇒http://www.sr-movie.com/
 ローカルヒップ・ホップの星、「SHO-GUNG」が帰ってきた!インディーズ映画界に衝撃を与えた入江悠監督の『サイタマノラッパー(SR)』シリーズ。北関東ローカル青春ムービーとして第一弾は埼玉、第二弾は群馬を舞台にしてきたが、いよいよ第三弾が登場!栃木を舞台に、今回も絶望のどん底から魂のラップが湧きあがる。
 本作では第一弾で「SHO-GUNG」から脱退後上京した、実家がブロッコリー農家のマイティ(奥野瑛太)が主人公。イケイケのメジャーヒップホップグループ「極悪鳥」に所属するも、パシリばかりでライブで歌わせてもらえず、舞台に上がるチャンスをもらうために出演したラップバトルも決勝で負けることを命じられ、ついには事件を起こして東京から栃木へ逃げてくる始末。
 栃木では、盗難車を売りさばいたり、外国人や借金を返せない人たちを使って産廃処理を行う違法な仕事を手伝うマイティの姿が映し出される。田舎のワルが、さらに弱いものから搾取する構造は世の中の縮図。そんな洗いざらしの裏社会も田舎のロードサイド光景なのだ。更にワルたちが金儲けに企画した「栃木祭り」で埼玉代表「SHO-GUNG」と地元日光のラップグループ「征夷大将軍」が登場し、音楽の夢をあきらめたマイティと変わらず追い続ける「SHO-GUNG」のイック、トムとの再会の時が刻一刻と近づいてくる。
 随所に挿入されるラップもSRシリーズの持ち味だが、オーディション会場で、餃子屋で彼らのラッパーパワーがさく裂!ご当地映画ならではの日光東照宮や通常の3倍ぐらいある栃木特製ビッグ餃子に拝めたのもちょっとした収穫だ。手作り感溢れる野外フェスティバルシーン(栃木まつり)はまさにクライマックス。終始ワンカットワンシーンで被写体に肉薄していくキャメラが極限まで追い詰められたマイティをとらえる。
 上京して以来の再会となった「SHO-GUNG」の2人のうざいぐらいのラップの嵐に、封印したラップ魂を爆発させたマイティを観ていると、やはりラップは反骨の音楽と実感する。入江悠監督が描く魂のラップ映画は、何をやってもうまくいかないマイティの怒りや憤り、どん底を味わう姿を徹底的に描きながらも、どこか立ち上がれと背中を押している気がする。そしてイックとトムの姿を観ると、「おかえり!」と言わんばかりの愛着を感じている自分に気付くのだ。夢を諦めないご当地ラッパーと、どん底からの再生の旅はまだまだ続くと期待したい。

(江口 由美) ページトップへ

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