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★ラビット・ホール

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『ラビット・ホール』 (RABBIT HOLE)
〜人間だからこそ,前向きに生きていける〜

(2010年 アメリカ 1時間32分)
監督:ジャン・キャメロン・ミッチェル
出演:ニコール・キッドマン,アーロン・エッカート,
    ダイアン・ウィースト,サンドラ・オー,
    タミー・ブランチャード,マイルズ・テラー

2011年11月5日からTOHOシネマズ シャンテほか
シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ ほか全国ロードショー
公式サイト⇒  http://www.rabbitholefilm.com/
 携帯で息子の動画を見る夫を,妻は悲しげな表情で見ている。夫婦が4歳の息子ダニーを交通事故で亡くして8か月が過ぎていた。妻ベッカは家を売って転居すれば軌道を戻せるかも知れないと言い,夫ハウイーは何かを変えないとこんな状態は辛くて続けていけないと言う。2人とも出口を模索している。妻はダニーを思い出させる物を消したい,夫はダニーが生きていた証しを捨てられない,と言う。形は違っても深い悲しみに違いはない。
 息子は犬を追って車の前に飛び出した。その事故の状況を,ベッカは,感情に支配されず,理性的に考えている。とはいえ,理性では制御し切れない感情がこみ上げてくる。そんな自分に対する怒りの矛先を,つい外側に向けてしまう自分自身に対する困惑を隠せない。その複雑な心情を,ニコール・キッドマンが細やかに表出していく。特に,母親から喪失の体験を聞かされたときの表情からは,何かが胸に落ちた様子が鮮明に伝わってくる。
 母親に扮したダイアン・ウィーストの鷹揚とした佇まいが安定感を生み出している。夫婦の危うさとのコントラストが利いている。悲しみは消えないが重さが変わるという,至言が響く。のし掛かった大石はポケットの小石に変わり,時に忘れるがポケットに手を入れるとやっぱりある,でも何とかなる。この言葉とジェイソンが創作したコミックを通じて,ベッカは少しずつ明るさを取り戻す。あのとき車を運転していたのがその青年だった。
 彼もまた事故から逃れられずにいた。あの日別の道を通っていれば,などと別の可能性を考えてしまう。彼のコミックにはパラレルワールドが描かれていた。その世界観がベッカの目を開かせる。ここは悲劇バージョンでも,別バージョンで楽しくやっている私もいる。そんな別の自分の姿が見えたことで,希望の光が輝く。彼女は不条理な体験から目を転じられるようになった。救いは,外から与えられるのではなく,内側から生み出される。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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