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 ポエトリー アグネスの詩

(C) 2010 UniKorea Culture & Art Investment Co. Ltd. and PINEHOUSE FILM. All rights reserved.
『ポエトリー アグネスの詩』 (Shi(詩))
〜彼女は姿を消した,一篇の美しい詩を残して〜

(2010年 韓国 2時間19分)
監督・脚本:イ・チャンドン
出演:ユン・ジョンヒ,イ・デビッド,キム・ヒラ,アン・ネサン,
    パク・ミョンシン

2012年3月3日(土)〜銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館、
テアトル梅田、シネ/リーブル神戸、京都シネマ ほか全国にて公開
・監督インタビュー⇒ こちら
・公式サイト⇒
http://poetry-shi.jp/

 66歳のミジャが彷徨の末に開眼するまでの心の旅路が描かれる。彼女は,中学校3年の孫ジョンウクと2人で暮らしている。小学校3年のときの「将来詩人になるだろう」という先生の言葉を思い出す。文学教室に通って詩を書こうとするが,うまくいかない。講師は,詩を書くことは日常の中で真の美しさを探すことだと言う。ところが,ミジャは認知症で時々単語が出て来ない。言葉が失われていく不安。時間が流れ花も枯れるという現実。
 人生で一番美しかった瞬間。祖母に歌を教えたとき。子供が産声を上げたとき。ミジャは3,4歳頃に7つ年上の姉に「こっちにおいで」と言われたときだと語る。そのときの部屋に差し込む日差しが感じられ,斜め前から見た姉の表情が浮かんでくる。幻想的な美しさ。だが,美しいものがすなわち美しさであるとは限らない。叶わない愛の苦しささえとても美しい。詩の朗読会で卑猥な話をする警察官パクは,詩を冒涜していたのだろうか。

 数えで16歳のヒジン(洗礼名アグネス)が川に身投げした。彼女の同級生ジョンウクら仲良し6人組がこれに関わっていた。孫が犯した過ちに対する罪障感がミジャの中で広がっていく。重い現実がのし掛かる。だが,地面に落ちたアンズに触れたとき,彼女の心に閉じ込められた詩が翼を広げて飛び立った。ヒジンの母は,実っているのは渋いが,落ちたのはおいしいと言う。生まれ変わるために身を投げることもあるのだと気付くのだった。

 ミジャは,可憐な少女のような芳香を感じさせるかと思えば,生き抜くためのしたたかさを垣間見せる。釜山で働く娘に頼らず,孫のため500万ウォンを自ら調達する。波瀾万丈の人生だったと言う。きっと彼女自身の人生が起伏に富んだ一篇の詩なのだ。現世のパクがミジャの苦悩に対応し,冥界のヒジンがミジャの告白に感応する。目に映るものを描写するのが詩ではなく,それに投影した自身の心を書き留めるのが詩である。それが美しい。
(河田 充規)ページトップへ
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