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★オカンの嫁入り  (河田充規バージョン)
『オカンの嫁入り』
〜もう一度見直そう,家族のありがたさを〜
(2010年 日本 1時間50分)
監督・脚本:呉美保
出演:宮アあおい,大竹しのぶ,桐谷健太,絵沢萠子,國村準

2010年9月4日〜梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、三宮シネフェニックスほか全国にて公開
公式サイト⇒  http://www.okannoyomeiri.jp/
 オカンの陽子が15歳年下の研ちゃんを娘の月子との2人の生活の中に入り込ませる。月子は,研ちゃんと結婚するというオカンの心情が見えず,研ちゃんを受け入れられない。研ちゃんは,プチ家出をした月子の気持ちを慮り,冬の夜に縁の下でシュラフを使って寝ている。その研ちゃんが元板前だという設定が利いている。料理のおいしさが伝わってきて心が和む。研ちゃんの作った弁当がぎくしゃくした月子と陽子の間を橋渡ししてくれる。
 月子は,陽子が入院しているとき,研ちゃんに「このお弁当,私が届けていい?」と言う。それは私が届けるという宣言だ。そのとき,絶妙の間合いで月子の顔に笑みが浮かんでくる。心の底からムクムクと出て来たような,その笑顔がいい。それまで月子には不機嫌そうで何かを思い詰めているような表情ばかり見せられていたので,薄暗い中に差し込む一条の光の輝きが感じられる。監督の演出と女優の演技が綾なす至高のアンサンブルだ。
 また,1人でじっと庭を見詰めていた陽子が月子に気付いて振り返る。そのときの潤んだ目と何か言いたそうな表情が印象に残る。ストーリーが進むに連れて実に奥深いシーンだったのだということが分かってくる。彼女は一体何を考えていたのだろうか。月子の将来のことを考えていたに違いない。白無垢を着たオカンが娘に“ありがとう”という,その後のシーンに繋がっていく。そのとき母親と娘の間に流れる軽妙な空気感が味わい深い。
 研ちゃんは控え目で優しい。陽子は,研ちゃんのヘラヘラしているところがいいと月子に言う。陽子が勤める医院の院長先生や陽子らの大家のサクちゃんも,ほのぼのした感じで絡んでくる。これらの陽子と月子を取り巻く人々がまるで家族のようだ。東京出身の大竹しのぶと宮アあおいが味のある関西弁をしゃべっている。家族の温もりを感じさせるようで,監督のこだわりが伝わってくる。家族の有り様をじっと見詰める監督の視線が鋭い。
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★オカンの嫁入り (江口由美バージョン)
『オカンの嫁入り』
〜母の白無垢姿を見届けるまで〜

(2010年 日本 1時間50分)
監督・脚本:呉美保
出演:宮アあおい,大竹しのぶ,桐谷健太,絵沢萠子,國村準

2010年9月4日〜梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、三宮シネフェニックスほか全国にて公開
公式サイト⇒  http://www.okannoyomeiri.jp/
 関西弁が飛び交い、路地裏風情が懐かしい家族ドラマは、近所の人たちとの笑えるシーンもたっぷり交えながら、母一人娘一人で暮らしてきた主人公たちの知られざる秘密と母娘が真に向かい合う姿をじんわりと見せてくれる。
 月子(宮崎あおい)と母陽子(大竹しのぶ)は、幼い時に父親を亡くしてから、母娘二人で暮らしてきた。ある日、午前様で帰宅した陽子は、なんと金髪のリーゼント男、研二(桐谷健太)を連れて帰ってきた。しかも、その男と結婚宣言をしたから月子は思わず、隣に住む大家のサク(絵沢萠子)の家にプチ家出してしまう。仲むつまじい二人の姿に納得がいかない月子だが、月子も母に言えない心の傷に苦しんでいた・・・。
 ずっと二人で仲良く暮らしてきたからこそ、お互いのことを気遣って本当のことが言えなかった母娘の姿を、宮崎あおいと大竹しのぶが関西弁で時には取っ組み合いの喧嘩をもする熱演で本当の親子のようにリアルに表現している。意地になってしまう月子と、娘に認めてもらいたいと声をかけつづける陽子、そしてその二人を見守る研二の微妙だけど少しずつ距離が縮まる様子が微笑ましい。母娘を包む人たちと食卓の料理を囲んで語らい、時には言い争うシーンの数々に、家族のドラマは食卓から生まれるのだと再認識した。
 母という立場だからこそ、それまで語れなかったこと。娘だからこそ心配かけまいと母に言えなかったこと。それらが語られるまでの葛藤や、事実を受け入れる姿はある意味誰しも経験したことではないだろうか。完成披露試写会に登壇した呉美保監督は、「前作の『酒井家のしあわせ』同様、今回も家族のカタチを描けたことがうれしく、ありがたいことで、家族の姿やいろんな人の姿を見てもらった方に投影してもらいたい。」と語っていた。徹底的にリアルに、家族の日常の姿にこだわって描く作風は見ていて本当に暖かい気持ちになれる。「これからも家族のカタチを描いていきたい。」という呉美保監督の静かなる情熱が生みだした平成の母娘物語だ。
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