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★ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ

(C) 2009 Lennon Films Limited Channel Four Television Corporation and UK Film Council. All Rights Reserved.
『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』
〜あのジョン・レノン誕生の前には何が…〜

(2009年 イギリス 1時間38分)
監督:サム・テイラー=ウッド
出演:アーロン・ジョンソン,アンヌ=マリー・ダフ,クリスティン・スコット・トーマス,デヴィッド・モリッシー,デヴィッド・スレルフォール,トーマス・ブローディ・サングスター

2010年1月5日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー
公式サイト⇒ http://nowhereboy.gaga.ne.jp/

 17歳を迎える1人の青年が自我を確立していく様子を描いた作品で,舞台はリバプールだ。イギリスの青春映画らしく,ビターな味わいがある。1940年生まれの彼は,5歳のとき伯母に引き取られ,伯父と伯母に育てられてきた。ところが,伯父が亡くなった後,実母(伯母の妹)と再会する。謹厳実直な伯母ミミと自由奔放な実母ジュリア。この2人の母親との関わりを軸として,ポールとの出会い等が描かれる。彼の名はジョン・レノンだ。
 あのビートルズのジョン・レノンではなく,どこにでも居そうな一青年としてジョン・レノンを描いている。本作は,ビートルズについて詳しく知らなくても十分楽しめるビートルズに関する映画という意味で,「バックビート」を思い起こさせる。ただ,本作では,主役のジョンの印象が少し薄くなった嫌いがある。2人の母親が魅力的に描かれている反面,彼女らとの関係から生まれるジョンの孤独感や葛藤が十分伝わらなかったからだろう。
 ミミは,自分の役割を終えたような感じで,ジョンの自立を静かに見守っている。一方,ジュリアは,ジョンとの空白の期間を取り戻そうとするかのようだ。だが,ジュリアには夫と娘がおり,その家庭の中にジョンが入り込む余地はない。ジョンは,伯父が亡くなった後,自分の居場所と進むべき方向を模索していたに違いない。それは5歳のとき実父母に捨てられたかも知れないという思いとは異なるものだ。両者を並行して描くのは難しい。
 ミミとジュリアは,ジョンを巡る長年の確執を乗り越える。だが,穏やかな時間は長くは続かず,唐突に断ち切られる。振り返ってみると,本作は,ジョンとジュリアとの蜜月のような関係を描き,ジョンが音楽へと導かれた原点を確かめようとしたに違いない。しかも,1950年代を背景としながらも,レトロな感覚はあまりない。その時代が衣装や美術等によって生き生きと再現されているからだろう。これにより普遍的な青春映画となった。
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