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★マネーボール
『マネーボール』 (Moneyball)
〜大選手になり損ねた男ブラピの敗者復活戦〜

(2011年 アメリカ 2時間13分)
監督:ベネット・ミラー
出演:ブラッド・ピット、ディミトリ・マーティン、
    フィリップ・シーモア・ホフマン、ロビン・ライト

2011年11月11日より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
公式サイト⇒  http://www.moneyball.jp/
 あのノムさん(野村克也元監督)が40代ならこんなジェネラルマネージャーになっていただろう。早くからプレイングマネージャーとして監督を務めていたノムさんが、この映画のようにGMの言う通り選手起用を決めることなどありえないだろうが…。
 5拍子そろった万能選手として将来を嘱望されて大リーグ入りしながら大成せず、スカウト転身、そこで独自の才能を発揮したビリー・ビーン(ブラッド・ピット)の野球に対する考え方はノムさん理論とも共通する。貧乏球団を金をかけずに強くする、なんて野村元監督がやってきたこと。ポンコツと見られたロートル選手をトレードか買って(金銭トレード)きて甦らせて見せた有名な「野村再生工場」。その手腕と見る目があれば、映画のような快挙も可能かも知れない。
 GMになったビリーはイエール大卒のエリートだが野球音痴のピーター(ジョナ・ヒル)と出会い、彼が主張するデータ重視の経営理論に共鳴。オーナーや監督の反対を無視して「マネーボール作戦」を実践していく。 実力選手が3人も抜け、代わりの選手を雇う予算は少ない。ビリーとピーターは予算内で採れる選手をリストアップし、候補選手の秘められた可能性を厳しくチェック。すでに結論が出ている選手に新たな可能性を見いだしていく…これこそ“野村再生工場”の秘密だった。
 この2人の革命的な経営理論は、スカウト仲間に猛反対されるが強引にビリーが押し切り、シーズンに入るとアート監督(フィリップ・シーモア・ホフマン)の抵抗にあい、結果を出せない。そこでビリーは監督が好んで起用する選手ペーニャを電撃的にトレードに出し、ビリーたちが取ってきた選手を強引に使わせる…。
 少なくとも日本ではこんなことは不可能だ。ある有名監督は大物外国人選手を起用せよと球団社長から命じられて激怒し、オーナーに直訴、オーナー直々に慰留して収めた事件もあった。ビリーもこの監督ぐらいオーナーの信頼を得ていたのだろう。2人はごり押しして、シーズン後半に入ると、リーグ新記録20連勝という世紀の快挙を実現して2人の理論が間違っていないことを実証する。シーズンでは結局敗れるが、ビリーは破格のギャラでレッドソックスからオファーされる。

 野球シーンはあるが“野球映画”とは言い難い。だが、これは野球ファンがうなるような野球の魅力にあふれ、野球の神髄に触れた映画である。
 ブラピはロバート・レッドフォード監督の「リバー・ランズ・スルー・イット」に出た時、レッドフォードの若いころそっくりだった。「マネーボール」のブラピも“その後のレッドフォード”に見える。彼は47歳の時、野球映画「ナチュラル」で存在感を発揮したが、ブラピもまた47歳で“野球映画”を自らプロデュースして主演。不思議なほどダブる。レッドフォード「ナチュラル」はカムバック選手の哀歓を謳いあげた映画、ブラピ「マネーボール」もまた大選手になり損ね、スカウトとして新たな経営理論を確立した男のリターンマッチ映画という共通項もある。

 二枚目スターがくたびれオヤジを演じることが出来るようになれば一人前、というマイセオリーはアメリカでも通用することが分かった。オヤジ・ブラピはくたびれておらず少々カッコ良すぎるが。

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