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きっと ここが帰る場所

(C) 2011 Indigo Film,Lucky Red,Medusa Film,ARP,France 2 Cinema,Element Pictures,All Rights reserved.
『きっと ここが帰る場所』(THIS MUST BE THE PLACE)
〜ナイーヴな心が放浪の果てに見つけた“素の自分”〜

(2011年 イタリア・フランス・アイルランド合作 1時間59分)
監督:パオロ・ソレンティーノ
出演:ショーン・ペン、フランシス・マクドーマンド、
    イヴ・ヒューソン、ハリー・ディーン・スタントン

2012年6月30日(土)〜ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマライズ、ほか、全国順次ロードショー
7月7日(土)〜シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、7月14日(土)〜シネ・リーブル神戸、7月21日(土)〜京都シネマ
公式サイト⇒ http://www.kittokoko.com/
 濃いアイメイクに赤い口紅のショーン・ペンに、一瞬ぎょっとさせられるが、彼の役柄は、かつてロック界で一世を風靡したスーパースター、シャイアン。あることがきっかけで彼は一線を退き、ダブリンの町で、消防士の妻と穏やかに暮らしている。シャイアン・オタクの少女をはじめ、近所の人たちとつきあいながら、以前とは違う地味な毎日を過ごしている彼のもとに、アメリカにいる父親が危篤だという知らせが入った。飛行機嫌いの彼は船でニューヨークに向かうが…。
 父親の宿願を知ったシャイアンが、一人、アメリカ横断の旅に出て、いろいろな人間と交差するあたりから物語がどんどん動き出す。癒されない心の傷を持ち、口数少なく、笑顔などほとんど見せないシャイアンが、積極的に人と交わることで、彼自身が変わり、出会った人間にも忘れられない何かを与えていく。大人になり切れないシャイアンの純真さや、「だけど、時々、何かが変だ…」と感じる繊細さを隠していたのが、派手なメイクアップだったのだと気づかされる。これは、一人の男が心を開いていく過程を綴るとともに、家族や親しい人とのきずなをもう一度しっかり結び直す物語なのだ。
 演技派で知られるショーン・ペンだから、観る者の目を惹きつけてやまないし、サバサバした妻を演じるフランシス・マクドーマンドは、まさにはまり役、名優ハリー・ディーン・スタントンの渋さにも打たれる。さらに、洋楽ファンを狂喜させるのが、本人役で姿を見せる元トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンだ。本作の音楽を担当しているだけでなく、ライヴシーンやショーン・ペンとの絡みもあるから、何とも贅沢!
 監督パオロ・ソレンティーノは4作目『イル・ディーヴォ』の成功により、ショーン・ペンに注目されたイタリアの俊英。小さなドラマを綴れ織りのように組み合わせて、大きなドラマへと仕上げる手腕を感じさせ、今後の活躍が期待される一人だと思う。

(宮田 彩未) ページトップへ

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