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★あしたのジョー

(C)2011 高森朝雄・ちばてつや/「あしたのジョー」製作委員会

『あしたのジョー』
〜いまも男の心を熱くする、ジョーの闘い〜

(2011年 日本 2時間12分)
原作:高森朝雄・ちばてつや(「あしたのジョー」講談社版)
監督:曽利文彦 
出演:山下智久、伊勢谷友介、香里奈、香川照之、津川雅彦

2011年2月11日(金・祝)〜全国東宝系ロードショー
公式サイト⇒ http://www.ashitano-joe.com/

 累計発行部数2500万部以上という1960年代の伝説的漫画の映画化。映画の舞台も60年代だが、あの時代に確かにあった青年の反逆精神を現代に甦らせるのに成功した感がある。力作。

 昭和40年代、東京・下町で矢吹丈(山下智久)はケンカに明け暮れていた。元ボクサーの丹下段平(香川照之)はそんな彼に天性のボクサーセンスを見出す。ケンカして少年院に入ったジョー(矢吹)は誰彼なしにケンカをしていたが、丹下のハガキ指導を所内で実行する。金持ちでジムを経営する葉子(香里奈)に勧められ同じく少年院にいる世界ランク級のプロボクサー力石徹(伊勢谷友介)と対戦。丹下の予想「1回KO」の予想を覆し、ジョーの必殺クロスカウンターで両者ノックアウトという予想外の決着をみる。それが“永遠のライバル”との最初の対戦だった…。

 周囲すべてが敵というようなジョーの闘争心、反骨魂に惚れ惚れする。NEWSの山下がジョーをまったく笑いを見せず熱演。ライバルの力石役、伊勢谷もまた、反骨男ジョーととことん戦う男を演じて見応えがあった。

 ジョーと対戦する必要などないのに「やつと決着つけてから世界を狙う」という力石は過酷な減量を行い、フェザー級から1階級落として軽量級のジョーとの対戦に臨む…。
伝説的な漫画だから結果は知っている。だが、それでいてつい引き込まれてしまう。「わけもなくイライラして」暴れていたジョーがボクシングと力石と出会ってようやく生きる目標を見いだした。力石もまた、天才的なジョーと戦うことでボクサーとしてのアイデンティティーを見出だした。それほど運命的で宿命的なジョーVS力石、自らのすべてをかけた激突に力がこもるのは当然だろう。

 両腕をだらりと下げるノーガードの姿勢で、相手に打たせるだけ打たせ、相手が止めを刺しにきたところを相手の力すら利用してクロスカウンター1発で倒すジョーの戦いぶりは、悲愴で痛々しい。それがおのれを傷つけることでしか敵を倒せないジョーという男の生きざまなのに違いない。 日航機をハイジャックして北朝鮮に向かった連合赤軍の面々(リーダー田宮高麿)は「我々はあしたのジョーである」と宣言した。圧倒的な力量の敵におのれを捨てて絶望的な戦いを挑むジョーに、メンバーたちは自分たちの生きざまを見たのだろうか。古くはカーク・ダグラス「チャンピオン」(49年)、ポール・ニューマン「傷だらけの栄光」(56年)、日本では昨年の「ボックス」が記憶に新しい。ハングリー精神と破格の栄光。ボクシング映画はやはり面白い。その原点が「あしたのジョー」にあることを改めて思い知らされた気がする。

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