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★ファウスト |
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『ファウスト』 (Faust)
〜終盤に展開する圧倒的な映像美に目を見張る〜
(2011年 ロシア 2時間20分)
監督・脚本:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:ヨハネス・ツァイラー,アントン・アダシンスキー,
イゾルデ・ディシャウク
2012年6月2日(土)〜シネスイッチ銀座、梅田ガーデンシネマ、
近日〜京都シネマ、神戸アートビレッジセンター ほか全国順次公開
公式サイト⇒
http://www.cetera.co.jp/faust/
*2012年ベルリン映画祭金熊賞受賞
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天上に時計が浮かぶソクーロフ監督らしいシュールな映像の後,カメラが降下して岩山が映される。地上ではファウストが人体を解剖して魂を探しているが,生きる意味は見つからない。学問で心は満たされない。悪魔の化身のようなマウリツィウスによると,魂は硬貨より軽い存在だ。ファウストは「はじめに意識ありき」と言うが,マウリツィウスは意識ではなく業(わざ)が先だと言う。人間は果たして崇高な存在となり得るのだろうか。
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ソクーロフ監督は,ゲーテの原作を基に自由に翻案したと最初に断っている。メフィストフェレスは,マウリツィウスという醜い肉体をさらける金貸しとして登場する。悪と富が一体となった権化のような存在だ。ファウストは,マウリツィウスに操られるようにマルガレーテに見惚れ,彼女の兄ヴァレンティンを刺し殺す。その後,ファウストを訪ねたマルガレーテの表情は神々しく,射抜くようで,同時に挑むように見える笑みを浮かべる。 |
ファウストは,マルガレーテを手に入れるため,マウリツィウスに魂が肉体を離れたらそれを引き渡すという契約をする。そして,マルガレーテを背後から抱き締めて重なり合うように水中に消えていく。はっとするがすぐに安らいだような,そのときのマルガレーテの表情が印象的だ。2人だけの至福の時が流れるが,時計は止まっている。ファウストを動かしていたものは,マウリツィウスが言うように,ただの肉欲にすぎないのだろうか。 |
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クライマックスは,息を呑むほど力強く美しく,開放感に満たされていく。ファウストは,深い森の中に入り,狭い岩間を通り抜けていく。“無”の中に入ると,ヴァレンティンがいて“死”への感謝を述べられる。噴水のように吹き上げる温水は,生命の躍動を感じさせる。ファウストは,マウリツィウスを封印して,天使の声に誘われるように白く輝く世界に向かって進んでいく。人生の山と谷を放浪するのではなく,夢の中へ駆けていく。 |
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(C)2011
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