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★エンディングノート

(C) 2011「エンディングノート」製作委員会
『エンディングノート』
〜人生最期のプロジェクト、一部始終お見せします〜

(2011年 日本 1時間29分)
監督:砂田麻美 
製作・プロデューサー:是枝裕和 
出演:砂田知昭他

2011年10月1日〜新宿ピカデリー、梅田ガーデンシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、元町映画館他で全国一斉公開
公式サイト⇒  http://www.ending-note.com/
 是枝監督作品の助監督をつとめた経験を持つ砂田監督が、デビュー作として世に送り出したのは父親が最期の時までを綴ったセルフドキュメンタリーだ。大手メーカーで重役まで勤め上げた段取り命の父が、第二の人生を歩み出したときに発覚した末期がんと余命宣告。
人生最後で最大のプロジェクトに臨む様子を、軽快なタッチでみせる新鮮な感覚に注目したい。
 生前の父親の姿や声に、監督自らが担当する「天にいる父親役」のナレーションが重なり、建前と本音が入り混じったような滑稽さを感じさせる。自らの葬儀までやらなければならないことを段取りよくこなしながら、エンディングノートに家族へ遺すものを綴っていく砂田氏。その様子を追いかけるだけでなく、今まで撮りためてきた結婚当初や子どもたちが小さかったときの映像を交え、夫婦や家族の歴史にも触れていく。会社人間だった父親と母親の間に少なからず亀裂があったことも、天の声は冷静に語るのだ。
 他人の家の出来事ながら、「死」という題材を臨終のそのときまでつぶさに見せられることで、わが身に置き換えて家族を見送ることを疑似体験させてくれる。死の瞬間まで家族の前で父親の姿を崩さない主人公の精神力に感服したり、死の直前に初めて妻に「愛している」と告げたときの妻の表情と「もっとやさしくしていれば・・・」との言葉が頭の中で鳴り響いたり。見れそうで見れない他人のエンディングは、思った以上の気づきを与えてくれる。
 何よりも、主人公自身が死期を受け入れ、最後まで前向きに死と向かい合ったように、最後まで父親や家族にカメラを回すことを家族が受け入れたことに感銘を受けた。娘でありかつドキュメンタリーの作り手として、その仕事を全うし、死を迎える人とその家族の葛藤や繋がりをユーモアを交えて描いた砂田監督。そのバランス感覚と軽快なタッチは、ドキュメンタリー界に吹く新しい風かもしれない。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
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