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★借りぐらしのアリエッティ |
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『借りぐらしのアリエッティ』
〜規則正しく美しく。
ジブリに習うつましい生活習慣と身の丈にあった暮らし〜
(2010年 日本 1時間33分)
監督 米林宏昌
企画・脚本 宮崎駿
声の出演 志田未来 神木隆之介 大竹しのぶ 三浦友和
樹木希林 竹下恵子 藤原竜也
2010年7月17日 全国東宝系ロードショー
公式サイト⇒
http://www.karigurashi.jp/index.html
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スタジオジブリの最新作と聞くだけで、勝手に「満足度」のハードルをあげてしまうのは我々の悪いクセだ。一流ブランドだけに、ついつい期待を膨らませすぎてしまう。それで大当たりの時もあるが、今回だけはギアを入れずニュートラルな状態で見ることをオススメする。内容が悪いわけではないが、過去作品に比べるとかなり静かで大きな展開もないので、とても地味な印象を受ける。ジブリは世代交代として、37歳の米林宏昌を監督として選出したようだが、“宮崎アニメ”ファンからすれば、宮崎駿には生涯現役を貫いてほしいところだ。現在69歳。クリント・イーストウッドだって80歳なんだから、引退はまだまだ先延ばしでお願いしたい。
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原作はイギリスの児童文学『床下の小人たち』。体長10センチの主人公・アリエッティは、寡黙でたくましい父と心配性の母と3人で、ある老婦人が暮らす屋敷の床下に家を構えている。水や電気、砂糖やティッシュなどの生活用品は人間から借りてくるのだが、小人は人間に姿を見られてはいけないため何事も慎重に行動せねばならない。だが、ある日。アリエッティは屋敷へ病気療養のためにやってきた少年・翔に姿を見られてしまう。そのハプニングをきっかけに穏やかだった小人家族の均等が崩れ始め…。 |
物語にあまり目立った起伏はないが、小人目線で見る人間の暮らしは新鮮な驚きに満ちている。アリエッティと父が生活用品を“借り”にでかける一連のシーンは、未開の地に足を踏み入れるようなスリルがある。両面テープを足に貼り付けて器用にテーブルをのぼる父、拾ったマチ針を剣のように腰にさすアリエッティ。普遍的で見慣れたものを宝物のように扱い、ささやかな日常を冒険に変えてしまうのは、まさにジブリマジック。目で見えるものだけでなく、音の演出にも凝っているので、“借り”の場面やアリエッティの母がさらわれてしまう場面は、自分も小人になったような世界観を体感できる。 |
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それに、絵もすこぶる美しい。できれば一時停止してじっくり見入りたいくらいだ。しかし、それでも地味な印象は変わらない。というのも、本作は意外とシリアスで子供が楽しめるような、ひと目見て面白く可愛いものが出てこない。つまり、フッと笑いを誘うボケの脇役がいないのだ。樹木希林が声を当てるお手伝いのハルさんは、小人嫌いとして物語をかき回す役なのだが、彼女の行動はコミカルというよりイジワルさの方が勝っていてちょっと怖い。(“借り”をはっきり“泥棒”と言ってしまったり、小人を“駆除”するためにネズミ捕り業者を手配したりする。)動物では唯一、アリエッティと翔をつなぐ重要な役割で太った猫が出てくるが、それもただの猫の範囲をでないので、最初から最後まで真面目な印象は拭えない。 |
だが、この映画はこれでいいのだ。つつましく暮らす小人たちを通して、贅沢になりすぎた暮らしと、物を大切にする心を見つめ直すことができるから。劇中で出てくる「人間と小人、滅びゆく種族はどちらか」というセリフには、資源の無駄遣いに警告を投げかけているようにも感じられる。アリエッティの小さな初恋と冒険を楽しむ一方で、“身の丈”にあった暮らしとは何か、を考えさせられる作品でもある。 |
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