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京都映画祭報告〜祇園会館より〜

 平成20年10月8日に開幕した京都映画祭。祇園会館で行われているマキノ映画の上映についてお伝えします。


  初日のオープニングセレモニーでは、マキノ雅弘監督の甥の長門裕之さんと、監督の長女のマキノ佐代子さんがゲストとして登場。映画評論家の山根貞男さんの司会で、マキノ映画がますます観たくなるような、笑いあふれる楽しいトークが展開。

 マキノ監督はラグビーが好きで、人間の生き方もアタックとディフェンスで全部言い尽くせるとか。例えば「愛してるよ」というセリフも二つの言い方があって、中村錦之助、鶴田浩二、長門さんらはそれを教え込まれたそうです。お客さんに楽しみ、喜んでもらえる作品こそ最高の映画だ、というのが信条だったマキノ監督。生涯260本以上の作品群の中でも、長門さんお薦めの作品は、『阿片戦争』(’42市川猿之助)、『男の花道』('41長谷川一夫)、『日本侠客伝』('64、高倉健)。

  2日目には、里見浩太朗さんがゲストで登場。駆け出しのやくざを主演した『神田祭り喧嘩笠』('60)では、「やくざと思ってやるな。最後だけやくざになればいい」と、気の弱そうな、なよなよした稽古をつけられたそうです。立ち回りでは、マキノ監督自ら刀を使って演技をつけてくれたり、ラブシーンでは、監督が女優の役をやって見せてくれたりと、とにかく上手かったそうです。人間はこういうときにどう動くか、を教えてくれた監督で、例えば「さよなら」の言い方でも、明日また会える「さよなら」と、いつか会えるかもしれない「さよなら」と、二度と会えない「さよなら」で、どう違うかを教えてくれ、本当に学ぶことが多く、しかも身につく教え方だったそうです。

 3日目には、東映マキノ組で助監督をつとめたベテラン監督3人による座談会が行われました。「トラック野郎」シリーズの鈴木則文監督、「日本の首領《ドン》」シリーズの中島貞夫監督、『Wの悲劇』『早春物語』の澤井信一郎監督が揃い、山根貞男さんの司会で、マキノ監督の撮影現場に迫るおもしろいエピソードが続出しました。


 澤井監督によれば、マキノ監督は、フレームの中に一人しか映っていないのが嫌いだったそうです。というのも、少しぼけていても、話し相手も一緒に画面に入れ込んだ方が、動きが生まれるからとか。鈴木監督も、セリフを言う人よりも、聞いている人を写した方が感情の起伏が出るし、話を聞く人の背中からも感情が流れ出るとコメント。喋っている人間を一人ずつ順に撮って、編集でつなげることによってできる“編集の間”ではなく、全員を同じ画面に一緒に撮ってできる“芝居の間”こそ、マキノ監督の魅力だ、とは澤井監督。また、中島監督によれば、マキノ監督は、役者の芝居の“間”をみながら、自らカメラを押して、カメラが動く速さを加減していたそうです。また、マキノ監督に教わったのは、映画をおもしろくするのは脚本であり、脚本の段階でおもしろくしておかないと、現場の撮影でどう頑張ってもおもしろくならないという澤井監督の話には、中島監督もうなずいておられました。

 男と女の物語を一番に考えていたというマキノ監督。三人が薦める作品は、鈴木監督が『鴛鴦歌合戦』(‘39)、澤井監督は泣ける作品として『婦系図』(‘42)、中島監督は「次郎長三国志」の中でも、中村錦之助主演『清水港の名物男 遠州森の石松』(‘58)

 自らも映画を撮っているからこそ出てくるコメントの数々は、映画を観るうえで、示唆に富み、おもしろいことばかりでした。マキノ監督の撮影現場での熱意あふれる姿や、俳優や助監督らにも心づかいを忘れない優しさを知ることができ、感慨深い座談会でした。

  阪東妻三郎、嵐寛寿郎、片岡千恵蔵、長谷川一夫、月形龍之介、鶴田浩二、大河内伝次郎、中村錦之助、高倉健、藤純子と、数々の日本映画のスターたちの作品を撮ってきたマキノ監督。今回は、それぞれのスターを中心に、これは見落とせない、というものが、上映作品に選定されました。中には、『続清水港』('40)のような、舞台「森の石松」を稽古中の演出家がタイムスリップして、江戸時代にいき、しかも自身が当の石松になっているという奇想天外な作品もあります。どの作品もユーモアにあふれ、テンポよく、活気あふれる会話に満ち、役者たちのパワーが全開しています。

ぜひ、またマキノ映画のおもしろさに触れてみてください。

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 京都映画祭 『マキノ雅弘監督』に寄せて
『第六回◆京都映画祭』に寄せて
〜群像劇の名手、マキノ雅弘監督〜


  私が初めて出会ったマキノ雅弘監督の作品は『鴛鴦歌合戦』(1939年)だ。サイレントからトーキーへの転換期につくられた和製オペレッタ、ミュージカル時代劇。骨董品の茶碗を愛でながら「♪こーれ、これこれ、この茶碗……」と歌う志村喬、「♪僕は若い殿様〜」と歌いながら登場するディック・ミネ、浪人侍なのにのんびりと楽しそうに絵傘づくりをしている片岡千恵蔵と、どの登場人物も楽しく愉快で、軽妙洒脱な世界にすっかりひきこまれた。こんな楽しい時代劇があったのかと、誰もが好きにならずにはいられない一作。
 続いて『人生とんぼ返り』(1955)。「先生、リアリジュームってなんでっか?どこに行ったら売ってますのや?」無学ながらも、面倒見がよくお人よしな殺陣師、段平を森繁久彌が熱演。殺陣一筋に生きた男の情熱のすごさに、涙が止まらなかった。最期まで殺陣にこだわり続けた段平、そんな夫を支えた妻役の山田五十鈴、娘役の左幸子と、家族の愛の絆にも泣けた。

  一昨年冬には、時代劇の傑作と名高い『次郎長三国志』(東宝)第一部から第八部(1952〜58)までの一挙上映が大阪・高槻の映画館で実現。毎晩、二作品ずつ四日間、仕事が終わってから喜び勇んで通い、疲れも忘れて画面に見入った。

  次郎長一家の面々の、なんと魅力的で個性豊かなこと。面倒見がよく、優しそうな次郎長(小堀明男)は親分というのに、どうも強そうにみえないところが逆にいい。大政(河津清三郎)、小政(水島道太郎)、桶屋の鬼吉(田崎潤)、関東綱五郎(森健二)、法印大五郎(田中春男)、森の石松(森繁久彌)、追分三五郎(小泉博)、子分たちも、情に厚く、義理がたく、人間味たっぷりで、本当にいい奴らだ。大阪弁、名古屋弁が入り混じり、方言も楽しく、唄もうまい。

 この一家が、喜びも悲しみも、憤りも楽しさも、全部、皆で分け合い、互いにぶつけあいながらも、道中をともにする。一緒に生きていることのおもしろさ。「わっしょい、わっしょい」といつものように掛け声かければ、どんな難関もなんとか乗り越えてしまえる威勢のよさ。博打のかたに着物をとられ、寒空の下、全員、さらし一枚の姿で街道を歩くはめになっても、どこかほのぼのとして、楽しそうで、この雰囲気が実にいい。

  喧嘩のシーンはあっさり省略。いざ喧嘩が始まるや、シーンは飛んで、茶畑で茶を摘む娘達の姿に変わったり、一家が喧嘩から帰る道中のシーンに変わったりと、場面転換も見事。このテンポのよさこそ、マキノ節の醍醐味。
  次郎長シリーズの中で、私が最も好きなのは『第六部 旅がらす次郎長一家』。越路吹雪演じる、気っ風がよくて、しっかり者のお園が絶品。約束した日に旅先から帰ってこない夫の身を案じて、早朝、庭先の小さな権現様にお参りする。烏が鳴くのを聞いて「ちぇっ、哂ってやがる。賢けりゃ神頼みなんかしないやい」とぼやき、酒をぐいと飲んでは「ざまぁみろ、また一杯減らしてやったぞ」と言いつつ、夫のことが気がかりで、帰りを待っている。たわいない繰り言がすべて夫への思いにあふれていて、粋なことこの上なし。

 『第八部 海道一の暴れん坊』の、森の石松も忘れるわけにはいかない。一本気の男が、生まれて初めて女に惚れられ、夢見心地の喜びと、内から湧き出る自信。女と一緒になるまでは死ねないと信じたはずの石松が、だまし討ちにあい、あえなく最期を遂げる。人生最高の幸福を目前に、命絶え絶えになり、ただ呆然とした表情の石松。そこに、女の名前である夕顔の花が萎れていくシーンが入る。この美しさ、悲しさ、切なさこそ、映画だ。
  こうして思い出すそばから、『次郎長三国志』シリーズを観た時の、自分も一家の子分になったような気分が甦る。どの作品も、人間の優しさ、正直さ、人情、仁義を貫くまっすぐさにあふれ、まさに涙と笑いの傑作群。どんなに落ち込んでも、次郎長一家の仲間たちのことを考えれば、行灯に灯を入れたように、心の中がぽうっとあったかくなる気がする。

  あれから、マキノ雅弘と名がつけば、新世界東映でも、どこでも出かけるようになった。生涯に260本余りの映画を撮っており、現在フィルムが残っている作品だけでも100本を越える。時代劇はもちろん、仁侠映画でも数々の傑作を残しており、『昭和残侠伝 死んで貰います』(1970)では、高倉健、池部良の、義理と人情の狭間で耐え抜き、最後に命を賭ける姿に思わず胸が熱くなった。藤純子(現在の富士純子)のいじらしさ、長門裕之の溌剌さも忘れがたい。

  「映画はおもろなきゃあかんでえ」が口癖であり、信条だったマキノ雅弘監督。どの作品においても描かれるのは、熱く優しいこころを持った人間の生きざま。その作品がこの秋、京都映画祭で一挙に上映されるという。こんな嬉しいことはない。ぜひ劇場に行って、おもしろさをその目で確かめてほしい。
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 第6回 京都映画祭記者会見
第6回京都映画祭記者会見

   9月12日、京都ロイヤルホテル&スパにて、第6回京都映画祭全体の番組ラインナップ発表記者会見が行われた。映画監督/映画祭総合プロデューサーの中島貞夫さんが概要を、映画評論家/映画祭実行委員・企画委員長の山根貞男さんがラインナップを、映画祭事務局長である佐藤雅夫さんが顕彰事業の受賞者をそれぞれ発表。企画の趣旨や、各部門の見どころなど含めて語った。

【映画祭概要について】
(以下、中島貞夫総合プロデューサーによる概要説明会見)

6回目となる京都映画祭ですが、今回のテーマは【京都・映画100年−
マキノ映画誕生100年・徹底特集−】となります。
 “日本映画の父”と呼ばれるマキノ省三が1908年に公開したのが『本能寺合戦』という作品で、これは現存する最古の日本製劇映画となります。現在鑑賞可能な作品としては、それ以前にも、1899年製作の『紅葉狩』などがありますが、これらは歌舞伎の一場面を映した記録映画です。つまり、舞台という被写体が存在しており、それを撮っていたというわけですね。マキノ省三が画期的だったのは、自身が経営していた芝居小屋・千本座の俳優たちを使って、初めて劇映画を撮ったということ。“被写体を作る”ということを行ったのがマキノ省三だったというわけです。ここからの京都の歴史は、常に映画の歴史と共にあったわけです。そして本年は『本能寺合戦』の公開から数えて満100年という記念の年となります。また、1908年は、マキノ省三の長男であるマキノ雅弘(ほかにマキノ正博など複数名義を持つ。本名・マキノ雅唯)の誕生年でもあり、本年は【マキノ雅弘生誕100年記念】の年でもあります。今回、マキノ映画の特集をメインとしたのはこのためです。
 映画祭の開催期間は10/8(水)〜10/13(月・祝)ですが、並行して“京都・映画100年宣言記念事業”を進めて参ります。

  まず、開幕に先駆けて、10/1(水)の15時より、『本能寺合戦』の撮影が行われた真如堂にて“京都・映画100年宣言記念碑”の除幕式を行います。この記念碑は、フランスのリュミエール兄弟が発明したシネマトグラフ(映写機兼用のカメラ)をモチーフにデザインされています。
 また、10/11(土)には、京都造形芸術大学にて、“「京都・映画100年宣言」特別記念シンポジウム”を行います。こちらは13時半からの第一部『マキノ映画100年について』と、15時半からの第二部『これからの京都・映画100年について』の二部構成となっており、著名なゲストの方々と共に、腰を据えたシンポジウムを行おうというものです。

 更に、“「京都・映画100年宣言記念」シネマエッセー募集”。こちらの募集は既に終了しております。広くエッセーを募集し、その中から優秀賞を3本選出して、10/8(水)のオープニングセレモニーにて表彰式を行います。

  以上が“京都・映画100年宣言記念事業”の3本柱となります。

 映画祭そのものの柱も3本。メイン会場である祇園会館での“マキノ映画特集”、京都みなみ会館での“『次郎長三国志』9部作一挙上映”、MOVIX京都での“新作映画招待上映”となります。

【上映作品選定と見どころ】
(以下、山根貞男企画委員長によるラインナップ紹介会見)

・祇園会館 :“マキノ映画特集”

 まず、“日本映画の父”と呼ばれるマキノ省三監督の300本を越える作品群の中から1本。牧野省三50歳記念作品として取り上げた代表作『実録忠臣蔵』(1928)を、映画祭初日にオープニング作品として上映します。この作品は、編集中に火事が起きてしまって、ネガフィルムの大半が焼失してしまったのですが、その後復元作業を行ったものです。本作は無声映画ですので、上映当日は活弁(活動弁士)つきの上映です。

 その他のラインナップですが、マキノ雅弘監督作品を24本。その弟であるマキノ真三監督作品を1本。計26本の作品をメイン特集として祇園会館で上映します。
 マキノ雅弘が遺した作品総数は、現在確認されているもので長編・短編併せて264本あり、その中で現存しているものが120本程度ですが、その中から20数作品を上映作品として選定したわけですが、当初、選定委員各人の思い入れなどもあり、あれもこれもとなってしまってなかなかまとまりませんでした。そこで何か軸となる基準を設けようと考えたのです。そこで「マキノ雅弘ほど、その時代を代表するスターのほぼ全てと仕事をした監督はいないのではないか?」と気付きました。マキノ雅弘は、日活、東横(現・東映)、松竹、東宝、大映など、多くの映画会社で監督をしています。撮っていないのは大都映画くらいのもので、殆どの映画会社を股にかけて活躍しました。その中で、その時代のトップ・スターと仕事をしています。大河内伝次郎、阪東妻三郎、長谷川一夫、嵐寛十郎、月形龍之介、片岡千恵蔵、近衛十四郎、中村錦之助、大川橋蔵、鶴田浩二、大友柳太郎、勝新太郎、高倉健などなど、錚々たるスターばかりです。市川雷蔵と石原裕次郎とは映画を作っていませんが、その2人以外のスターとは、もう全てと言って良いほど一緒に仕事をしています。これは意外に思われる方が多いのですが、三船敏郎とも『抱擁』(1953)というメロドラマで組んでいます。といったことから【スターを基準に1本ずつ選ぶ】ことにしました。
 その中で、マキノ雅弘の作品は、一括りに収めることができません。例えば、時代劇で言うと『続清水港』(1940)という作品。これは、片岡千恵蔵扮する現代人の舞台演出家がタイムスリップして森の石松になってしまうという作品で、いわゆるSFの要素があります。また、中村錦之助と美空ひばりを主演に迎えた『おしどり駕篭』(1957)は歌い踊る時代劇ミュージカルです。このようにSFやミュージカルもあれば、活劇物や股旅物もあり、一口に時代劇とまとめることは出来ません。また、仁侠映画も同様で、『侠骨一代』(1967)の骨子はメロドラマですし、これもただ単に仁侠映画と括るのは乱暴であると感じます。その他の作品では、『野戦軍楽隊』(1944)で“松竹三羽烏”と言われた佐分利信、上原謙、佐野周二を一堂に集めていて見ものですし、『阿波の踊子』(1941)のクライマックスで繰り広げられる15分を越える壮大な阿波踊りのシーンも素晴らしいものがあります。

『幽霊暁に死す』 (1948年)
 このように、非常にバラエティーに富んだラインナップとなっているわけですが、その中でも特に注目していただきたい作品が3本あります。まずは『幽霊暁に死す』(1948)。これは長らく現存しないと言われていた作品ですが、なんとマキノ家から16ミリフィルムが発見され、今回の上映に繋がりました。次に『肉体の門』(1948)。娼婦の話です。こちらも現存しないとされていましたが、先年、国立フィルムセンターで発見され、復元・現像されました。昨年に東京で行われた特集上映で1度上映されましたが、今回は2度目の上映ということになります。

『肉体の門』(1948年)
 そしてもう1本、『暗黒街の天使』(1948)。この作品は、マキノ省三の三男であるマキノ真三が監督した作品ですが、今回、私がマキノ家を訪れた際に35ミリ原版(ネガフィルム)「フィルムがあるのですが、見てもらえませんか?」と言われて調べてみたらこの作品だったのです。1935年の京都が舞台で、道端に浮浪児が溢れている。その子たちが道を踏み外すことのないように見守る婦人警官を宮城千賀子(マキノ真三の妻でもある)が演じていますが、このようなストーリーが、やがてタイトルの通りに暗黒街の話になっていくのだから面白い。チンピラ役で沢村アキヲ(現・長門裕之)が出演していますが、この頃から抜群に演技が上手く、見どころと言えます。そして、驚くべきことに、この作品は、当時に公開されたという記録がありません。撮られたまま、公開されることなくお蔵入りになっていたようで、今回が初上映の可能性が高い。大変貴重な機会となりますので、是非ご覧いただきたい作品です。

『暗黒街の天使』(1948年)
 また、祇園会館では、ゲストを迎えたトークショーを連日行います。8日のオープニング・セレモニーでは長門裕之さんとマキノ佐代子さん、ゲストトークでは9日に里見浩太朗さん、11日に丘さとみさん、12日に富司純子さん、13日のクロージング・セレモニーではマキノ雅彦(津川雅彦)さんをお招きします。10日には、私(山根貞男さん)の司会で、マキノ雅弘監督の助監督を務めた鈴木則文さん、沢井信一郎さん、中島貞夫さんが座談会を開催します。ここに岡本喜八さんがいらっしゃれば、と思いますが、亡くなられてしまいましたので…… 当日は、知られざるエピソードや楽しい思い出など、貴重なお話がたくさん披露されるだろうと思います。皆さんも楽しみにして下さい。
・京都みなみ会館:“『次郎長三国志』9部作一挙上映”
 祇園会館でのマキノ映画特集ラインナップが出揃ったところで、「『次郎長三国志』はどうする?」という声が上がりました。マキノ雅弘が大変な愛着を持って連作した『次郎長三国志』を外すわけにはいきません。そこで「9本まとめてやろう!」というビックリするような意見が出てきて、「よし、やろう!」と。京都みなみ会館で、これまでに例のない東宝版9部作一挙上映を開催することになったわけです。昼間に3日間に分けて上映を行うほか、オールナイト・マラソン上映も行います。私はこのシリーズを何度も見ていますが、さすがに9部作をぶっ続けで見たことはありません。オールナイトで15〜16時間の長丁場となりますが、途中で寝ても大丈夫ですよ。起きたところから見ても筋がわからなくなるわけじゃないですから(笑) 物理的に腰が痛くなったりするでしょうが、気楽に見に来て下さい。

・MOVIX京都:“新作映画招待上映”
 MOVIX京都では、新作映画を上映します。合計14プログラムです。こちらも幅広いラインナップとなっています。

 2度上映する中国映画『キネマの大地』(2008)は、中島貞夫さんが教鞭をとっておられる大阪芸術大学映画学科に留学生として学んだ向陽監督の作品で、1930年代に発足した満州映画協会設立と解体を背景に、日中の映画人の姿を描いた人間ドラマです。ドイツからはスペインと合作の『ワン・デイ・イン・ヨーロッパ』(2005)、イタリアからは『ヴィットリオ広場のオーケストラ』(2006)フランスからは『ワーク・ハード、プレイ・ハード』(2003)が揃いました。

 日本映画に目を向けると、まず「女性パワーが凄い!」と感じます。『桃まつり PRESENTS 真夜中の宴』(2007〜2008)という女性監督9人による短編集プログラムに注目して下さい。その他にも面白い作品ばかりが揃いました。

 最後に1本、異色作を紹介します。『Yakuza Eiga 日本映画に秘められた物語』(2008)。フランスのイブ・モンメイヨールというドキュメンタリー映画監督が、日本やくざ映画の流れを追いかけた作品です。中島貞夫さんも、私も出演していますが、まだ完成していません。ほどなく完成し、スペインの映画祭でワールド・プレミアを行った後、京都映画祭での上映となります。面白い作品に仕上がっている予感がしますので、この作品にも注目してください。

【第6回京都映画祭顕彰事業受賞者発表】 
 中島・山根両氏の会見に続けて、佐藤雅夫京都映画祭事務局長が第6回京都映画祭顕彰事業について述べ、第44回牧野省三賞、並びに第6回京都映画功労賞・奨励賞の受賞者を発表した。各賞の受賞者は以下の通り。
・第44回牧野省三賞
受賞者:中岡源権(なかおかげんごん)
80才。照明技師。映像京都所属。1945年に大映京都撮影所に照明助手として入社。1954年公開の『お富さん』で照明技師となって以降、現在までに数多くの時代劇で照明を担当している。代表作に『朱雀門』(1957)、『薄桜記』(1959)、『不知火検校』(1960)、『沓掛時次郎』(1961)や、「眠狂四郎」「悪名」「座頭市」シリーズなど。近年の仕事に『たそがれ清兵衛』(2002)がある。
・第6回京都映画功労賞
受賞者(2名)
@ 西村維樹(にしむらしげき)
64才。製作担当。映像京都所属。代表作に『薄化粧』(1985)、『226』(1989)、『豪姫』(1992)、『女殺油地獄』(1993)、『RAMPO』(1994)などがある。

A 長尾康久(ながおやすひさ)
57歳。装飾。東映京都撮影所所属。代表作に『蒲田行進曲』(1982)、『ひとひらの雪』(1985)、『社葬』(1989)、『大奥』(2006・TV)、『茶々‐天涯の貴姫』(2007)などがある。

・第6回京都映画特別功労賞
受賞者:長岡功(ながおかいさお)
 故人。製作担当。東映京都撮影所所属。代表作に『復活の日』(1980)、『北の零年』(2004年)、『バルトの楽園』(2006年)、『憑神』(2007年)、『火天の城』(2008年)などがある。

・第6回京都映画奨励賞
受賞者:兼ア涼介(かねさきりょうすけ)
 33歳。演出。東映京都撮影所所属。『Red Shadow 赤影』(2001)や『TANKA』(2006)などの劇場用映画や、「科捜研の女」「白虎隊」といったテレビ映画で助監督として経験を積んだ後、インターネット配信用映画「メタル侍」で監督デビュー(企画・脚本も兼任)。同作品はオリジナルDVDとして全13話のシリーズとなり、国内外の映画祭で高く評価されている。

 会見の最後に、これからの京都映画祭の活動について、山根貞男企画委員長は「積極的にフィルムの発見・復元・保存を行っていきたい」と語った。旧作の発掘&上映を通して、映画を文化として見詰める機会を設け、そして後世に遺そうというのである。同時に、最新作の上映にも力を入れている。この、過去(旧作)と現在(最新作)を通して、未来に繋げようという意志こそが、京都映画祭の特色だ。今回も興味深い企画とラインナップで私たちを楽しませてくれることだろう。この10月、今年も京都が映画に染まる!
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