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 『リグレット』 セドリック・カーン監督 単独インタビュー
            
( 2010年3月19日(金) ホテルグランドハイアット東京にて

『リグレット』 (LES REGRETS)

(2009年 フランス 1時間45分)
監督・脚本:セトリック・カーン
出演:ヴァレリア・ブルーニ,イヴァン・アタル,アーリー・ジョヴァー,フィリップ・カトリーヌ

〜大人の恋ならセドリック・カーンにお任せ!〜

男と女が求め合う情熱を、二人の息遣いが直接感じられるリアルさで魅せてくれる監督・セドリック・カーン。彼が創り出す映像では愛情や人間性がリアルにあぶり出され、見る者の心を掴んで離さない。そんな魅力は映像だけでなく、実際の彼もドキドキするほどゴージャスでセクシー。『チャーリーとパパの飛行機』(‘04)はご自身の3人の子供たちに見せたくて作ったそうだ。

【STORY】
40歳の建築家マチューは、同じ建築家の妻とパリに住んでいた。母親の急病で故郷に戻ったマチューは昔の恋人マヤと15年振りに出会う。最初は躊躇して言葉を交わすこともなかった二人だったが、過去に遂げられなかった愛をむさぼるように求め合うようになる。マヤがもたらす情熱に溺れていくマチューは、次第に狂おしいほどマヤを求めていく……。

【プロフィール】
1966年フランス・クレスト生まれ。パリ高等映画学院で学び、1992年監督デビュー。2作目の『幸せ過ぎて』(‘94・未公開)でジャン・ヴィゴ賞、カンヌ国際映画祭の若手監督賞を受賞。続く『倦怠』(‘98)で確固たる評価を築く。実在の連続殺人犯を主人公にした『ロベルト・スッコ』(‘01)をはじめ、独自のヴィジョンに貫かれた作品で知られる俊才。
――― 『ロベルト・スッコ』(‘01)では実在の殺人犯を、『チャーリーとパパの飛行機』(‘04)では子供の純粋さが奇蹟を生むファンタジーと、作風が変わってきていますが、創作の元にあるには何ですか?
まず大きな点は人に体験をしてもらいたい。好奇心をもってもらいたい。人はこだわりから逃れられない。全く違うことをしているつもりだが、並べていくと道はあるようだ。1本1本の映画が、私の人生のある時期に相当していると思います。作品を選ぶと言うが難しい作業です。ひとつの作品に2〜3年掛かり、その間作品をパートナーとして生きて、次のパートナーと出会うということになります。

――― 『倦怠』(‘98)ではセックスによって目覚める本来の感情や人格というものが鮮やかに描かれていましたが、本作でも15年ぶりの再開によって忘れていた感情がよみがえりましたね。男女の心の解放とはセックスによって為されるとお考えですか?
『倦怠』に比べ今回は恥じらいや慎みをみせているつもりです。常に洋服は着せているし、露出は少ないです。どうしてそのことに興味を持ったのですか?

――― 日本では、男女の愛情を表現するのに、セックスに至るまでのプロセスを大事にしているからです。小津安二郎や成瀬巳喜男などの監督作品に象徴されるように、慎み深さを美徳として表現されることが多いです。
この映画は、フランス映画としては、慎み深い方だと思います。私の映画の撮り方は、セリフだけで表現するのは無理で、第一登場人物がそれを許さないので、体が触れ合うことによる愛情表現は必要不可欠なものです。

――― 勿論、今ではそうした愛情表現に慣れてきましたし、むしろ関心を持って見ております。その為には役者がとても重要になってくると思いますが、キャスティングはご自身でお決めになるのですか?
そうです。私が全責任を持って決めました。特にこの映画のテーマは“パッション”ですから、破壊的な情熱を見せてくれるような強い役者が必要でした。

――― 2人の個性については?
映画の中のキャラクターでいえば、マチューの方はとても普通の平凡的な人間だったのが激しい情熱に支配されるままにしているという設定です。そんな彼にフラストレーションや情熱を持ち込むのがマヤです。


――― 狂気なまでにマヤを追っていたマチューが、3年後再開した時には完全に吹っ切れていましたね。あのラストシーンに込められた意図は?
情熱とは素晴らしいものだが、永続的なものではなく、どこかで終わるものです。彼は自分の人生の選択をしたのです。フランス語でも、情熱とは幻のようなもの、蜃気楼のようなものだと表現されることが多く、あくまで過去のものであって人生は続くのです。情熱だけでは生活できませんからね。

――― 『チャーリーとパパの飛行機』(‘04)では子供の成長を描いていましたが、他の作品では人生そのものがテーマになっているように思いますが、今後どのような表現を考えているのですか?
『チャーリーとパパの飛行機』では、少年が飛行機への情熱をある時期には諦めなければいけない…まさに少年が先へと生きていくためにね。
今考えていることは、大人の人生で、自分が諦めてきた過去の幻想や夢、自分の欲望を知ること、好きな人を守り傷つけるような人から距離をおくことなど。あとは、子供ですかね。人生には子供を通じて得られるものが沢山あります。長く続くためには子供が必要です。

――― 気になっている役者はいるのですか?
本作は、ヴァレリアを想定して書きましたが、予定とは違う役者が演じることもまたイメージが膨らんで面白いことだと思います。気になる役者?それは秘密です。

――― 俳優の方が監督をするケースが多いようですが、何か事情があるのですか?
確かにかなり多くなってきています。映画界で働く人は誰でも一度は監督をやってみたいと思うものです。俳優の方は名前が売れてますから、製作費が集めやすいので作りやすいですね。

――― 実際そうした作品をご覧になってどう思われますか?
処女作というのは良くできていますが、2本目となるとあまり好きな作品ではなくなります。大体一作目というのは自分の人生を描いているものが多く分かりやすいのですが、二作目となると、メッセージを探っているような感じになり何をいっているのか分かりにくくなります。おそらく、いい監督になるには何本か作る必要があるでしょう。自分のことを知るためにも撮る必要があるし、はっきりとしたメッセージを知るためにもね。

――― 2〜3年に1作という製作周期ですが、それでも監督業はやっていけるのですか?
正規のギャラが支払われれば大丈夫です。私にとって映画を作ることが大事であって、数多く作ってお金を儲ける事は二の次なんです。確かに巨大な製作費のオファーを受けることはありますが、製作費につられて引き受けることはありません。

――― ご自身のポリシーを大事した映画製作をされているのですね?
そうありたいと思っています。

――― 日本の女性の中には自分の夢を諦めて生きている人が多いと思います。そんな日本女性を応援する映画を作って頂きたいと思いますが。
私の場合は、自分の情熱を仕事に活かして生きていけるので、とても幸せだと思います。18歳で映画作りを初めて25年経ってもまだ映画を作っていますから恵まれていると自覚しています。沢山の人に私と同じように機会が恵まれればいいなと思います。 日本の女性に限らず、男性でも自分の夢を諦める人は多いのです。自分の好きなように生きられない人は多いです。

――― 夢というと少し大袈裟になりますが、自分が一番好きな時間を大切にするだけでも、とても幸せなことだと考えています。
確かに夢を追い掛けるのは大事なことですが、ありえない事を追い掛けるのは良くないですね。無い物ねだりするよりも、自分が持っているものを大事にすることが大切だと思います。人生の中には大きな幸せと小さな幸せがあると思いますので、ささやかな幸せでも大切に思うことが必要でしょう。

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