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 『ミックマック』 ジャン=ピエール・ジュネ監督 合同記者会見
            
( 2010年3月18日(木) ホテルグランドハイアット東京にて

『ミックマック』(原題)(Micmacs a tire-larigot)
ゲスト:ジャン=ピエール・ジュネ監督

(2009年 フランス 1時間44分) 配給:角川映画

監督:ジャン=ピエール・ジュネ  
出演:ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ、ドミニク・ピニョン

2010年9月4日〜恵比寿ガーデンシネマ、
9月18日〜梅田ガーデンシネマ、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほか全国で公開

・作品紹介はこちら
・公式サイト⇒ http://www.micmacs.jp/
 

 奇想天外な方法で二つの反目し合う武器製造会社へ復讐する男の痛快劇。子供の頃からセルジオ・レオーネ監督映画に影響を受けてきたというジュネ監督は、暖色系の色遣いやブラックユーモアなどをプラスして独自の世界を創造。新たにダニー・ブーン親子を起用し不思議な世界を楽しませてくれる。
 主人公バジルの役は『アメリ』や『アンジェラ』に出演したジャメル・ドゥブーズのために書かれた脚本だったため、ダニー・ブーンは最初のオファーを断ったらしい。ひ弱で不幸という役柄的にもジャメルのイメージに合っていたのだが、それを補って余りあるダニーの演技力は、新たなジュネの世界を生んだ

【プロフィール】
1953年フランス生まれ。1980年、『回転木馬』でセザール賞の短編アニメーション賞を受賞。初の長編映画となった『デリカテッセン』(‘91)は、同賞の脚本賞と新人監督作品賞を受賞。世界的な大ヒットとなった『アメリ』(‘01)はセザール賞の監督賞のほか、英国アカデミー賞脚本賞を受賞した。その他監督作品には、『ロスト・チルドレン』(‘95)、『エイリアン4』(‘97)、『ろんぐ』

【STORY】
 バジルは、幼い頃地雷処理をしていた父親が爆死して、そのショックで母親は精神病院へ入院し、養護施設でイジメや体罰を受けながら育った。さらに大人になって発砲事件に巻き込まれ頭に被弾するが、摘出不可能なため頭に銃弾を残したまま生きなければならなくなった。そのため、時々意識を失う癖がつく。仕事も住む所も失い路頭に迷っていたバジルを助けたのは、廃品回収業の愉快な仲間たち。
  ある日、廃品回収に出掛けたバジルは、父親を死に追いやった地雷の製造会社と自分が被弾した弾の製造会社の2社を見つける。バジルの人生をとことん不幸なものとした両方の武器製造会社へのリベンジが、いま始まる・・・

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――― 最初の方のシーンで、寄宿学校へ入れられた子供が体罰を受けるシーンに強烈な印象を受けたのですが、あのシーンの意図は?
作品の主軸となるリベンジの意図を込めました。この映画は全体としてはコメディですが、復讐をしていく話なので、彼がなぜ復讐するのか説明する必要があったのです。バジルが苦痛の中で少年期を過ごし、復讐へと向かう流れを作るシーンの一部です。ちなみに、バジルの少年期を演じた子役は、ダニー・ブーンの息子です。

――― 今回、武器製造業者へのリベンジというストーリーですが、リベンジの仕方がアナログ的、「ジュネ流リベンジのススメ」というチャッチコピーを付けたぐらいです。その独特な映像美学には何かしら影響を受けたものはありますか?
復讐のシーンは子供の頃に見た「ミッション・インポシブル」というTV番組からヒントを得ています。特に、戦略については映画の中で活かされています。影響を受けたアーティストは沢山います。この作品は、それらが集大成されたものだとのいえます。大好きなバスター・キートンやチャップリンやセルジオ・レオーネなど沢山の才能が入り込んでいるのです。
この映画の中で二つの武器製造会社が出てきますが、それはセルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』(‘64)からヒントを得ています。さらに、セルジオ・レオーネ監督は黒澤明監督の『用心棒』(‘61)を凄く意識して撮ったと聞いています。このように、黒澤明監督の映画は、イタリアから現代のフランスにまで影響を及ぼしているのです。

―――あなたの作品は異次元的世界が大きな特徴となっていますが、何から発想を得ているのですか?
17歳の時に見たセルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』(‘68)に衝撃を受け、3日間口が利けなかったくらい。その後に見たスタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』(‘72)は、映画館へ14回も見に行きました。そうした影響もあって、私の映画はショート・フォーカスが多いです。
――― そうした技術が現在の作風につながっているのですね?
はい。他にも暖色系の色遣いや、子供の世界観とか、ユーモアとか、いろいろなものが入り込んで出来上がった世界なのです。


――― 本作には痛烈な戦争批判が盛り込まれていますが、武器製造業者からの圧力とかはなかったのですか?
全くなかったです。ベルギーの軍事工場へ見学に行ったのですが、どこでも写真を撮らせてくれてとても協力的でした。自分たちの非常に高度な技術に対する自信と誇りに満ちて言えて、まるでチョコレート工場で新製品を開発しているみたいでした。最終的には人の命を奪うことについて聞いたら、あくまでも武器は戦争抑止力のため、という答えが返ってきました。


――― 脚本のギョーム・ロランとの役割分担は?
基本的なことは私が決めますが、作品のコンセプトが決まると、そこからロランがアイデアをメモしてBOXに次々と入れていき、一杯になったら整理して肉付けをしていきます。私はビジュアルを、彼は台本を書いていくのです。
――― ダニー・ブーンを起用した理由は?
彼のことは15年くらい前から私の頭の中にはあった人です。彼は才能豊かで非常にクリエイティブな人です。最初は他に役者を想定して書いていたのですが、都合が悪く出演できなくなって彼に出てもらったのです。フランスで『ミックマック』を公開する前に彼の監督作品が公開されたのですが、2100万人を動員する大ヒットとなりました。『アメリ』の観客動員数の4倍ですよ。でも、『アメリ』は世界でもヒットしたので、結果的にはそれ以上の動員数となりましたが。
――― 『ミックマック』というタイトルの意味は?
ミックは策略とか陰謀、マックは沢山、沢山の陰謀という意味で、『デリカテッセン』もそうですが音の響きもいいので決めました。

――― ジュネ・ファミリーと思えるような同じキャストやスタッフを起用されていますが理由は?
確かに、『デリカテッセン』以来、美術スタッフも同じです。私は、外観に特徴のある俳優が好きなんです。そういう人はそう多くないので、必然的に同じメンバーになっているのです。

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