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★『歓待』 深田晃司監督、杉野希妃インタビュー

(C) 歓待製作委員会
『歓 待』
ゲスト:深田晃司監督、杉野希妃、オノエリコ

(2010年 日本 1時間36分)
監督:深田晃司
出演:山内健司、杉野希妃、古館寛治、オノエリコ

2011年4月23日〜ヒューマントラストシネマ渋谷、
5月14日〜テアトル梅田、7月下旬〜元町映画館ほか全国順次公開
・作品紹介⇒こちら
・公式サイト⇒
http://kantai-hospitalite.com/
※2010年東京国際映画祭ある視点部門作品賞受賞作品
 3月に開催された大阪アジアン映画祭特集企画「深田晃司という才能」での『歓待』上映に合わせて深田晃司監督、プロデューサー兼主演女優の杉野希妃、エリコ役のオノエリコが来阪し、杉野さんと脚本を手掛けるようになったきっかけや、キャラクターづくりの秘話、作品のテーマについて単独インタビューに応えてくれた。

━━━『歓待』はプロデューサーである杉野さんが脚本段階から参加されたそうですが、杉野さんと一緒に本作を作り上げることになった経緯を教えてください。

 深田:実は『歓待』の元になった台本があり、それを是非映画にしたいと思っていました。ちょうどそのときにプロデューサーの小野さんと杉野さんが前作の『東京人間喜劇』をご覧になって、是非一緒に何かやろうと声をかけて下さったんです。お二人は海外との合作が多いことから、『歓待』には外国人がたくさん登場するので是非見てもらいたいと思いました。短編だと作ったあとにどうしても上映が難しいので長編に直さないかと提案され、そのときプロデューサーだと思っていた杉野さんが実は女優さんだったと分かったので、じゃあ、出ていただこうと杉野さんの役も作りました。元々の台本だと熟年夫婦だったのですが、杉野さんだから若くしようということで夏季というキャラクターが生まれました。

━━━本作の中でもキーとなる夏季のキャラクターは、杉野さんのイメージを反映させているのでしょうか。
深田:夏季というのは全く杉野さんのイメージから離れている独自のキャラクターというわけではありません。今回の『歓待』の前あたりから色々とコミュニケーションを取っていると、プロデューサーとして働く杉野さんがどんな時でも笑顔なんですよ。それは自分を押し殺して笑顔を作っているな、話していて「今営業トークだ」と思うときがあったりして(笑)。夏季というキャラクターはどんなにいやなことがあっても加川と話すときは笑顔になるし、そういうことで自分をごまかしてコミュニケーションを取っている人間だという意味では夏季というキャラクターはプロデューサーであるという肩書きも含めた杉野さんが反映されています。ああいう下町の印刷所というのはプライベートな空間と仕事の空間がすごくいびつになっていて、そういうところで家族でありながら従業員である女性というのは、言いたいことも言えず、常に笑顔を作って円滑にコミュニティーに馴染んでいこうという努力をしなくてはいけない重圧があると思います。勝手な憶測ですが、もしかしたらプロデューサーでありながら女優をしている杉野さんが日頃感じている重圧と意外と近いものがあるんじゃないかな。

杉野:私は夏季とは正反対で言いたいことはすぐ言うし、喜怒哀楽は激しいし、自分の感情を押さえてというのは自分とは逆の役でした。クランクアップ前日に夫婦で平手打ちするシーンがあったのですが、夏季として解放されるというか、一番気持ちがいいシーンだったんですよね。

━━━杉野さんが女優兼プロデューサーというスタイルで活動されるようになったきっかけを教えてください。

杉野:もともとは女優をやりたくて韓国でデビューしましたが、そのときから映画が大好きで映画の製作をやってみたいと思っていました。マネージャーもヤスミン・アハマド監督との企画をもってきて一緒にやるかもしれないとのことだったので、その話を聞いて「是非私もやらせてください」と言っていたんです。残念ながら、その企画は実現することなく終わってしまいましたが、その流れで映画祭に行かせていただくようになり、他のアジアの国々の映画人を見ていると、役者をやりながらプロデューサーをやったり、役者も監督もやったりという方がすごく多いんですよ。日本はその境界線がありすぎるのが悔しいというか、みんな一緒になって、枠とか作らずに協力しあいながらやればいいじゃんという気持ちがすごく大きくなってしまって。今はアジア合作が多いですが、アジアだけにこだわらずヨーロッパとも一緒に合作を作っていきたいと思っています。

━━━杉野さん演じる夏季と共演シーンが多かったエリコは普通の子役とはぜんぜん違う魅力を持っていますが、どうやってキャスティングされたのでしょうか。
杉野:主演作の『クリアネス』で私の相手役の子供時代をエリコちゃんが演じてくれました。その時に出会ったんです。

深田:あのキャラクターは脚本段階でかかれていたので、子役を探さなければならない、いろんな子に会わなければならないという中で、すでに杉野さんと仲がよくてコミュニケーションができている、それ以前に表現者としてすごい能力をもっているエリコちゃんに入ってもらいました。

 映画を見ていてつらいなと思うのは中途半端にうまい子役の芝居なんです。これは色んな問題があって、日本映画って現場に余裕がないから。例えばイラン映画などでイキイキとしている子役さんの芝居がたくさんでてきますが、あれは子ども、カメラマン、監督がすごくコミュニケーションに時間をとっているんですよ。日本の場合、子どもが死んでるなと思ってしまう。そういう意味ではエリコちゃんはカメラにたいして全くものおじしなくて、カメラの前でもはしゃいでるし、疲れたら「疲れた〜」っていうところがあって。もちろんどの映画でもある子役さんとのつきあいという苦労もありますが、結果的にスクリーンに映っているエリコちゃんはそこら辺の子役よりよっぽどいい芝居をしてます。
━━━『歓待』上映後のディスカッションでは、現代日本と排除との問題が表テーマとすれば、何が本物で何が偽物かが裏テーマとのお話がありましたが、本作のテーマについてもう少し詳しく教えていただけますか。
深田:作品を作っているときには排他的なというのは裏で、あくまでもこれは夫婦の話だと考えていました。例えば夫婦の話にしても何が本物で何が偽物という議論は、実はあまり好きではないなと思いはじめてきています。これが本物だと認める人がいて評価される、そこから排他主義が生まれるのではないかという気がして、特にインターネットで国籍にまつわるヘッドスピーチや書き込みを見ていると、本物偽物という議論はすごく危険だなと思うときがあります。

杉野:短編の台本を読ませていただいたときに、本作には外国人の話が入っていて、私自身が在日ということもあってそういうのを大々的に描いている映画は多いんですけど、それが根底にありつつ観客に余白を与えるようなやり方で描く作品は少ないんじゃないかと感じました。

━━━深田監督が影響を受けている監督は誰ですか。
深田:いつも作るときに意識する監督は成瀬巳喜男監督です。あとは、エリック・ロメール監督ですね。みんなうじゃうじゃしゃべっているようだけど、誰一人大事なことをしゃべっていないというのが大好きです。大事なことは言っていないし、本音をしゃべっているかどうかも分からないけれど、映画を見ているとコミュニケーションや構成からその人の心情みたいなものが伝わってきます。コミュニケーションから伝わるようになっているから、逆に俳優は自由になれます。俳優がセリフとか演技で大事なことを伝えなくてもいい、説明しなくてもいいから、むしろ自由に演じられる。だからロメール監督は上手いと思いますね。

━━━深田監督は、今の日本映画をどうご覧になっていますか。
今のいろんな日本映画を見ていて、コミュニケーションとは全く関係がない極端な感情を描くところに結構傾いているところがすごくイヤなんです。叫んだりすりゃいいってもんじゃないだろ!そんなこと絶対やらないぞ!みたいな。メジャー映画に限らず、インディーズで評価されている作品に関しても、感情の描き方についてはかなりの違和感がありますね。
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 上映後のディスカッションでは「私が物語を通して描くことに興味があるのは、“人は孤独だ”というところで、自分の中で拭いがたいテーマとして毎回それがでてくる。」と語った深田監督。今回の夫婦のドラマでも「血のつながりがあろうがなかろうが、人は孤独」という中で、どうやって描いていくのかを模索したそうだ。
 また、海外の映画祭ではコメディーとして好評を博する一方、質疑応答では映画の一つのテーマとなっている共同体と移民といった問題や人種問題に絡めた質問を受けたり、中には「古い下町共同体の文化を否定したいのか」といった質問も寄せられたというエピソードを披露してくれた。
 観る人の関心の拠り所によって、様々なテーマを見いだせる非常に興味深い作品。練られた人間描写と変容していく関係性に、深田監督の映画哲学が垣間見えるだろう。
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