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 『エクレール・お菓子放浪記』
 いしだあゆみ、近藤明男監督
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★『エクレール・お菓子放浪記』いしだあゆみ、近藤明男監督記者会見
『エクレール・お菓子放浪記』
ゲスト:いしだあゆみ、近藤明男監督


(2011年 日本 1時間45分)
監督:近藤明男
原作:西村滋著『お菓子放浪記』理論社刊
出演:吉井一肇、いしだあゆみ、早織、遠藤憲一、高橋恵子、林隆三、竹内郁子、松村良太他

2011年5月21日〜テアトル新宿、6月11日〜テアトル梅田、6月18日〜元町映画館他全国順次ロードショー
・作品紹介⇒こちら
・公式サイト⇒
  http://www.eclair-okashi.com/
 お菓子のない戦中戦後の時代を生き抜く孤児の少年を描いた、西村滋原作のロングセラー小説『お菓子放浪記』が舞台を東北に移し、映画化された。東北の自然と地元のボランティアスタッフに支えられて完成した『エクレール・お菓子放浪記』は、どこか懐かしく、失った魂をよみがえらせてくれる作品だ。本作の劇場公開にあたり、近藤明男監督と主人公アキオを養子にとるフサエ役のいしだあゆみさんがキャンペーンで来阪し、本作やロケ地東北・宮城、石巻への思いを語ってくれた。
━━━脚本を書かれるときにいしだあゆみさんを意識していたそうですが、そのあたりの思いをお聞かせください。
監督:原作のおばあちゃんはもう少し年が上なのですが、雰囲気がなんともいしださんに近いので、なんとかキャスティングしたいと脚本家三人でいしださんをイメージして書きました。

いしだ:監督とはパーティーでお会いしたのですが、「いしださん、最近映画でどんな役がやりたい?」と言われたので、ぜひおばあちゃん役をやりたいと。こんなにいい役をやらせていただいくなんて、言ってみるものですね。脚本を読んだときに早くやりたくて、ものすごく楽しみだったんです。だから本当に今回はうれしいですね。

━━━ロケ地が震災の被災地と重なっているということで、これまでの作品とは違う想いがありますか?
監督:「この映画を撮ったことで石巻が全国で有名になればいいね。」と言いながら、みんなで協力して撮りましたので、こういう形で話題になるとはとても複雑な思いがしています。
いしだ:どうして東京の話を東北で撮るのか不思議だったのですが、東京は自動販売機があったりして戦後すぐの話は撮れないので、東北で撮りますと監督がおっしゃって。先見の明で、「美しいきれいな日本の風景を撮りたい。」ということなんですね。短い期間でしたが密度の濃い時間を過ごして、本当に石巻の皆さんにお世話になったのに、何のお礼もしていないんですね。本当に美しいので、美しかったという過去形ではなくすぐに戻ってくれると思います。この映画を一人でも多くの人に見ていただいて石巻の皆さんが、「ほら、うちの町はこんなに美しいんだよ。」と誇りに思っていただけたらと。また外国の方からたくさんご支援をいただいているので、「東北ってこんなに美しいですよ。」とお礼の意味も込めて、外国の方にも見ていただきたいなと思います。

━━━ふさのは内面的にもいろんな背景を持った人物ですが演じる上で気をつけたことは?
いしだ:戦後すぐでしょ。お金が一番大事で、生きることに精一杯で、私はとても好きな女性ですね。これぐらいたくましくないとやっていけないじゃないですか。小さい頃こんな怖い、厳しいおばあちゃんがいたような気がします。残したら怒られるし、モノを大事にしないと怒られるし、自分のことを棚に上げて、でも言うことは間違ってないんですよ。

━━━昭和の風景や空気感を作るのに苦労した点は?
監督:宮城県の感化院の場所や明治村など、この映画を待っているようで、大変助かりました。逆に苦労はなくて、みんな喜んで、楽しんで撮っていました。
いしだ:木にしても、建物にしても、道路にしても、砂にしても素材が全部本物ですから、余計なお芝居をしなくていいんです。空気と建物と本物に囲まれていると本当にラクなんです。これが東京でセットを作ってやっていたら、また違うと思います。お芝居も作り物になってしまう。
━━━お菓子と映画はどこかつながると思うのですが、今映画に対してお二人が抱かれている想いや、この作品に込められた想いは?
監督:ありがたいことに、スタッフも俳優も映画好きで、大資本の映画ではありませんが、きめ細かいところまで本当にみんなで作った映画です。
いしだ:この映画でキャスティングしていただいたことにとても感謝しますし、まさか15歳でデビューしておばあちゃん役ができるまでやらせていただけるなんて思ってもみなかったです。60歳過ぎてからやっとなんでもできるなと思えてとても楽しいです。はやく70歳になった自分を見てみたいですね。
━━━今この時代に伝えたいメッセージは?
監督:まだ自分の中で整理はついていませんが、一人でも多くの方に見ていただければ(石巻の)応援になると思います。
いしだ:人ってやさしいんだなと思っていましたが、ボランティアの方もたくさんいらして、日本人だということにとても誇りをもっています。日本だけでなく、世界全部が友達というか。今回で、いろんなことを勉強しました。

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記者会見後の近藤明男監督単独インタビューで、本作を映画化することになった経緯や、原作から膨らませた点についてお話を伺った。

━━━原作と出会ったときの印象と、映画化しようと思ったきっかけを教えてください。
前作の『ふみ子の海』再々アンコールで、東京が1万7千人しか入らないのに、仙台の1館だけで5〜6千人動員の数字をあげてくれた映画館の支配人の方から、話をいただきました。『ふみ子の海』で同じ時代のものをやって、スタッフもその時代のことについて調べており、それから4、5年後経った話だったので、これならやってみたいと思いました。

原作は岡山あたりでアキオは無賃乗車のため列車から下ろされ、旅芸人に拾われて四国を旅するのです。ただ話をもってきてくれた人は仙台にいて、「ここには劇場があり、ここには感化院があり、小学校があり、こういう川があり・・・。」と全部彼がこの場所で撮れるとロケハンまでしてくれたんです。まだシナリオも書いていないのに、もうできていた訳ですよね。私も見に行って、普通のロケハンの半分で済むということで、北海道にも協力者が出てきたので宮城県と一部北海道という構想でシナリオを書くつもりで原作者に会い、どうぞ自由にやってくださいとご理解いただきました。後は、ぼくはいい脚本を書いていいスタッフを集めるだけですよね。2008年にそう思ってから、実は3年かかりました。

━━━子どもが大変な時代を生き抜くというのは『ふみ子の海』と共通していますが、子どもが主人公の作品を選んだ理由は?
『ふみ子の海』も今回も全くの偶然です。むしろ子どもを使うと児童映画だとか教育的映画になってしまいそうなので、なるべく一般の映画として通用するような映画を作りたいという意識はありますね。


━━━原作にはないキャラクターや設定はありますか。
戦中のキャラクターは原作通りで、新しいのは戦後です。かなりオリジナリティーがありますね。原作は東京に帰ってきてから空襲が続いていて、次から次への爆撃から逃げ、防空壕でみんながお経をあげて「もう死にたい」と言っているところにアキオが『お菓子と娘』を歌うのです。でも、ぼくはあの歌はこういう使い方をしてはいけない、彼が歌ってみんなが元気になるという風にしたかったのです。戦後からエンディングまではそっくり変えましたね。ちょうど4つに分かれているのですが、最初東京、それから映画館、旅芸人までの起承転は原作通り、戦後編の30分はオリジナルです。

結末も、原作は30年前なので父が子どもに「お菓子がなくなると父がパニックになるのはなぜか」を語って聞かせるお話だったのですが、それから30年経ったので孫にしました。ただ、歌合戦で再会した二人が60年後の姿を見せてはいけないということで、陽子先生に二役してもらいました。陽子先生と8つ年下のアキオの二人が結婚するというのは、当時は戦争で男性がたくさん死んでいるのですからリアリティーがあります。戦後の男がこれだけ少ない中で、初恋の相手であれば当然そうなっていくというハッピーエンドにしたかったのです。

 記者会見では、東日本大震災で亡くなられた船頭役の方の撮影エピソードや、570人にも上ったボランティアスタッフの謙虚で献身的な働きぶりにも触れた近藤明男監督、いしだあゆみさん。現在被災地となってしまった宮城・石巻の皆さんへの感謝の気持ちと共に日本国内だけでなく、海外の方にも是非見ていただきたいという想いがひしひし伝わってきた。宮城、石巻の皆さんが協力して作り上げた、美しい東北の姿と共に後世に残したい希望の物語。戦中戦後、生きるのに必死だった時代の日本の姿から、今の私たちが学ぶべきことも見えてくるだろう。

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