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★エクレール・お菓子放浪記
『エクレール・お菓子放浪記』
〜東北を舞台に綴る、
戦前戦後を生き抜いた少年を支えた“エクレール”〜


(2011年 日本 1時間45分)
監督:近藤明男
原作:西村滋著『お菓子放浪記』理論社刊
出演:吉井一肇、いしだあゆみ、早織、遠藤憲一、高橋恵子、林隆三、竹内郁子、松村良太他

2011年5月21日〜テアトル新宿、6月11日〜テアトル梅田、6月18日〜元町映画館他全国順次ロードショー
・いしだあゆみ・近藤明男監督記者会見レポート⇒こちら
・公式サイト⇒
  http://www.eclair-okashi.com/
 観終わったあと、劇中で歌われた『お菓子と娘』のやさしいメロディーが頭から離れなかった。お菓子がぜいたく品であった時代に、過酷な運命にさらされながらも、様々な人たちとの出会いやお菓子の記憶に支えられ、たくましく生き抜いた孤児の戦前戦後物語が、希望を失いそうになっている今、鮮やかによみがえる。
 昭和18年、施設を飛び出したアキオ(吉井一肇)は盗んだ菓子を食べようとして、遠山刑事(遠藤憲一)に見つかるが、逆に今まで食べたことのない菓子パンをもらう。その後感化院に送られたアキオは、指導員のホワイトサタン(松村良太)から暴行まがいの指導を受けながらも、陽子先生(早織)の歌う曲『お菓子と娘』が心の支えとなっていた。ある日、独り暮らしの老女フサノ(いしだあゆみ)に養子として引き取られ、はじめて家族と家で過ごす生活を送ることになるのだが・・・。
 家族も住むところもないアキオ少年のたどる運命は、激動の時代とはいえあまりにも過酷だ。感化院でのスパルタ教育や、養子先で働いたものの怪我をしたばかりに用済み扱いされたりと、誰もが生きていくのに必死な時代には子どもにも容赦ない。しかし、萎えることなくたくましく生きようとするアキオを見守る陽子先生をはじめとしたあたたかい大人たちの存在が、アキオに生きる力を与えてくれる。町の映画館、旅回り一座と当時の大衆芸能の様子が垣間見えるシーンを交えながら、新しい刺激に触れて情緒豊かに成長していくアキオと、戦争によってあたたかい大人たちから引き裂かれる無常さを悲喜こもごもに描いている。
 一方、戦中戦後を生き抜く女性のたくましさを見せつけたのが、アキオを養子にとったフサノだ。商売人で、抜け目のないばあさん役をいしだあゆみが意気揚々と、どこか茶目っ気たっぷりに熱演している。アキオの純粋さを素直に受け入れられず、厳しいしつけをするフサノは、どこか懐かしく、時代を象徴するようなリアリティーのある存在なのだ。
 食べたことのないエクレールに思いを馳せるだけで幸せな気持ちになれたアキオが、絶望のどん底で、そして新しくできた子分たちの米を稼ぐために歌った『お菓子と娘』。その澄みわたる歌声はエクレールのように幸せの響きがする。本作の東北ロケでは、宮城県の皆さんが多数ボランティアとして参加し、映画作りを支えたそうだ。戦中戦後の激動の時代を情緒豊かに描いた手作りの人情劇が、震災を経た今、被災地と日本全国、そして世界を結ぶ架け橋になることを願ってやまない。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
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