原題 | Safe House |
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制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 1時間55分 |
監督 | ダニエル・エスピノーサ |
出演 | デンゼル・ワシントン、ライアン・レイノルズ、ベラ・ファーミガ、ブレンダン・グリーソン、サム・シェパード |
公開日、上映劇場 | 2012年9月7日(金)~全国ロードショー |
(C)2012 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
~最強スパイ”運ぶ新米諜報員、敵は誰だ~
元スパイのトビン(デンゼル・ワシントン)は米CIAをはじめ世界36カ国から指名手配される札付き男だが、長く行方不明だった。そんな男が、南ア・ケープタウンの米総領事館に投降する。同地の新米諜報員マット(ライアン・レイノルズ)は、隠れ家の管理が仕事だが、あろうことか、本部からこの男の確保、護送を命じられる…。
野望に燃える新米諜報員が最強スパイを無事守れるのか…だが、極秘のはずの隠れ家がなぜか突然、武装した男たちの襲撃を受ける。マットは誰が敵かも分からず、トビンは敵を迎え撃ち、2人で逃走。モーテルに身をひそめる。
敵は一体誰なのか。ここまでのスピーディーな展開だけでグイっと引き込まれる鮮やかさ。ノンストップのサスペンスアクションは謎を秘めたまま、緊張感をはらんで展開する。
とりわけ見る者を物語に引き込むのは「敵が最後まで誰なのか分からない」という謎。これがアメリカの現状を知らしめる恐怖だろうか。巨大組織CIAには様々な部門があり、どこが何をしているのか、身内でも分からない。秘密の隠れ家が襲われたのはなぜか。常に連絡を入れている上司はホントに味方か? 周囲の誰もが敵に見える事態にアメリカの深刻な事情が見える。
スパイものといえば英国MI6の諜報員、おなじみジェームズ・ボンドは半世紀を経てもシリーズ続行中だが、かつてボンドの敵は基本的に共産主義ソ連、迷うことなどなかった。そのボンドが、現代では追われる側に回るのだから、スパイ映画も安心など出来ない。
トビンは元CIAの凄腕諜報員で、今はフリーの情報屋。彼が握っている情報とは何か。その情報を狙う襲撃者は? どこへ行っても執拗に追いかけてくる男たちの驚きの正体とは…と謎が謎を呼んで目が離せない。
リアリティー満点のストーリーには、やっぱり“モデル”がいた。90年代に逮捕された実在のスパイ、リック・ジェームズはソ連・ロシア防諜部門に従事していたが、ソ連側に寝返り、8年間に2億円以上の報酬を受け取った、という。この男のために、10人以上の工作員が刑務所送りになり、CIAのロシア・スパイ網は壊滅的危機に陥った。トビンの物語も決して作りごとではないのだ。もちろん、近寄るだけで大けがしそうなデンゼルの不気味な存在感も大きい。
この映画のもうひとつの特徴は、デンゼル、ライアンのアクションシーンがすべて手持ちカメラによる撮影で、そのため誰と誰が戦っているか、時に分からなくなるのだか、その生っぽさ、ライブ感覚もまた特筆もの。日本では東映・深作欣二監督「仁義なき戦い」シリーズが手持ち&ぶん回しカメラで実録映画のジャンルを確立したし、近年ではマット・デイモン「ボーン・アイデンティティー」シリーズが手持ち撮影の切れ味で見せた。さほど複雑なストーリーはない。基本的には徹底した追っかけだが、スウェーデン出身の新鋭ダニエル・エスピノーサ監督は日本お披露目作で「映画は作り手のセンス次第」であることを証明した。 【安永五郎】
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