原題 | The Beaver |
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制作年・国 | 2009年 アメリカ |
上映時間 | 1時間31分 |
監督 | ジョディ・フォスター |
出演 | ジョディ・フォスター、メル・ギブソン、アントン・イェルチン、ジェニファー・ローレンス、チェリー・ジョーンズ、ライリー・トーマス・スチュアート |
公開日、上映劇場 | 2012年6月23日(土)~シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、7月中旬、梅田ガーデンシネマ、8月~京都シネマほか全国にて順次公開 |
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~本当にビーバーはウォルターを救えるのか?~
ウォルターは,結婚20年の妻メレディスと息子2人がいて,父親から引き継いだ玩具会社を経営している。2年前にうつになり,回復の兆しが見られず,とうとう妻子と別居する。だが,その翌日,左腕に張り付いたパペットのビーバーと一緒に家へ戻ってきた。小学生のヘンリーは喜んでいる。高校生の兄ポーターは浮かない表情だ。彼は,ひたすら父親との類似点を消そうと考えている。妻メレディスは過去にこだわって現在を失っている。
壊れかけた家族が絆を取り戻す物語だ。妻は昔の夫に戻って欲しいと願うが,夫はうつの原因のある過去に拒絶反応を示す。メレディスが夫に対する理解のない妻に見えてしまう瞬間があった。彼女の言動にも確かな根拠があることを示すショットが欲しかったと思う。だが,彼女が家族を守ろうとしていることは確かだ。また彼女はビーバーに支配されていく夫に不安を抱いている。ウォルターが凋落する予感を孕んでサスペンス性が高まる。
ポーターは,同級生のノラと付き合い始める。彼女は,兄を薬物で亡くした深い悲しみから抜け出せていなかった。ストリートアートで自己表現することも止めている。卒業スピーチで彼女は「全部解決するというのは嘘だが,皆独りじゃないというのは本当だ」と言う。ウォルターの立場を示して映画全体をまとめるような言葉だ。ただ彼女の画が映像的に十分活かされていないのが惜しまれる。もっとインパクトのある描写ができたと思う。
今の自分を変えたいというウォルターの思いが相反する性格の分身を生み出した。彼の内部からビーバーの言葉が発される。ウォルターは,ビーバーのお陰で会社に復帰し,短期間で売上を大幅に伸ばす。だが,ビーバーの存在感が次第に大きくなる。その過程がリアルに描かれ,闇が広がるような不気味さを宿している。だからこそ,ウォルターがビーバーと格闘して自分と家族を取り戻そうとする姿は,痛々しい中にほっとするものがある。(河田充規)
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