制作年・国 | 2012年 日本 |
---|---|
上映時間 | 1時間29分 |
監督 | 廣木隆一 |
出演 | 蓮佛美沙子、中村麻美、根岸季衣、菜葉菜、柄本時生、田口トモロヲ、小林ユウキチ |
公開日、上映劇場 | 2012年3月10日~ユーロスペース、4月7日~MOVIE ONやまがた、6月16日~第七藝術劇場にて公開 |
『RIVER』廣木隆一監督単独インタビューはコチラ
C) 2011 ギャンビット
~少女に見る喪失の悲しみと再生の明るみ~
JR秋葉原駅で電車を降り,街を一人で歩いていく少女ひかりをカメラが追い続ける。彼女の心の中では,悲鳴や叫び声,それに続いてサイレンの音が今も響いている。アキバが好きだった恋人がアキバで死んじゃったと言って,堪え切れず泣き出す。彼女は,3年前の2008年6月に社会の耳目を集めた事件で恋人を突然亡くした。しばらく家に引き籠もっていたが,埼玉から秋葉原まで毎週やって来て,健治の痕跡を拾い集めようとしていた。
カメラは,適度な間隔を保ちながらひかりの行動をじっくりと的確に捉えていく。蓮佛美沙子は,ひかりの内面にゆったり流れる心情を無理なく表出している。彼女は,どのような体験をし,いま何を考え,どこへ向かおうとしているのか,色々と考えさせられる。“喪失と再生”というただ一言では支え切れない現実の重みが伸し掛かる。ロードムービーのような展開で,映像に挟まれる台詞が詩的な感じでナレーションのように響いてくる。
映画は,ひかりが健治はもういないのだから終わりにしなきゃと思い始めたところから始まる。メイド喫茶にスカウトされてメイド服に着替えても,外見が変わるだけで別人になれるわけではない。元の服装に戻って一生懸命,走る。その激しい動きは,過去の自分から離れるためだったのかも知れない。ひかりは,ここではみんな自分じゃない自分を探していると言う。秋葉原を離れ,健治のいない世界で本当の自分を見付けないといけない。
テレビの番組が東日本大震災の被災地の様子を伝えている。ひかりは,被災地の両親の下を飛び出してきたという青年の背中を押してやる。「まだ間に合うよ」と言って。その後,彼女は,健治と一緒に乗るはずだった船に一人で乗っていた。その顔をアップでカメラがじっと見詰める。涙が頬を伝うが明るみを帯びた,とてもいい表情をしている。そして,カメラはひかりが見ている夜景に切り替わり、“ムーンリバー”が流れて心に染みる。(河田 充規)
公式サイトはコチラ
(C) 2011 ギャンビット