～人質救出作戦からテロ防止まで衝撃のリアル～

　出演者を見てください。聞いたことのない人が羅列されている。実は、この映画は無名俳優たちばかりをキャスティングした、言ってみればイタリアン・ネオリアリスモのように、素人たちを使ってリアリティーを追求した1本である。ただ、その内実としては、軍事費増強で人件費削減のような映画のように思われるかもしれない。無名俳優ならギャラは低いだろうから。

　しかし、その代わりアクション部のリアル感の追求は、半端じゃない仕上がりとなっている。VFXもあるけど大量の火薬量を使った爆発シーンに加え、ミリタリー(兵器)やら戦闘機など、正真正銘の本物を使っているような迫力。さらに、それらを駆使した臨場感あふれる戦闘シーンの連続には、終始クギ付けになるリーダビリティー(引き付ける力)がある。

　米軍によるミッション遂行映画だが、その入りはCIAの女性スパイが拉致されて、その人質救出作戦から始まる。夜の静謐な描写からスタート。朝焼けから始まり夕景で締める人質奪回アクションが、カーチェイスを含めてビビッドに描かれていく。近接撮影の妙味もあるし、攻める側からの撮影シーンの多用により、まるで観客自らが作戦行動に参加しているような疑似感覚がグーンとアップしている。救出された女スパイが得た、スマートフォンに保存された情報が、さらなるテロ防止アクションの前触れだった。

  その後、アメリカへの聖戦テロを防御する、実に緻密で細部のリアリティーにこだわったアクション・シーンが、次々に展開していくのだ。ビンラディンを暗殺したあのミッションぶりが、形を変えて披露されていく。その詳細ぶりは、機密の漏洩を心配する声が上がったほどである。軍からの協力があったのかどうかは別にして、作家トム・クランシーの企画協力が強靭だったのではないかと思う。

　米ソの潜水艦問題を描いた「レッド・オクトーバーを追え!」(1990年製作)や、その「レッド…」を始めシリーズ化された、CIAアナリストのジャック・ライアンの活躍を描いた「パトリオット・ゲーム」(1992年)など、その種の極秘系任務映画の原作者なのだから。そして、クライマックスの、ビルに突っ込んでからの銃撃戦の迫力は特筆ものだ。永く印象に残りそうなアクション・シークエンスである。(宮城 正樹)

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