制作年・国 | 2011年 日本 |
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上映時間 | 1時間31分 |
監督 | 塚本晋也 |
出演 | Cocco、塚本晋也 |
公開日、上映劇場 | 2012年4月7日~テアトル新宿、シネリーブル梅田、4月14日~シネリーブル神戸、4月21日~京都シネマ他全国順次公開 |
受賞歴 | 第68回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門グランプリ |
『KOTOKO』塚本晋也監督インタビューはコチラ
(C) 2011 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
~Cocco×塚本晋也が全身で表現する魂の映画~
『鉄男』シリーズの鬼才塚本晋也監督と、独特な感性でファンを魅了する沖縄出身の歌姫Cocco。この2人から絞り出されたような、現実と虚構が錯綜する濃密な時間を過ごし、見終わった後は魂まで吸い取られたようにフラフラだった。音楽から企画、原案、美術まで担当し、初主演を果たしたCoccoしか作り出せない激しくも脆い世界がそこにはある。
人が二人に見える恐怖心から、他人と会うことを避けてくらしている主人公の琴子(Cocco)にはまだ赤ちゃんの一人息子がいた。しかし、日頃彼女を襲う恐怖に子育ての重圧が加わり、精神のバランスを崩してしまう。幼児虐待の疑いをかけられ、沖縄の姉に息子を引き取られた琴子に待っていたのは、自分を傷つけることでようやく生を実感する日々。そんな琴子の前に現れた小説家と名乗る田中(塚本晋也)の存在が、二つに見える世界が一つになるきっかけを与えてくれる転機になると思えたのだったが・・・。
現実が歪んで見える恐怖と闘い、子どもを守らなければという責任感がさらに不安をあおる琴子の苦悩を、Coccoはまさに全身で驚くべき情熱の表現を繰り返す。笑い、泣き、叫び、自傷の血にまみれるその姿は、「生きるってそんなに辛いことなのか。」と問いたくなるぐらいの激しさだ。そんな琴子に虐待並みの痛い目に遭わされても彼女を助けようとした小説家の田中を、塚本晋也監督自身が滑稽さも滲ませながら暖かく表現。ツライ光景の中にさす光のようだったが、それすらも幻だったのかもしれない。
劇中で何回か披露されるCoccoの歌は、まさに魂の響き。この琴子はCoccoでなければ演じられない、もう1人の自分のような役なのだろう。Cocco×塚本晋也ならではの愛の物語にただただ圧倒される一方で、危険や暴力が渦巻く世界の中、最後まで貫かれる絶対的な母子の愛を今こそ胸に刻みたい。
(江口 由美)
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