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 『ヌードの夜/愛は惜しみなく
 奪う』主演・竹中直人記者会見
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★『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』主演・竹中直人記者会見

(C) 2010「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」製作委員会
『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』
主演・竹中直人記者会見

〜闇夜に輝く男女の愛…フィルム・ノワールの底力〜

(2010年 日本 2時間7分)
監督・脚本:石井隆
出演:竹中直人、佐藤寛子、東風万智子、井上晴美、宍戸錠、大竹しのぶ

2010年10月2日(土)〜テアトル梅田、なんばパ−クスシネマ
公式サイト⇒ http://nude-ai.com/
 深い闇、激しい雨、暗闇に光るネオン管の光、その中で、狂気をはらみながらも、己の欲望のまま、切実に生きようとする女たちの美しさに心奪われる。そんな女たちに利用され、振り回されてもなお愛し続けるのが、竹中直人演じる「なんでも代行屋」の紅次郎だ。ヒロインのれんを演じるのは佐藤寛子、その母に大竹しのぶ、姉に井上晴美。次郎は3人の女たちの狙う完全犯罪に巻き込まれていく…。

  腐れ縁のやくざの恋人を殺してしまった女(余貴美子)と、彼女を救おうとする紅次郎(竹中直人)とのねじれた純愛を描き、高い評価を得た石井隆監督・脚本の『ヌードの夜』が公開されたのは1993年。その続編ともいえる本作は、紅次郎の新しい物語となる。美しい娘れんに惚れた次郎を熱演した竹中直人さんが、公開を前に来阪、PR会見が行われた。
 およそ20年以上前、事務所のゴミ箱に捨てられていた『ヌードの夜』というシナリオが竹中の目に留まる。いいタイトルだなと思って拾い上げ、開くと「脚本・監督:石井隆」とある。それが竹中と石井監督との出会い…。スタッフが、竹中はロマンポルノには出ないと思って、本人に聞くことなく断っていたところを復活してもらい、竹中は主役を務める。これが石井監督の監督デビュー作となり、タイトルを『天使のはらわた 赤い眩暈』と変えて1988年に公開される。その後も竹中は『ヌードの夜』というタイトルが忘れられず、’93年に余貴美子をヒロインに迎え、竹中主演で念願の『ヌードの夜』が撮影、公開される。
 あれから17年。この『ヌードの夜』というタイトルが好きだという竹中は、ずっと続編の製作を望んでいたが、なかなか資金が集まらず、今回やっと実現にこぎつけたという。「17年ってすごく時間が経ったような気がするのに、石井組の初日を迎えた時、『あれ、17年も経ったんだっけ?』とあっという間に感じました。17年がこんなに早いなら、すぐ死んじゃうんだと思って、それが強く印象に残っています」

 『ヌードの夜』というタイトルのイメージを聞かれて、闇、切なさ、さらけ出すと答えた竹中。「役を演じることで、役を理解できると思ったことはないし、役を理解することはありえないと思う」、「自分のことも自分で理解していないし、役をとらえることはできない。宙ぶらりんのまま、でも、そこに答のないおもしろさがある」と持論を語る。紅次郎については、「いつも女性に感情移入してしまって、だまされる男。立ち向かっていくよりは、ぼろぼろ感があって、弱々しいけれど、性(さが)みたいなものもあり、基本的に世の中に背を向けている人間。前向きでないところが愛おしく、石井版“無能の人”みたいな感じ」と話してくれた。


 「相変わらず寝ないし、ぐじぐじしてる」という石井監督の作品に出演する魅力については、「監督のことが好きなんです(笑)。というか、役者の仕事はまず監督を愛することだと思っているので、石井監督とは初めて会った時から、たたずまいや眼差しがとても色っぽくて、魅力を感じました。現場は結構ハードだし、監督は寝ないし、何度も何度もやらせられるし、『ヌードの夜』では何度も水中に潜りました。でも、石井監督が映像をつくりあげ、取り組む姿を愛おしく感じるんです」。演技についても、「監督の思いを体現していくもの。石井さんの脚本とセッションしていくイメージで、演じている時はほとんど無意識に近いです。集中力と瞬発力」と語った。 
 クライマックスとなる石切り場での撮影については、「ほとんどワンシーンワンカットで、スタッフはカメラの移動の練習とか、照明をどこに置くとか、本当に大変だったと思います。でも大変なことって、おもしろいことで、大変さを超える楽しさもありましたし、みんなよく頑張ったと思います。江戸時代からある石切り場で、空気も悪いし、土ぼこりもひどくて、なんともいえないところでした。スタッフが行き来しているので、蜘蛛の巣なんてないはずなのに、蜘蛛の巣が顔にかかってきたりして、なんでこんなところに!?とか、最後の雲母が降るシーンも、寛子ちゃんを抱きしめながら、口の中に雲母が入ってきちゃって、ああとか思いながら、これが目に入ったら痛いだろうなと想像したり…そういう感じで」と身振りを加えて、楽しく撮影現場を振り返ってくれた。

 れんを演じた佐藤寛子とは、5年ほど前に下北沢の飲み屋で会って以来のつきあいで、共演は初めてとのこと。「昔よく飲んでたよなということもあって、不思議な感じでエッチな気持ちにはならず、大切なものに触っている感じでした。日本で女優さんが裸になることは大変なことだと思うし、誰もやりたがらないことなので、よくやったなと思います。あれだけ自分をさらけだしてすごいと思いました」
大竹しのぶ、井上晴美ら共演の女性について、「大竹さんとは14年ぶりで、妙にエロスを感じました。狂気はエロスに近づいていくと実感しました。着物姿もエロチックで、上目遣いに見られた時は、今まで感じたことのないエロスを感じました」、「井上晴美さんは2児の母親ですが、たくましくなったというか、日本の女優じゃないような、今まで感じたことのないオーラを感じました」
 石井隆監督の現場では、寝ない(徹夜)、殴られる、蹴られるはいつものことで、ハードな現場での過酷な撮影は、思い出したくないほどと言いながらも、記憶の糸を引っ張り出すようにして、現場の話をしてくれた時、竹中さんの表情は生き生きとして、言葉も流れるように出てきて、すてきだった。普段ドラマなどで拝見しているのとは違い、ご本人は至ってシャイな方で、54歳にはみえないスリムでダンディな姿からは、尽きせぬ映画愛とエネルギーを感じた。
  余談になるが、竹中さんが37歳の時の『ヌードの夜』以降の仕事について聞かれ、岡本喜八監督の『EAST MEETS WEST』(‘95)の撮影で、アメリカのニューメキシコ、サンタフェで2か月過ごし、子供の頃からたくさん観て大好きだった喜八監督の作品に出られるなんて感動だったと語ってくれたのは、喜八ファンの私にはプレゼントだった。
 石井隆ファンが待ち望んだ本作。相当に狂っているが、相当に美しく、すごかった。石切り場でロングにひいたカメラは、一体どこから撮ったのだろうかと思うほど、どきりとする美しさ。女性映画ファンにも十分満足してもらえる作品だと私は思う。
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