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 女性監督集団『桃まつり“うそ”』
女性監督集団による話題の短編オムニバス映画祭『桃まつり“うそ”』が5月22日から大阪、中崎町のプラネットプラスワンシアターでレイトショー上映される。

“桃まつり”とは、「若手女性監督たちにもっと上映の場を!」と立ち上がった女性監督による自主製作・自主上映集団で今年で3年目を迎える。新たな才能の発見の場として、年々注目を集めており、3月にはアップリンクにて好評のうちに上映を終えたばかりである。
3回目となる今年のテーマ“うそ”をめぐる11のストーリーから、甘く、切なく、笑えて、泣けるあなた好みの“うそ”を是非見つけてほしい。
桃まつり劇場サイト⇒ http://www.planetplusone.com/special/presents_2.php

今回は、5月22日の大阪公開を前に、宣伝隊長としても活躍している『カノジョは大丈夫』の安川有果監督と『FALLING』(加藤麻矢監督作品)主演の西山真来さんに話を伺った。

 安川有果監督インタビュー

【作品紹介】  『カノジョは大丈夫』(32分)
<監督、脚本、編集>安川有果
<出演>前野朋哉、牧野鏡子、板倉善之

ファミリーレストランで働きながら平凡な生活を送っていた輝男はある日中学時代の同級生、明石幸子と再会する。住むところのない明石は輝男の家で暮らすようになるが、奔放な彼女に輝男は振り回されてしまい・・・。

純情男と何を考えているか分からない奔放さを持つ幸子の噛み合わない会話が滑稽で、どこか切ない。親近感のあるキャラクターにニンマリしながら、他人と向き合うことの難しさを考えさせられた。コミカルさに包まれた中に芯を感じる作品だ。

【インタビュー】 安川有果監督

20歳のときから専門学校で映画作りを学んだという安川監督。卒業制作の『幸恵』では自分で脚本を書き、主人公の女の子が精神的な病を抱えているシリアスなストーリーに仕立てたそうだ。本作は『幸恵』以来の監督第2作目となる。

―今年「桃まつり」に参加することになったきっかけを教えて下さい。
昨年の桃まつりにプロデューサーの大野さんと三年連続監督されている竹本直美さんが来場されていて、話しているうちに仲良くなり、卒業制作の『幸恵』という作品を「桃まつりに参加したいです」という一言を添えてお渡ししたら、数ヶ月後に「参加してみない?」と竹本さんからお電話をいただいて。「うれしかったのでやりたいです!」と返事しました。

―今回のテーマは「うそ」ですが、そこからどのような話を撮ろうと考えたのですか?
男の子を主役に撮りたいとか、コメディーが撮りたいというのが漠然とあって、それを今回の桃まつりでやってみようという気持ちになりました。今回は「うそ」というテーマがあったので、そのテーマにもコントが合っている気がしたんです。現実の模倣というよりは虚構じゃないかなというところから考えていきました。

―実際に参加してみた感想はいかがですか?
他の作品が気になるということはすごくありました。他の監督は映画学校を出たあとに更に芸大で学んだような監督がいっぱいいて、ドキドキしました。でも、自分が面白いと思うことを私は荒削りであってもやろうという感じで開き直ってやりました。

―脚本段階で各監督が会ってすりあわせをしたと聞きましたが。
東京の監督たちは何度か集まって話し合いをしていたようなのですが、私は遠くて参加できなくて、1月ぐらいに試写で集まって、そこから徐々に監督さんたちとコミュニケーションをとっていきました。脚本段階で全員に送って意見を聞く人もいたし、できればそうしてとプロデューサーの大野さんは言われていましたが、もう人に見せて意見を聞けるどころの余裕はなくて、私は送らずに作りました。

―東京でのお客さまからの反応はいかがでしたか?
意外なほどすごくウケてたのがうれしかったです。すごい笑いが起こっていて、それが本当に気持ちいいというか。前野さんはコミカルな演技がとても上手な方で、お客様の反応をダイレクトに感じられて楽しかったです。

―出演者への演技の指導はしたのですか?
前野さんにはとにかく驚いてくれと言ったり、オーバーなぐらい、「何が起こっているんだ」というようなリアクションをお願いしました。理解するのに時間がかかっているように演じてくださいと言ったら、ああいう風にやってくれて、役者としての解釈力や実践力がすごい方です。幸子については、キャラクターが自分自身でもまだあまり掴めていなかったので、牧野さんに委ねていました。どうなっていくんだろうと見守っていた感じです。

―輝男については実在のモデルがいたのでしょうか。
モデルはいないのですが、音楽を聴いたり映画を観たりしていると、結構うじうじしている男の子が多くて、悶々としてる様子に共感したり、その気持ちを理解したいと思ったりします。私自身が男性の曲を聞くことが多くて、切ない男心が好きなんです。

―幸子は好き勝手なことをしている割には、あまりきついことは言わないですよね。
そうなんです。本当にこういう女の人は成敗!的には描きたくなくて、何か男の子にわからない存在に描こうと思いました。ただのイヤな女にはならないように気を付けて、「いるよな」的な女の子をデフォルメして描いてみました。

―作風を、今までとは違ってわざとベタな感じにしたとのことですが。
元々ベタなのがとても好きで、物語がベタなのになんでこんなに面白いんだろうと謎だったんです。黒沢清監督の『ヤクザタクシー』という映画は、設定はやくざのタクシーと普通ではないのですが、物語の展開は本当にオーソドックスで、なのに面白くてやはり映画は演出なんだなと思いました。だから、物語はベタにして、演出をがんばろうというのが今回の目標でした。

―具体的に「演出をがんばる」ということはどういうことを心がけたのですか。
役者に対するだとか、風景だとか全部ですけど、ワンシーン、ワンシーンが全部くすっと笑えるところがあるようにしました。ワンシーン、ワンシーンが面白ければ映画は面白いのではないかと思い、そういう要素を入れたいと思いました。

―撮影で苦労したことはありましたか。
今回は大所帯で10人だった(前回は4人)ので、人数が増えれば増えるほどスケジュールの管理が難しかったです。照明を本格的にやると時間がかかることが分かっていなくてスケジュールを立てたので、全然スケジュール通りいかなかったんです。スケジュールを立て直しながら、シナリオを直しながら、カット割りを考えながら、目の前の役者をどう演出しようかと考えていました。いろいろな問題を抱えての撮影だったので全てを身をもって勉強できたのは大きかったです。本当に経験してよかったです。

―自分のやりたいことを伝えるという点に関してはどうでしたか。
役者さんがすごく理解力があり、一言言っただけで全部分かってくれ、もっと面白くしてくれるという人たちばかりなので、本当に助けてもらった感じです。映画が本当に好きという人たちだったので、脚本がどうのこうのというより、脚本が悪かったとしても自分たちが面白くするぞ!というぐらいの感じだと思います。その成果だと思います。

―印象的なシーンや自分で気に入っているシーンはありますか。
中盤、バイト仲間の女の子が「私結構好きだったんですよ。」と言うところは、この映画がどうなるのか全然分からない中最初に撮ったシーンで、「ああこういう映画か」というのが自分の中に見えて、あそこは思い出深いですね。前野さんが聞き返すところが面白くて、「あ、いける」と思いました。
また、公園で幸子の昔の先輩が逆上がりするシーンは、その場でせりふも逆上がりの段取りもつけてやったんですが、その割には思いも寄らぬ良さがでたシーンになりました。もともと即興っぽいのが好きで、偶然を取り込むということができたなと思って、あれは楽しかったです。

―次はどんな作品を撮りたいですか?
長編が撮りたいです。男性と女性をちゃんと描いた映画を作りたいです。映画を見ていて女の子が紋切り型だったり、男のファンタジーを押しつけられたような女性像だったりするので、そういうのではなく、今の女性の問題を取り入れつつ、笑えて、切実に考えさせられるようなもの。エンターテイメントでありつつもいろいろ描きたいこともあるような作品を作りたいです。ただ作家性だけではなく、エンターテイメントの部分を持っている映画の方が好きだということが自分でも分かってきました。

―安川さんからみた桃まつりの見所はどこでしょうか?
各監督がそれぞれやりたいことを持っていて、それぞれ違うというバラエティーの豊かさですね。映画の今の状態が見えてくるような気がします。技術がすごくプロ並みの作品があるのも今の自主映画の流れの一つだし、かと思えば技術的にはそんなにかもしれないけれど不思議な魅力があったりとか。いろいろな映画があるということが見えてきたりして、映画そのものについて考えさせられる面白いプログラムだと思っています。

2作目とは思えない安定感のある作品に仕上がった『カノジョは大丈夫』が新作として桃まつりで上映されている中でも、すでに次回作への意気込みが感じられるインタビューとなった。宣伝隊長として広報や各種トークイベントをこなす中で吸収されることが、きっと今後の作品作りに反映されることだろう。「やりたいことがいっぱい」と目を輝かせる安川監督、関西出身の女性監督として今後とも注目していきたい。

 女優・西山真来インタビュー
【作品紹介】   『FALLING』(26分)

<監督>加藤麻矢
<出演>春山怜那、山田ゆり、西山真来

派遣社員のアベコは悪夢にうなされる夜を過ごしている。会社ではミスばかりで、解雇を言い渡されるアベコに同僚の梨花はいつもきつく当たるが、アベコは梨花の言いなりだ。同僚のいづみがアベコに声をかけても、耳を貸そうとしない。ある夜、梨花にナイフを渡されてカップルを恐喝したアベコは、刺されて死んでしまうのだったが・・・。

ヴァンパイア映画としての古典的アイテムをたっぷりと盛り込みながら、アベコを巡る同僚の女性2人の思惑が絡み合い、ヴァンパイアより怖い!?女の闘いが垣間見える。個性的なキャラクターと衝撃のラストが印象的なB級テイスト満載のエンターテイメント作品だ。

【インタビュー】女優 西山真来さん

木村文洋監督作品『へばの』主演をはじめ、自主上映映画への出演や演劇など多岐に渡って活動している西山真来さん。今回演じた印象的な悪役梨花や、初の「桃まつり」作品参加についてお話を伺った。

―女優を目指すきっかけを教えてください。
幼稚園のときに、4人兄弟の一番下で、かわいいと言われる一方で、一人だけぽんと離れていたので話に入れなくて、いっぱいの兄弟の中でどうやったら目立てるかということを考えていたんです。生活発表会のときに親が見に来て、「これや」と思って、そこからやりはじめました。大学時代に自分で劇団を立ち上げ、そのあたりから本格的にやりはじめました。最初は4人で、偏ったことばかりしていたので、だんだん人が減ってすぐ2人になって、2人で4年ぐらいやっていました。ギャラリーとか、地下室とか、鴨川とか、食堂とか、ポルタ(京都の地下街)でゲリラでやったりとか、今思うと過激でした。

映画は2006年プラネットで行われていた『赤い束縛』の唐津正樹氏や『へばの』木村文洋氏に主催によるワークショップに勉強しようと思ってきたのが始まりです。デビュー作はワークショップの生徒で作った『喧騒のあと』で、「なんであいつはあんなにやる気ないんや。」と裏で言われてたらしいです(笑)。

―桃まつりの作品に出演することになったきっかけを教えて下さい。
昨年はお客としてオールナイトで鑑賞しました。短編でおなかいっぱいになったことはあまりなくて、ガツンとおなかいっぱいになりたいときは短編ではなく映画でも本でも長編を見るので、短編の面白さはちょっと分からんなと思っていたのです。でも、昨年の桃まつりを見たときに、なんかいろんな味が一挙に楽しめるというのとは別に、一貫したざらっとした何か、ともすれば不快になりかねない一つのトーンがあって、それが味でいえば濁りみたいな感じで、物足りなくなかったんです。

瀬川浩志監督の『焦げ女、嗤う』のオーディションで今回の監督の加藤さんが助監督でいらっしゃって、すごく話が盛り上がって覚えていてくださっていて、声をかけて下さいました。(主人公3人の中で)私はすごく早い段階から決まっていたらしいです。

―今年は参加する側となった、桃まつりはいかがですか?
現場もすごく楽しくて、あとの二人もめちゃくちゃキャラが濃くて、主役の女の子もむちゃくちゃかわいいのに、本当に変わってて、と思いきや舞台挨拶ではすごくしっかりしていて、二重人格みたい(笑)。監督さんもとても濃くて。ほわんとしたところも含めてすごくきれいでやさしくて、落ち着きのある大人なんですけど、毎日あんなこと考えてますし、血を出すところなんかもがんばってしまうんです。

―梨花を演じるにあたって、監督からの要望はありましたか?
このせりふはこう欲しいというのは何度かありました。アフレコのときナチュラルというよりはもっと強弱をと。私は基本的に一つのせりふに抑揚をつけたり感情を表したりしないでと言われていました。低く強くずっとあれ!みたいな感じです。

―西山さんは梨花をどんなキャラクターと思って演じたのですか?
派遣社員であって、感じは近いなという気がしました。楽しいことを見つけようと思っているけれど、そうじゃない日もあるし、そのときはあんな感じだなと思って。あまり外からのキャラというよりは、「分かる、分かる」ということを自分に溜めていったみたいな感じです。ちょっといじめて楽しいとか、自分についてこさせるとか、嘘ついて楽しいという気持ちも分かるので、そんな感じで演じました。バイトをしていて、「これ毎日続くの」と思う時のあの感じをヴァンパイアシーンでも爆発させましたね。

―梨花は非常に刺激に飢えていて、アベコがヴァンパイアになったのを見て嬉々とした表情を見せたのが印象的でした。
ヴァンパイアになったアベコと私がすっと寄っていくとき、自分たちとしてはスーッと通ったきたものがあって、でも遠くからしか撮ってもらえなくて、「遠くからじゃなくて近くから撮ってもらったら絶対にすーっと通ったものが撮れたのに」と文句言ってました(笑)。

―自宅でピアノを弾くシーンは、公園で恐喝させるようなワルの梨花とは正反対のイメージを与えましたね。
もともとは違うことをするはずだったのですが、ピアノがあるということで監督から「ピアノを弾けますか」と聞かれたので、「ピアノ好きです。」と答えたら、「じゃあ、著作権問題なさそうなものを何曲か弾いておいてください。」と言われて。何曲か弾いていた中のひとつをその場で選んでもらってという感じでした。

―梨花の服もバリエーションがあって、様々な面が表れていました。
公園のシーンとか、腕時計と腕輪と指輪と毛皮を着て、服が一つ一つ楽しかったです。服も監督が考えたのですが、ヴァンパイアになったアベコの赤いコートとかも、なかなかないですし、かわいいと思います。
―東京での反応はどうでしたか?
初日に一度みただけですが、結構笑ってもらえてよかったです。「そこで笑ってもらえるとは!」という場面で。十字架をストッキングで結ぶとき、私たちは必死だったので、「何で笑うの?」といった感じでした。

―西山さんからみた桃まつりの見どころを教えて下さい。
桃まつりって、いろいろ見られるのに全部骨太というか、一貫したざらざら感が本当に魅力だと思っていて、腹にくる感じ、ずどんと体に来る感じです。話の内容は説明できたりもするけれど、それこそ食感みたいな感じがあって。直感的なものがありますよね。すごく男前な作品もありますよ。

西山さんが語る桃まつりの魅力に、思わず頷かされた今回のインタビュー。「桃まつりの宣伝を通して、一緒に何かやりたいと思っている人に出会える。」と、出演するだけでは得られない出会いを体験しているそうだ。
西山さんの次回作は、この夏アップリンクで公開される瀬川浩志監督作品『焦げ女、嗤う』(シネ・ドライヴ2010でも上映)。また、万田邦敏監督作品でヤン・デクレール氏と共演の『椅子(仮)』も控えている。自称「絶賛修行中」の西山さんがこれからどんな役を演じていくのか、非常に楽しみだ。
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