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『焦げ女、嗤う』
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『焦げ女、嗤う』瀬川浩志監督インタビュー
『焦げ女、嗤う』瀬川浩志監督インタビュー

(2010年 日本 54分)
監督:瀬川浩志
出演:新井美穂、高木公介、よこえとも子、谷尾宏之、
    真柳美苗、松本高士、西山真来、前川桃子、片倉わき

2012年3月17日〜シアターセブンにて1週間限定公開
公式サイト⇒http://kogeonna.com/
シアターセブンにて連日舞台挨拶、特別イベントを開催!
詳細⇒http://www.theater-seven.com/2012/movie_kogeonna.html
 なんとも不敵で不格好な恋愛模様が、懲りない男女の本質をえぐり出す瀬川浩志監督作品『焦げ女、嗤う』が17日よりシアターセブンで1週間限定レイトショー公開される。
  第1回CO2映画祭で主演女優賞を獲得した新井美穂、内田伸輝監督作品『ふゆの獣』での熱演が記憶に新しい高木公介、堀内博志監督『私の悲しみ』で第12回TAMA NEW WAVE女優賞を獲得したよこえとも子、木村文洋監督『へばの』、一昨年の桃まつりで上映された加藤麻矢監督『FALLING』の西山真来など、インディーズ界で活躍する個性的な俳優たちを迎え、むしろ彼らの知られざる一面が露わになっている。
 地元が関西の瀬川浩志監督が、凱旋公開に先駆け来阪し、本作の狙いや俳優たちに期待したこと、自身のおばけ論について語ってくれた。

━━━今回併映される『蛾意虫』はホラーテイストだが、今回恋愛映画に仕上げた意図は?
前作の『蛾意虫』は、ホラーと若い男女の恋愛を組み合わせて描きましたが、ホラーの部分がより取り立たされてしまったので、本作ではお芝居をちゃんと撮りたいと思っていました。普段人間が隠したい部分を見せるために、恋愛という素材を使っています。人間の格好悪い部分を描くことで、人間の愛おしい部分を描きたかったのです。

━━━本作は、若い俳優たちの演技が光っているが、キャストとのどんな部分に期待したのか。
冬子の高校時代の元彼を演じてもらった高木君とは、長野県上田市で開催されている城下町映画祭で出会いました。実は半分高木君を想定して書いたんです。彼は、見た目爽やかで、女の子にすごく思い入れがあるのに空回りする役が多いのですが、ただのいいヤツというイメージを崩したい。彼の不安定な弱さや、ちょっと腹黒いところを見せたいと思いました。

谷尾さんは、体育の先生の免許を持っているぐらい真っ直ぐないい人なのですが、オーディションでお会いしたときに目がすわっていたんです。心の奥が見えないというか、白黒はっきりつかないところが人間の面白いところで、そこを表現してもらいたいと思いました。

━━━西山さんは『へばの』や『FALLING』での役に比べておとなしめだったが。
加藤麻矢監督とは映画美学校の同期で、『FALLING』の手伝いをしていたときに西山さんと出会いました。オーディションで役者としての魅力は感じたものの、今回はピタリとくる役がなかったので、出番は少ないですが今後ぜひ出てもらいたいという意味も込めて出演してもらっています。2シーンしか登場しないから何をやってもいいということで、スピンオフ企画として東京で上司した際もパフォーマンスをやってくれました。大阪でも「週刊小宮由紀 大阪編」として西山さんがパフォーマンスを披露してくれますよ。

━━━タイトルの『焦げ女、笑う』はかなりインパクトがあるが、どんな意味を込めているのか。
しっかり意味があります。”焦げ女”は人を思う心、恋こがれる心が強すぎて焦げてしまうといった意味で、本作を見ていただいたお客様からは「全員焦げ付いてるね。」と言われたこともありましたね。”わらう”は、ちょっと上からあざ笑うという意味ですが、知り合いが調べてくれたところによると、生まれ変わるという意味もあるようです。ラストのシュウコの姿はまさにそうですね。恋愛でゴタゴタしている彼らから、過ぎ去っていきますから。

━━━シュウコを演じるよこえさんの存在感が強烈だが、特別な演技指導をしたのか。
よこえさんは、感情のスイッチがすぐ入ってしまう人で、普段から我慢しない性格なんです。今回のシュウコ役は後半まではずっと我慢をしている設定だったので、演出は結構大変でした。まだ泣く場面ではないところでも涙が溢れてきてしまって、涙が収まるまで撮影がストップすることもありました。それだけ表現力が豊かなところは本当に素晴らしいと思います。『ふゆの獣』の内田監督最新作にも出演していて、今注目されていますね。

━━━群像劇でありながらも、最後はシュウコが主役のような印象も受けるが、脚本はどのように作っていったのか。
人間ドラマを作ろうと思った時に、まずある男女のカップルで、女が男に捨てられるという設定が浮かびました。最初にシュウコの設定はなかったのですが、どんどん変容していきましたね。観客を裏切りたいという気持ちでじっくり構想を練ってから、一気に書き上げました。

━━━今回冒頭に登場するおばけは、後のストーリーとは無関係だが、おばけにどんな意味を持たせているのか。
私は映画美学校で高橋洋さんに習ったので、Jホラーを尊敬している反面それに反発もしています。一般的にJホラーでは死んだ人間を矮小化して描かれていますが、自分の経験でも祖父や祖母が亡くなって死んだ人間となっても怖くなかったんです。

今回のおばけも、例えば冒頭におばちゃんに道を聞くシーンがあって、そのおばちゃんが以降一切登場しなくても誰も何とも思わない。でも、それがおばけだったら、その後何も起こらないと疑問が生じる。それは、おばけだったら何かやるだろう、怖いことが起こるだろうという固定観念があるからなんです。そういう「おばけは怖い」という固定観念を取り払って、怖くないおばけを撮りたいという気持ちがありましたね。

 ━━━作品の中で好きなシーンやセリフは?
冬子に「別れよう。」と言われた圭吾が、「傲慢なヤツだな。人の心なんて思い通りになるわけないだろ。」と言った後に、「他人なんて自分がどうしようと傷つくときは傷つくんだ。」と言うんですが、このセリフが好きです。圭吾のある種の諦めであり、逆にそこに谷尾さんが演じる圭吾の強さが出ています。

━━━ご自身が影響を受けた監督は?
『バッドマン』のティム・バートン監督が大好きで、映画を作りたいと思うきっかけになりました。自分が映画を作り出したときにはミヒャエル・ハネケ監督の『ピアニスト』に影響を受けたし、映画美学校に入ってからは、川嶋雄三監督や増村保造監督作品を見て映画の濃度を学びましたね。

━━━今後、どのような作品を手掛けたいか。
滑稽な人間は描いたことがあるけれど、もう一歩踏み込んで、ちゃんと人を想う気持ちを伝えられるような作品を作りたいですね。恋愛を切り口に描いていくと思います。

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 童貞系恋愛映画や純愛映画が登場する中、久々に肉食系男女の自己中心的な恋愛群像劇を見た気がする。状況的にはドロドロとしているのに、どこかバカバカしくて笑えるのは「人間の格好悪い部分を描くことで、人間の愛おしい部分を描きたかった。」と語る瀬川監督の成せる業なのだろう。それでも恋をせずにはいられないのが人間なのだ。
  今回の上映では第12回水戸短編映像祭入選作の『蛾意虫』が併映される。『焦げ女、嗤う』と合わせて、おばけや恋愛を題材に滑稽ながら愛おしい人間模様を描く瀬川ワールドを味わってみてほしい。

(江口 由美)ページトップへ
(C)「焦げ女、嗤う」製作委員会
   
             
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