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記者会見レポート
  『あんにょん由美香』 松江哲明監督インタビュー@
松江哲明監督『あんにょん由美香』取材

『あんにょん由美香』2010年2月〜京都みなみ会館で公開予定
『ライブテープ』2010年1月2日〜シネ・ヌーヴォX、プラネット・プラス・ワン、2月〜京都みなみ会館で公開予定

・『あんにょん由美香』公式サイト⇒ http://www.spopro.net/annyong_yumika/
『ライブテープ』公式サイト⇒ http://spopro.net/livetape/

 2009年初秋に大阪のミニシアターで公開され、話題を呼んだ『あんにょん由美香』の松江哲明監督。新作『ライブテープ』が、東京国際映画祭2009の「日本映画・ある視点」部門で作品賞を受賞するなど、これからの活躍が期待される若手監督の一人。

 『硬式ペナス』(監督:カンパニー松尾)、『たまもの』(監督:いまおかしんじ)、『由美香』(監督:平野勝之)と傑作を残し、2005年、34歳の若さで急逝した伝説のAV女優、林由美香。生前、由美香さんと交流のあった松江監督は、由美香さんの代表作を撮った三人の監督と映画の撮影現場を訪ねるとともに、由美香さんが主演した謎の韓国産ビデオ作品『東京の人妻 純子』についての取材を始め、その監督を訪ねて韓国に飛ぶ。日本や韓国のさまざまな映画人と出会い、新たなドラマが生まれた。2009年夏、大阪での公開を前に来阪された松江哲明監督に映画に込めた思いをうかがった。その抄録を2回に分けてご紹介したい。
Part.1:『あんにょん由美香』に込めた監督の思い、そして『ライブテープ』へ

Q:由美香さんの映画を撮ろうと思ったきっかけは?
とんちんかんな日本人描写の韓国ビデオがあることを本で読んだ編集者が、著者からビデオを送ってもらい、皆で観て仰天し、僕もおもしろいと思いました。『女優 林由美香』という本の出版記念イベントで、そのビデオ作品『東京の人妻 純子』が上映され、カメラを回させてもらったら、回りの人達が皆一緒に笑っていた反応が暖かくて、それもよかったし、やっぱりおもしろいよねと『あんにょん由美香』をつくろうと思いました。
僕は在日三世で、AV業界の男優さんや在日の方のことも撮っていて、例えばちょっとおかしな韓国語とかでも、おもしろいと日本人よりつっこめるんです。韓国の映画人にも、なんでこんなのつくったの?と楽しく聞けそうな気がして、それが映画をつくろうと思った一番のきっかけです。
この作品は、本当に準備しないで撮りました。こういう流れが撮れそうだからといって撮るのではなく、何が起こるかわからないから、全部カメラを回していって、手持ちのフィルムが増えていったという感じです。

Q:三人の監督にプレッシャーをかけられながらも、由美香さんの映画を撮りたいと思い、最後まで撮り続けられたパワーはどこからきたのですか?
僕が初めてつくった、19歳の時の映画学校の実習作品、AV業界を撮ったドキュメンタリーに出演してもらった由美香さんに、作品を観てもらって「まだまだね」と言われたことじゃないかと思います。自分としてもだめだと思いましたが、被写体の由美香さんに「まだまだね」と言われたのはやはり悔しかったです。だから「いつかちゃんと」というのが、ずっとあって、その後、ドキュメンタリーを撮り続けていても簡単に由美香さんに「出てください」と言えないわけです。

Q:最初に由美香さんに会った時から、すごく魅力を感じていたのですか?
僕が初めて撮ったプロの女優が由美香さんなんです。その後、自分が仕事を続けていても、由美香さんみたいな人はみたことないです。女優なら、どう見られるか自分のイメージをすごく気にすると思いますが、由美香さんはそれが全然ないんです。見られる仕事なのに常に赤裸々。回りがいくら心配しても「私はいいから、いいじゃん」みたいな感じで、常に自分らしく生きた人で、人前でとりつくろったりということができない人だったんじゃないでしょうか。そこが、僕にとって一番、魅力的なところでしたね。

Q:それだけ人の目から自由だったということですか?
自由という感じはしないんです。僕のイメージですが、由美香さんって、男性の欲望の眼差しを向けられた時に自分がどう反射すればいいのかを本能的にわかってる人だと思います。自分自身から女優といって輝く感じではなくて、誰かが光を当てた時に、反射して強かった人のような気がします。
由美香さんの出演作品は500くらいあって、そのうち、由美香さんらしい作品というのは、映画でいえば十本か数十本位と思います。ただ、ひどいシナリオでも、由美香さんが出演することで、映画のレベルみたいなのはぐんと上がる、そういう力はあったと思います。由美香さんらしく映っていた作品としては、やはり『たまもの』、『由美香』、『硬式ペナス』でしょうか。監督がこう映ってくれというのを、由美香さん自身が、いや、こういうのがあるんじゃない?こうよと言って跳ね返しちゃうところがあるような気がします。

Q:松尾監督とか、車の運転中にカメラを向けて取材されていますが、運転中だと素の顔になれるからですか?
いや、そういう意味ではないですね。素の顔って信じてないです。カメラが回っている時点で、どうしても意識した顔ですよ。人の顔なんて一番つまらないです。僕は意識してる顔がおもしろいと思います。カメラ目線になったり、しゃべっているうちにセリフっぽくなっちゃったり、なにもないのに、皆、勝手に演技しだす、それがおもしろいんですよ。ドキュメンタリーって。

Q:そういうところにその人が見えるということですか?
そうですね。自分が自分の役を演じるのがおもしろいんです。たとえば、今も、こうして僕がしゃべっているうちに、松江哲明が松江哲明を演じてくる、みたいなところがあるわけで、その自分のキャラクターがおもしろいと思うんです。話を聞きながら相手を乗せたり、過剰な時は編集して切ったり、すごく気をつけながらも、いい按配な時があるわけです。

Q:映画をつくる中で、特に苦労されたところは?
主語をどうするかです。「僕」という言葉で語っているんですが、それをどれくらい強くしていいのかは悩みました。撮った映像の素材は多くて、インタビューとか一人約何分位というのは考えて、だいたいの流れは決まっていたんですが、自分の言葉でどこまで言えばいいのか、そこを切るのは大変でしたね。

Q:監督ご自身の思いは、テロップになっているのですね?
最初はナレーションをやろうかなと思ったんですけど、テロップの方がぱっとみた時の印象が強いので、テロップにしようと思いました。あと、どういうふうに語ればいいのか、例えば、僕目線から由美香さんを語っているんですけど、本当にそれでいいのかは悩みましたね。もっと違う目線で由美香さんを語ったほうがいいのかとか。結局、自分の言葉でちゃんと話さなきゃだめだと思って、最終的にああいう形になったんです。

Q:観客に向けてのメッセージがあればお願いします。
この映画自体、映画についての映画じゃないですか。林由美香さんについて、女優って何だろう、映画って何だろうということについての映画で、僕が考える映画そのものなんです。この映画の中に、映画を観ることの意味とか、由美香さんをとおしての映画に対する思いとか、僕の映画観が出てるんですよね。亡くなった人でも、こうやって新作映画がつくれるわけだし、こうやってフィルムが回る限り、由美香さんはもういないけれども、新たなお客さんとの出会いになるわけで、そういうことができるのは、映画ならではのことだと思うんです。だから由美香さんを発見してほしいなという気持ちがすごく強いです。知らない人にこそ由美香さんを観てもらって、こういう女性がいたんだとか、由美香さんの他の映画を観てみたいと思ってほしいです。
映画って、単純にただ観るというものではなくて、映画館でどんな人が隣に座ってるのかとか、この映画を観た後に自分の人生観か何かが変わるかもしれないし、もしかしたらこれを観た後、何か食べたいなと思うかもしれません。わざわざ映画館に行くということ、誰と観るか、観た後どうするか、どんな人を誘うのか、とかそういうことを含め、何かその動くという行為自体が映画だと、僕は思うんです。だからそういう体験をこの映画でぜひしてほしいなと思います。DVDとかでは体験できないものだと思いますし、ぜひとも映画館に行ってほしいです。
ドキュメンタリーというのは、フィクションのように「よういスタート」で撮ったものではなく、現実を素材に撮っているものなので、絵空事だけじゃない何か現実の力がどこかあるわけで、それはすごく感じやすいものだと思います。

Q:映画での音楽の使い方について、どうお考えですか?
音楽は好きですね。音楽のことはすごく考えます。『あんにょん由美香』でも、全部、音楽をつける位置を指定しました。音楽を使ってフェードアウトするのは嫌いです。音楽は音楽でちゃんと演出を考え、音楽ができてきたら編集も変えています。音楽の力って、ドキュメンタリーと合うという気がするんです。
僕は、ライブに行くのがすごく好きで、あのライブハウスの熱気が今の映画にあるのかなと思うんです。なんか映画自体が負けてるなっていう気がして。だってライブハウスで人気のあるミュージシャンが演奏して興奮しますよね。今どれだけの映画が、映画館で、ライブと同じ値段で、ライブと同じくらいの劇場を出た時の高揚感ができてるのかな、とすごく考えます。映画館でやっているメジャーな映画って、別にテレビで観ても一緒みたいなものが多いじゃないですか、表現として。そういうメジャーな映画がライバルではなくて、僕のライバルはミュージシャンだったり、同世代で音楽をやってる人の方が刺激になりますね。

Q:次の作品も、もうできているんですね?
 『ライブテープ』という新作なんですが、これはワンシーンワンカットで撮った74分の音楽映画なんです。元旦の日に、前野健太というミュージシャンが吉祥寺の町を1キロくらい北から南まで16曲歩きながら歌うのを、街頭で、ゲリラ撮影で撮りました。マイクは6本使っていて、音はミックスして相当に変えているんですが、映っている映像はワンシーンワンカットという映画をつくりたくて。

元旦でないといけなかったというのは、結構今、自分のできるドキュメンタリーについて考えていて、ゲリラ撮影とか、人に迷惑をかけたかったんですよね。撮影行為自体が迷惑じゃないですか。でも、そういうことをしたかったんです。そういう気持ちが強かったので、映ってる人全員がエキストラみたいな考え方で、何が起こるかわからないという生々しいのを記録してやろうというある種の実験映画です。

※林由美香:1970年生まれ。1989年よりアダルト・ビデオ、ピンク映画に出演しはじめ、その活動の場はオリジナルビデオからインディーズ映画にまで及び、その存在感と独特の魅力て、AVのみならず多くのファンを獲得。2005年6月26日、一人暮らしの自宅にて急逝。享年34歳。

(PART2へつづく)

  『あんにょん由美香』 松江哲明監督インタビューA
PART2『あんにょん由美香』についてより深く

◆3人の監督達と撮影現場を訪ねる旅について

Q:由美香さんの主演映画を撮った3人の監督とそれぞれ一緒に撮影現場に行かれたのですね?
僕は普段から松尾さんを知っていて、質問に対してどう答えるかは大体わかってる部分もあるんです。でも、映画の撮影現場に行ったら、何を言うかはわかりません。それが大事なことで、そこを信じたいんですよね。

平野さんと北海道で一緒に自転車で走った時も、『由美香』に出てくるあの場面、あの山頂に来て何を言うかなんです。あの上り坂大変だったよ、と話すのと、実際に一緒に走って、その時、何を言うのかとは、全然違うじゃないですか。だから、僕は、じゃあ一緒に走りましょうって言うんです。その時、その時の感情を知りたいし、そこしか信じてないんです。だから、行く、会う、話す、体験する、ですね。行って、何を聞くかです。

※『硬式ペナス』(’89年 カンパニー松尾監督):林由美香のデビュー当時の代表作
『由美香』(‘97年 平野勝之監督):林由美香と平野監督との自転車不倫旅行ドキュメント。AV作品ながら、ミニ・シアター系で公開され、大きな話題となった。
『たまもの』(‘04年 いまおかしんじ監督):フランクフルト映画祭、チョンジュ映画祭にて上映され、国際的にも注目され、日本でも、ピンク映画の題名を改題して一般劇場公開された。

Q:平野監督は、松江監督が一緒に北海道に行くことに賛成してくれたんですか?
そうです。というか、平野さんの方から北海道に行くぞって言ったんです。あの平野さんがただのインタビューで済むはずがないと予想はしてましたけど。平野さん自身も自転車で何度も北海道に行っているんですが、あそこだけは走りたくないと言って、あのルートは避けていたそうです。自転車で上るのは本当に大変な長くてきつい坂なんです。

Q:電車の線路で、監督が由美香さんの演技を模倣する場面は?
『女優 林由美香』の本の表紙にもなった、映画『硬式ペナス』の中の有名なシーンです。僕はただあそこに行って松尾さんが何て言うかを撮りたかったんですが、「じゃ、松江行けよ」と言われ、あれは、松尾さんがたまたま思いついたのであって、僕がやってくださいと言ったんじゃないです。十何年前、松尾さんがあの場所で由美香さんに「振り向けよ」とか言って撮影してたのかなと思い、現在と映画『硬式ペナス』のシーンとをカットバックしました。

Q:映画に出演されていた人達の他にも、いろいろな方に取材されたのですか?
何人かいらっしゃいます。あのビデオ『東京の人妻 純子』についての情報が全くなくて、僕達はとりあえず、あのときのことを知っている人には、とにかく話を聞こうと思って、何人も話を聞きました。編集でカットした人もいるんですけど、撮りながら、こんなこともあったんだというびっくりは生かしましたね。

Q:由美香さんの映画をつくることについて、先輩に当たる平野監督に「リスクは大きいよ」、「自分なりにどう決着つけるのか、ごまかすような真似するなよ」と言われて、撮るのをやめようかと迷うことはなかったですか?
それはないですね。むしろ、より決意を固めたという感じです。僕にとって「ごまかさない」って何だろうなと考えた結果が、あのラストなんです。由美香さんは亡くなってはいるけれど、フィルムが回り続ける限り、由美香さんは生き続けるという結論が、僕にとっての覚悟でした。

◆Vシネマ『東京の人妻 純子』について
Q:韓国に行くというのは決めていたのですか?
この映画を撮るのに、韓国というのは絶対取材しなきゃいけないだろうと最初から決めていました。あのビデオ作品自体、韓国のスタッフ、キャストが撮ったものですし、出演した役者さんたちはどんな人なのか、プロダクションは一体どんなところか、ユ・ジンソン監督にも会いたいと思っていました。
撮影を始めて3、4か月経った頃、『東京の人妻 純子』の台本を見つけて、ビデオ作品には、台本のラストの部分がなかったんです。あのラストを読んで、これはまさに由美香さんのことだと思ったんですよ。すごくいいなと思って、僕自身、観たかったですし、これが僕にとっての由美香さんに対する気持ちというかある種のメッセージになるなと思いました。

Q:『東京の人妻 純子』のラストシーンが、台本に書かれているのに、撮影されずに終わった理由は何だったんですか?
ユ監督に聞いたら、撮影日数がなくて、間に合わなかったからって(笑)。でも、それは台本をみたらわかりますよ。台本を全部読むと、もっと話が大きいんです。金浦国際空港から始まり、韓国でのシーンもあったりで、撮りきれるわけないんです。ラストの他にも撮っていないシーンがたくさんあるんです。

Q:日本と韓国の男優さんが二人とも子供が生まれたばかりで、生活費のためにAVに出ていたとか、役者さん達の映画への思いも描かれていますね?
ピンク映画とかAVでは、主役は女性なんです。映画の形として、男性は決して主役にならない。にもかかわらず、男優さんたちがやっているのは、映画に関わりたい、映画が好きというモチベーションだけなんです。だからどうしても生活は苦しくなりますよね。そういうジリ貧の中で、家族のために俳優を諦めるというのはすごくわかります。僕は映画学校を卒業してから、そういう世界は近くでみていましたから、この映画でも、こういう人たちを描くことになるだろうなというのはありました。

Q:撮影されずに終わったラストシーンを監督が呼びかけて完成させますが、このときのカメラは、インタビューもされた柳田友貴キャメラマンですか?
違います。柳田キャメラマンは、あの時点では、既に引退されていて、『東京の人妻 純子』でも、現場の制作担当で、柳田さんが撮っているわけではありません。だから、『東京の人妻 純子』の撮られなかったラストも、柳田さんではなくて、僕らが撮らなきゃいけない、というか、思いを引き継ぐという気持ちもあって、僕の知り合いの若いキャメラマンにお願いして、撮ってもらいました。それは僕のこだわりでもあるんです。

◆『あんにょん由美香』のラストについて
Q:沖縄に行かれたのはなぜですか?
たまたま沖縄で僕の以前の作品の上映があって沖縄に行きました。その時、首里劇場に行ったら、偶然由美香さんの映画を上映していて、びっくりして、それで沖縄の制作会社に機材を調達してもらい、カメラを借りて撮影したんです。本当の偶然でした。

Q:猫はお好きなんですか?
ラストシーンであの猫がいて、なんか由美香さんがいるって感じだったんです。僕にとって、由美香さんはふらっと来てふらっといなくなる、気まぐれなネコ型の人なので、由美香さんのイメージと重なり、最後に、あの猫を見てなるほどと思って(笑)。
ラストにあの猫がいたから、前半、猫のシーンを足したんです。ドキュメンタリーはいろんな可能性があるから、たくさん撮っておきます。動物はどこかで使えるところがありますから、基本的に撮りますね。猫がいる時は撮っておいてほしいとキャメラマンにも事前に言っておいて、比較的撮ったんです。撮影に行ったらあちこちに猫がいて…。全部初めからねらって猫を撮っているわけではないんですよ。


 ドキュメンタリーという手法で現実を演出し、ドラマをつくりつづけてきた松江監督が、「これまでの技術を全部ぶち込んで」つくったという『あんにょん由美香』。東京オールロケの韓国のVシネマ『東京の人妻 純子』で、片言の日本語がとびかう中、真剣に演じる由美香さんの姿にひかれ、取材が始まる。1本のエロ映画がきっかけで始まった旅は、いつしか映画について、役者について、深く考えさせ、一人の女優の姿を浮かび上がらせる。ピンク映画に出たため、韓国で一般映画への出演の道を絶たれてしまったという男優の存在も印象深い。松江監督の背伸びしない率直な気持ちがすがすがしい本作は、由美香さんのことを全く知らない観客の方々にも、きっと興味深く観てもらえるにちがいない。

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  『真幸くあらば』 主演:久保田将士
『真幸くあらば』

(2009年 日本 1時間31分)
監督: 御徒町凧 
音楽監督: 森山直太朗
出演:尾野真千子、久保田将至、佐野史郎、ミッキー・カーチス、
     テリー伊藤 
2010年1月9日〜梅田ブルク7 公開予定
公式サイト⇒ http://www.masakiku.com/
【STORY】
 空き巣に入った家でカップル2人を殺害し、死刑を宣告された南木野淳。そんな彼のもとをクリスチャンの薫が面会に訪れる。実は、淳が殺した男は薫の婚約者だった。淳の罪を通して婚約者の裏切りを知った薫は、淳を憎み切れない複雑な気持ちを抱えていた。やがて、面会を重ねるうち、2人は互いの孤独に惹かれあい、愛し合うようになる。
 「真幸(まさき)くあらば」とは、有間皇子が処刑される際に詠んだ辞世歌の一編で「もし(神に祈願して)叶えられたら」という意味。死刑囚・淳と、彼に婚約者を奪われた女性・薫の禁断の恋をシリアスに描く。監督は本作がデビューとなる御徒町凧。薫役を『クライマーズ・ハイ』の尾野真千子、淳役を国内外でモデルとして活躍する一方、俳優活動も行う久保田将至が演じる。
 本作がヒットしなければ俳優を引退と公表した久保田将至が来阪。全身全霊で役にのめり込み、初主演映画に取り組んだ意気込みを語ってくれた。死刑囚を演じるにあたって「刑務所は見学することができないので、刑務所の内部事情が書かれた本を読んだりしてリサーチしました。製作の奥山さんからは、引退覚悟でやってみろと言われていたので、撮影期間はずっと淳を“生きる”ことが目標でしたね。役者としての経験も浅いので、本当に必死でした。」
 第一審判決後に控訴を自ら取り下げるなど、死を明確に覚悟していた淳が、薫との出会いを経て再び生を取り戻していく過程は、静かに詩的に綴られる。「淳は、孤独で愛を知らずに育ったので、人の温かさに対して敏感。薫との出会いはもちろんですが、彼女だけではなく、ミッキー・カーチスさんやテリー伊藤さん演じる死刑囚たちと関わっていくなかで、少しずつ「生」を取り戻していったと思う。」
 「監督からは悲壮感が欲しいと言われていた。撮影は順撮りだったので、控訴を取り下げて、坊主になって、という風に段々と研ぎ澄ましていった。その分、消耗しましたね。僕は、役に入るスイッチのオンとオフが出来ないので、撮影後も淳から抜け切れなかった。人を信用せず、何に対しても敏感な淳を追及していくと家に帰っても意味のない行動を取ったり、人と話そうにも言葉が出なかったりしました。でも、終わった後は達成感と充実感はすごくあった。尾野さんとも撮影が進むにつれ会話が減っていたのですが、クランクアップしたあとは抱き合って喜びましたね。」
 面会や秘密の手紙のやりとりで二人は互いに理解を深め、心を満たすが、いくら求め合っても触れ合うことは決して出来ない。透明のアクリル板が2人の体温の交流を阻んでいるようでもどかしい。そして、二人はある満月の夜、同じ時間に互いを思い、愛し合う。突拍子もないが美しい、2人の“真幸くあらば”を象徴するシーンは衝撃的だ。「あの場面を初めてスクリーンで見たとき、直視できなかった。でも、撮影の時は、僕は淳だったし、薫と恋愛していたので、あの行動は必然でした。だから気負うこともなかった。客観視が出来るようになった今はちょっと恥ずかしい(笑)でも、それよりも、薫がしてくれたことを初めて見たときは、嬉しくて涙が出ました。」
 そんな2人の恋を「屈折した愛」と語り、「純愛に飽きた人に見て欲しい」と話す。自身が最も印象に残っているシーンは、「面会の場面で僕が「淳でいいですよ、母親なんでしょ薫さん」って話すところで、尾野さんがアドリブで「淳」って呼んでくれるんです。そこは、もう感情のふり幅がヤバかった。あとは、四葉のクローバーを眺めるとか、クモの巣を壊さずに窓を開けるとか、徐々に淳が人間らしくなっていく場面が気に入っている。その逆で、死刑が執行される日の撮影は、廊下を歩くシーンが淳になっているからこそ怖かったんです。あの光に向かっていくと死んでしまうと思って、最初の一歩が踏み出せなかった。そんな時に監督が「この光に向かっていけば薫に会えるんだよ。アクリル板を飛び越えられるんだから、もっと大きく歩いて行っていいんじゃないのと言ってもらって、やり終えることができました。」
(中西 奈津子)ページトップへ
  『アバター』 12/21完成披露試写会での舞台挨拶
『アバター』
〜ジェームズ・キャメロン監督の新作『アバター』を、
        オール巨人&池野めだかが応援〜


 (2009・アメリカ/2時間42分)
監督・脚本 ジェームズ・キャメロン
出演 サム・ワーシントン ゾーイ・サルダナ ミシェル・ロドリゲス スティーブン・ラング シガニー・ウィーヴァー

2009年12月23日(金)より
TOHOシネマズ梅田、梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸、シネモザイクほか、全国超拡大ロードショー

・作品紹介⇒こちら
・公式サイト⇒
 
http://movies.foxjapan.com/avatar/
 世界史上最高の興行収入を記録した『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督が、12年ぶりにメガホンを取った『アバター』をひっさげて来日。東京・六本木で開催されたジャパンプレミアに登壇し舞台挨拶を行った。同時開催された大阪のプレミア試写にも、その模様を3Dで生中継!映画界の“巨人”ジェームズ・キャメロンにちなんで招かれた、関西お笑い界の“巨人”こと、オール巨人&池野めだかが監督と“3D対面”した。
 映画に登場する身長3メートルの異星人・ナヴィを意識して全身ブルーのスーツで決めたオール巨人は、「僕がナヴィで、めだかさんが人間です」とキャメロン監督に紹介。2人の身長差に感心を示しながら、「『アバター』は、ビジュアル以上にハートに訴える作品です。この映画はCGで作られていますが、本当の俳優の演技をCGに映しているので、小さな動作もとてもリアルに描かれています。その辺りを楽しみながら、パンドラに旅をしてください。」と、映画の見所について語ってくれた。
 『アバター』は、キャメロン監督が製作に4年を費やしたスペクタクル・アクション。地球から遥か彼方の衛星パンドラに暮らす先住民ナヴィと、利益のため彼らの森を破壊する人間との戦いを描く。最新鋭のCG技術を駆使して創られた驚異の映像は、3D新時代にふさわしくまさに革命的。一歩踏み込めばスクリーンに吸い込まれそうな迫力で、観客を冒険の旅へと誘ってくれる。
(中西 奈津子)ページトップへ
  『蘇りの血』 豊田利晃監督 記者会見
『蘇りの血』 ゲスト:豊田利晃監督

〜この映画は豊田版「火の鳥」。
  自分がどうやって蘇るのかはずっとテーマだった。〜

(2009・日本/83分)PG-12
監督・脚本 豊田利晃
音楽 TWIN TAIL(中村達也・勝井祐二・照井利幸×豊田利晃)
出演 中村達也 草刈麻有 渋川清彦 新井浩文 板尾創路
12月19日(土)〜シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸
1月23日(土)〜京都シネマ

公式サイト⇒ http://yomigaeri-movie.com/
【STORY】
 闇の大王の病を癒すため、ある砦に招かれた按摩のオグリ。満足いく施術を披露するも、忠誠を誓わない彼の態度に腹を立てた大王に抹殺されてしまう。しかし、現世への未練を捨てきれないオグリは、体の自由がきかない「餓鬼阿弥」となってあの世から舞い戻ってくる。一方、大王の元を逃げ出したテルテ姫は、その道中でオグリと再会。彼を現世に蘇らせるため“蘇生の湯”を目指す。

 『空中庭園』から4年。しばらく映画界を退いていた豊田利晃監督の待望の新作が12月19日(土)より公開される。歌舞伎の演目にもなっている寓話「小栗判官」をモチーフに、強欲な支配者に葬られた男の“再生と復讐”、人間がもつ“生命と愛”の神秘を描く。主演のオグリを、元BLANKY JET CITYのドラマー・中村達也、大王に捉えられる姫を草刈麻有が演じる。
 映画から遠ざかっていた間、中村達也・勝井祐二・照井利幸が組むバンドTWIN TAILに映像担当として参加し、ライブ活動を行っていた豊田監督は、映像と音楽が一体化したストーリー表現に興味を抱く。そんな時に訪れた紀州・熊野の“蘇生の地”。小栗判官が不治の病を治した壺湯を前にして、“蘇り”というテーマが浮上した。
 「初めはTWIN TAILのDVDを作ろうと思っていた。でも、どうせなら音楽ありきの映画にしようと。セリフも少なくして、音楽が前に出てきて語りだすスタイルを目指した。」確かに映画を見ていても音楽こそ主役のようで、ある意味TWIN TAILの長編PVと言っても過言ではない。序盤から飛ばす中村達也のドラムは、ホレボレするほどカッコいい。その力強い音は、主人公の波乱の幕開けを予感させる。「でも、音楽に関しては、こっちの注文は何も聞いてくれない(笑)。TWIN TAILって、ステージ全てが即興演奏。決まった曲というものがないから、ライブの音源を持って帰って、曲になっているなと思う部分をストックして、編集が終わった時点で音楽を当てはめていった。そして、上映しながら再演奏してもらうんだけど、必ず一緒のことはやってくれない(笑)」

 音楽に関しては新たな挑戦に終始したようだが、主演の中村達也についても、今まで誰も彼の本当の魅力を引き出せていないと感じていたという。「達也さんは、ルックスからしてチンピラの役が多いけど、本人は静かな人。でも、醸し出している雰囲気は凶暴。この映画ではその存在感をきっちり映そうと思った。達也さんが血の池で叫ぶシーンは、人間が蘇る所ってどんな画なんだろうという発想から出来た。あの叫びを撮るためにこの映画がある。」さらに、オーディションを経てテルテ姫に抜擢した草刈麻有については「美しく凛としているオーラが姫にピッタリ。こういう新人女優に出会えるのは僕の方がラッキーですね。現場では、マネージャーさんも初日で帰ったから、刺青男たちと一緒の宿でご飯食べていました。度胸がある(笑)」
 撮影は全編、下北半島で行われ、冒頭の場面は有名な観光地「仏ヶ浦」を舞台にしている。観光地で一体どうやって撮影したのか聞くと「一応、許可は取っているけど、あんなことするとは言ってない(笑)。観光地なので4時までお客さんがいる。4時からセットを組んで、夜中から撮影をスタートして、朝には撤収!まぼろしの撮影です。
ポスターカットにもなっている巨木の場面は、クレーンをもって山道を30分くらい歩く。建設会社のおじさんたちに頼んで、3往復くらいしてもらって撮った。おじさんたちが今までの仕事で一番きつかったって言っていました。本当に下北半島全面協力のもと、スタッフとキャストの情熱と覚悟が詰まっています。」

 「エコロジーじゃない、禍々しく荒々しい自然と、中村達也のドラムのような人間本来がもっているエネルギーを描きたかった。実際、ロケハン中に右足が動かなくなるハプニングにも見舞われた。下北半島の森の生命力にやられたんでしょうね。車椅子で仕事して、東京に戻ったら治りました。その自然や音のパワーを感じてもらえれば」とメッセージを伝える。そして最後に、これからも作品を撮り続ける意思を明かしてくれた。豊田監督ファンには朗報と言えよう。「休んでいた分の本数を取り戻し、地元大阪でもいつか映画を撮りたい」と気込む豊田監督の今後にも期待したい。
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