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『ハウスメイド』 イム・サンス監督インタビュー



『ハウスメイド』(仮題)  (The Housemaid)
第63回カンヌ国際映画祭コンペティション部門上映作品

(2010年/韓国/106分 )
監督:イム・サンス
出演: チョン・ドヨン、イ・ジョンジェ、ソウ、ユン・ヨジョン
今夏公開予定(配給:ギャガ)
(C)2010 MIROVISION Inc. All Rights Reserved

【解説】
富豪の家にメイドとして入った純真な女性が、主人に求められるままに不倫関係を持ってしまう。その後、豪邸で次々と起こる不可思議な事件……。彼女の「無垢」が凶器になる時、豪華邸宅は震撼の館に変わる。
韓国映画界の怪物といわれたキム・ギヨン監督の傑作サスペンス『下女』を、社会の暗部に鋭くメスを入れることで知られるイム・サンス監督がリメイク。現代韓国の問題を焙り出し、2010年韓国で一大旋風を巻き起こした禁断の話題作が遂に日本初登場。
大阪・中之島のABCホールで始まった「大阪アジアン映画祭」(13日まで)でオープニング上映された「ハウスメイド」のイム・サンス監督が記者会見し“韓国映画界の暴れん棒”の異名通り、型破りな発言を連発した。
「ハウスメイド」は1960年のキム・ギヨン監督による名作の50年ぶりのリメイク(前作は「下女」)。質問はその点に集中した。
Q.名作リメイクで心がけた点は?
50年前はミドルクラスが生じた時代。独裁政権が崩れ、権力が財閥に移った。一握りの財閥が支配している。今もそうだ。日本はどうですか? 韓国では今の質問は簡単です。

Q. 名作リメイクにはプレッシャーもあったのでは?
リメイクにもいろいろなやり方があってガス・ヴァン・サント監督の「サイコ」はショットまですべて同じだったが、マーチン・スコセッシの「ケープ・フィアー」はオリジナル(恐怖の岬)と全く違う。「下女」のキム・ギヨン監督は尊敬されているが(私は)ファンではない。前作の主人公はたった1度の性的関係でずっと怖がっている。むしろ純粋な人だ。50年前とは時代性を変えた。ミドルクラス発生の年、農村から大都市に大量に人が押し寄せて工場に務め、ハウスメイドとして働いた。
 Q.イム監督は“お騒がせ男と言われていたが”、今でも同じか?
(笑)お騒がせは韓国だけじゃない。アジアに広がりつつある。

 Q.デビュー作「ディナーの後で」や「浮気な家族」、「ハウスメイド」も含めて、監督は性的表現の最先端を走ってきている
すべての芸術家は最先端であるべきだ。その点の検証は皆さんがするべき。

Q. 性的な映像表現には権力や保守的勢力からの圧力もあったと思うが
もちろんそうだ。でも「ディナーの後で」の時は、女子中学生が私の腕を取って議論を議論をしたい、というような話も聞いた。あの当時はお母さんの許可をもらう必要があったがね。「ディナーの後で」の主役はOLだが今では中学生の問題になっている。でも、いろいろ騒がれると、それはすべてイム・サンスを利することになる、と分かったようだ。
Q.韓国映画の日本への流入はコリアンポルノが最初だったが、監督はそれらの映画の影響は受けたか?
影響はないけど、監督は女優をハダカにして売り物にするもの、という意見には同感だ。

Q. 権力との衝突は大統領暗殺を描いた「ユゴ 大統領有故」の時に、大統領の遺族から訴えられたこともあったが
抗議されてカットを余儀なくされた。ディレクターズ・カット版の公開は日本だけだった。
Q.「ハウスメイド」は自殺に始まり自殺に終わる暗い映画になったが
この映画はチョン・ドヨンのようないい女優がいなかったら作れなかったかもしれない。

Q. 彼女の魅力は?
私はこの映画で6本目になるが彼女のような俳優さんと仕事するのは初めて。彼女は理性的で知的な俳優じゃない。本能的に動く人。巫女のような俳優だった。

Q. ウニ(チョン・ドヨン)の雇い主(フン)も興味深いが
フンのような人はとても良い教育を受けている。芸術教育も受け、ピアノも弾ければボクシングも出来る。奨学金も受けて外国留学もしている。見るものでほしいものはすべて奪う。とてもリアルな人。教養にはあふれているが、人間味はかけらもない。
Q.最初の自殺シーンで周りの若者たちは無関心だったようだが
若者批判をする気はない。韓国では若い人も年寄りも自殺する。最初のシーンでは若い人は着飾って出てくるが、おばさんたちは汚く荒っぽい仕事をしている。若い人たちが使っているお金はどこのお金か、きちんと生きていかなければ、ということ。
Q.ウニは自殺しかなかったのかとも思うが
男1人と女4人の映画。ウニは自殺して自由な女になった。他は男のお金に屈伏した。製作者と観客は全員を撃ち殺すようなホントの復讐を望むし、その点(自殺の方法)は妥協もした。女は三者三様の生き方でウニのようには生きられない。みんな「時間がクスリ」と我慢する。だから私たちは不幸になる。冒頭の自殺は家政婦とは関係がない。彼女がなぜ自殺するかは分からない。彼女にどんな土壌があるのか、も。韓国はOECD(経済協力開発機構)で自殺率が一番高い。ミドルクラスの崩壊を現している。文化的に洗練されたヨーロッパでは侮辱をかわしていくが韓国では侮辱を受けとめる。ヨーロッパでは移民の問題があり、彼らは侮辱されたらテロリストになる。

Q. カンヌにも行ったが
ヨーロッパの映画祭でアジアが何を求めているか、求められているか分かる。海外では根性持ってないとダメだ。今村(昌平)監督みたいに自信満々でないと。

Q. 次回作は?
次は日本を舞台に撮りたい。「北の国から来たスパイ」は北からのスパイが日本にやって来て殺人を犯し、日本の警察が捜査してスパイであることが分かる。「北」とは北朝鮮のことだが、日本は特に関心が深いようだ。私はソウル出身だが私の父は北朝鮮出身。なぜ北がそのような行動をとるのか、興味を持ってもらえると思う。アメリカはブッシュの気違いじみた見解が支配していると思う。

(安永 五郎) ページトップへ

『恋人のディスクール』 デレク・ツァン監督&ジミー・ワン監督

『恋人のディスクール』  (Lover's Discourse)

(2010年/香港/118分)
監督:デレク・ツァン、ジミー・ワン
出演:カリーナ・ラム、イーソン・チャン、エディ・ポン、メイビス・ファン、ジャッキー・ヒョン、ケイ・ツェー、エリック・ツァン、キット・チャン、ウィリアム・チャン、カルロス・チャン
【解説】
香港の街中で、恋愛、不倫、片思いをする複数の男女の姿を同時並行的に綴ったラブストーリー。
イーソン・チャン、カリーナ・ラムのほか、『聴説』(OAFF2010観客賞)の主役エディ・ポンら、香港・台湾の旬のスターが多数出演。彼らが個性的な音色で奏でる、切なく、甘く、苦い、愛の物語が、やがて静かに香港の街頭に交錯していく。本年1月に香港で公開が始まったばかりの最新話題作!

(デレク・ツァン監督:D、ジミー・ワン監督:J と表記します)

Q.パン監督との出会いを含めて、二人で映画を撮るようになった経緯は?
D:『AV』という、AV女優を日本から呼んで撮った映画があって、そのときにパン監督に俳優として使ってもらいました。実は自分は映画を撮りたいということを知って、助手をやらないかということでやらせてもらいました。そのときに元々知り合いだったジミーに声をかけて、それからずっとパン監督の下についています。2005年からです。
2003年にピーター・チャンの『GOLDEN CHICKEN』という映画があって、副監督の仕事をやりました。そこからです。

Q.パン監督と一緒に仕事をしてどんなことを吸収しましたか?
D.パン監督は日常生活のすごく些細なことを題材に取り上げて、それをおもしろく作る才能に長けているので、それを学びました。
J.いい意味での欲張りさを学んでいます。

Q.初監督作品で「愛」というテーマを選んだのはなぜですか?
D.自分たちがラブストーリーを好きだというのが根底にあります。一番最初に撮るのだから、妙に芸術的すぎず、ある程度商業的なことを望める内容のものを撮りたい。ラブストーリーの中で人情とか、人間性とかそういうことを描いていきたいのです。

Q.登場人物を少しずつクロスさせながら描いたり、雰囲気のある映像はウォン・カーウァイ監督を彷彿とさせますが、お二人が好きな監督は誰ですか?
D.一番好きなんです、ウォン・カーウァイ監督は。僕たちの年代は映画が好きと言えば絶対ウォン・カーウァイ監督の影響を受けています。そしてカーウァイ監督はヨーロッパ映画の影響を受けているので、僕たちもヨーロッパ映画が好きなんです。

Q.最近の映画はせりふが多くて早い展開のもんが多いですが、間をたっぷりととったりするのはヨーロッパ映画の影響の現れなのでしょうか。
D.ヨーロッパ映画の影響は多かれ少なかれ受けています。ヨーロッパ映画の手法は意識してないんだけど、自分たちの中で好きで蓄積しているものが出てきているのでしょう。

Q.従来のエンターテイメント性に溢れて、わかりやすい香港映画の手法を取り入れていく可能性はありますか?
D.今後はそういうのを取り入れていくと思います。というのはいろんな種類の映画の手法を取り入れていきたい。早さを追い求めたり、なにも考えなくても分かるエンターテイメント性を追求するのではなくて、自分たちが選んだ題材にあったやり方で取り入れていこうと思います。

元々アクションものが大嫌いだったんです。アクションものは黒と白がはっきりしていておもしろさがない。そういうのではなくて、今回の『ドリーム・ホーム』でパン監督と一緒にやって、めちゃくちゃアクション映画が撮りたくなりました。というのも、実は『バットマン』などを見たときに、黒と白がはっきりなくてもいいんだと。『バッドマン』みたいなビッグバジェットの映画で興行的にも成功しているようなものでも、いろんな要素を突っ込める空間がまだ残っている。実はアクション映画には空間が残っている。

Q.今のメジャー、インディペンデントの香港映画界はどのように推移していて、お二人はどこを目指そうとしていますか?
J.どういう方向に向かいたいかは全く決めていなくて、とにかく観客が好きだと思える作品を作りたい。興行的に成功するということではなく、内容的にも成功できるような、観客に喜んでもらえるものを作りたい。題材を選んだときに規模の小さいもので公開した方がいいという場合は小さめに作りますし、いろんなものをやりたいので、特に決めていません。

Q.本作では香港や中華圏の人気俳優が出演していますが、映画の規模的にはどれぐらいのものだったのでしょう。
D.イーソンやカリーナはもともと友達なので、友情価格でやってもらいました。自分たちが監督をやりたいと知っていて、やってみなよということで、みんなの義理で助けられています。
J.香港映画界のみんなが香港映画を盛り上げたいという気持ちがあるのと、新しい人材を発掘していこうという気持ちがあるので、みんなで色んな方向に色んな可能性を広げていこうという空気があるんです。

Q.1月に公開されているそうですが、観客の反応はいかがですか?
D.商業的にすごく売れたわけではないですけれど、一般の観客にすごく受けがよかったです。

Q.二人で監督や脚本をどういう分担でされてますか?また二人でやることのメリット、デメリットがあれば教えてください。
D.全く分けてなくて、大きなことから小さなことまで必ず二人で相談してやってます。服を何色にするかとか、すごく小さなことでぶつかるんです。
J.すごく些細なこと、観客が絶対気づかないような些細なことで時間を費やすのがデメリットで(笑)。D.いいところは、監督って作業はすごく孤独な作業でなにもかも自分一人で解決していかなければならないのだけど、実際誰かそばにいて手伝ったり、助言してもらいたいときに、パートナーがいることで色々助けてもらえるのがいいところです。

Q.脚本も二人でかかれていますが、エピソードごとにとか分担はされたんですか?
D.全く分けなくて、パソコンをテレビにつないで、文章を入れてもらって「この字が違う」とか、二人で並んで座って「ここはこうしようよ」というやり方でやってます。
そうやって本当にしょうもないことをあーでもない、こうでもないとやっているのは他人から見ればすごく時間の無駄なのかもしれないけれど、僕たち二人でやると自分一人で思いつかなかったアイデアがすごく細かいところまで深めていけたりするのがいいところです。

Q.人のバックグラウンドが見えるしっかりした脚本だと感じましたが。
A.元々ヨーロッパ映画が好きというのがあるので、ヨーロッパ映画というのは、それぞれの登場人物の背景を細かく設定してあって、この人は絶対悪、絶対善というのがなくて、実は曖昧な部分が残してあるというのを自分たちの手法に取り入れています。

Q.本作で一番お気に入りのシーンはどこですか?
D.一番最初のそごうの前で二人が「どこ?どこ?」と言っているシーンです。実際撮影がすごく大変で、一般の人がいっぱいいるので、撮りあがってきたところの効果がすごくよかったので、かなり満足しています。
コーズウェイベイは香港の恋人たちのデートスポットであったり、待ち合わせ場所であったりするというところがすごくよくできたと思います。
J.コーズウェイベーというのは香港という大きな都市の恋人たちの日常生活を描くのに一番適した場所なんです。
D.あそこは東京でいえば渋谷の十字路より人が多くて、香港で一番人が密集している場所なんです。そこで撮りたかったんです。

香港で人気の二人が撮影していると、歩いている人が止まったり、歩いている人がみんなカメラを見ちゃうので「カメラをみないで!」とか「止まらないで”」とか「邪魔しないで!」というのがすごく大変だったので、それ以降コーズウェイベイ恐怖症になっています(笑)。

(江口 由美) ページトップへ

 
 
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