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 『必死剣鳥刺し』
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★必死剣鳥刺し

(C) 2010「必死剣鳥刺し」製作委員会
『必死剣鳥刺し』
〜豊川悦司と池脇千鶴が泣かせてくれる時代劇〜

(2010年 日本 1時間54分)
監督:平山秀幸
出演:豊川悦司、池脇千鶴、吉川晃司、戸田菜穂、村上淳、関めぐみ

2010年7月10日(土)〜梅田ブルク7、なんばパークスシネマ 他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://www.torisashi.com
 こんなに静かで麗しい時代劇を見たのは、何年ぶりだろうか。確かに、今の若い人たちにはDVDでしか味わえないような、1950年代から1960年代の日本映画の仇討ち・リベンジ時代劇のテイストがあるようだ。でも、本作は少し違う。21世紀的に進化を見せている。東北の雄大な自然を背景に、美しい所作をはじめ丁寧な人物描写など細部にまでこだわりを見せた平山秀幸監督の手腕が光っている。
 日本の時代劇は原作ものが主流にある。本作の藤沢周平原作時代ものは、21世紀に『たそがれ清兵衛』(2002年製作・公開)が出るまで、それほど目立たなかった。なぜかといえば、それまでの時代劇はアクションが主流だった。時代劇にふさわしい殺陣(たて=剣戟における動き)アクションを、どう娯楽活劇として見せていくのか、だ。しかし、藤沢映画のメインは人情にある。しかも、剣戟アクションもバランス良く入っている。人間ドラマ時代劇なのだ。
 トヨエツこと豊川悦司が演じる中流の武士は、最愛の妻を亡くしたことで、死に場所を求めていた。「政治とカネ」に口を出す愛人の言いなりになる藩主。農民たちや、本家から独立してる別家がそれに抵抗するが、全て抑えられてしまう。映画の冒頭部で藩士のトヨエツは、その愛人を刺殺してしまう。極刑は避けられない身だったが、下された判決は1年の自宅謹慎の刑のみであった。そんなバカなと思うトヨエツだけど、そこには、藩主の懐刀・岸部一徳の恐るべき企みがあったのだ。
 そんな展開のなかで、トヨエツを慕う池脇千鶴の演技が泣かせてくれる。彼女的には、ビョーキでもチャキチャキ娘だった『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)とか、友達にはしたくないようなタイプの不倫を狙う女役『スイートリトルライズ』(2010年)とか、どちらかといえば、元気系の役が多かったのだが、本作は180度の逆転演技だ。どこまでも耐えて耐えて忍んで忍んでゆく役柄。トヨエツをいつまでも待つラストシーンは、静かにココロにきた。
 そして、コレもまた静かなアクション・シーン。決めのシーンではドカーンと流れるけど、音楽をいっさいかけずに壮絶極まりない殺陣アクションが繰り広げられる。このクライマックスもまた、ラストシーンとの対比効果と対応効果を、同時に呼んで感動的だ。
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