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 ★華麗なるアリバイ
『華麗なるアリバイ』
〜嫉妬とアリバイの盲点を突く
           “アガサ”ミステリーを映画化〜


 
(2008年 フランス 1時間33分)
原作 アガサ・クリスティー「ホロー荘の殺人」
監督 パスカル・ボニゼール
出演 ミュウ=ミュウ、 ランベール・ウィルソン、
    ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ ピエール・アルディティ、
    アンヌ・コンシニ、 マチュー・ドゥミ カテリーナ・ムリーノ、
    モーリス・ベニシュー、セリーヌ・サレット

2010年7月17日(土)〜Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
7/24 〜梅田ガーデンシネマ、7/31〜京都シネマ、
8月〜シネ・リーブル神戸  
公式サイト⇒ http://aribai-movie.com/pc/
 ギネスブックで「世界最高のベストセラー作家」に認定されているミステリーの女王、アガサ・クリスティーの名作「ホロー荘の殺人」を映画化。

  フランスの小さな村・ヴェトゥイユ。上院議員のアンリと彼の妻・エリアーヌが住む邸宅に、彼らの一族や仲間たちが招かれる。しかし、集まったのは恋愛関係のもつれが予想されるいわくつきの男女7人。何とか緊迫した食事会を無事に終え、誰もがそのまま平穏に時が過ぎてゆくことを切望していた。だが、翌日の昼下がり。一発の銃声が静寂を切り裂いた。すると、プールには男の死体が倒れており…。

 生前アガサは同小説に対して「ポワロの登場が失敗だった。彼を抜きにするともっとよくなる」と話していたらしく、本作はその意思を考慮して作られている。(ポワロとはアガサ作品に登場する名探偵のこと)つまりポワロは登場しないわけだが、物語の主軸が男女の愛憎劇で、トリックも実にフランス映画らしい上品な仕上がりになっているため、探偵不在でもなんら違和感なく新作ラブミステリーとして楽しめる。

  登場人物は総勢9名。愛憎劇というだけあり、男女間のつながりがなかなか複雑だ。簡単に紹介すると、議員夫妻の邸宅にはこんなメンバーが集まったことになる。
作家のフィリップ〈エステルが好き〉、靴屋の店員マルト〈フィリップが好き〉、学生のクロエ、精神病医学者のピエールと彼の妻・クレール。彫刻家のエステル〈ピエールの愛人〉、女優のリア〈ピエールの元恋人〉、エリアーヌ〈ピエールと元不倫関係〉。

  さすが恋愛大国フランス。これで何も起きないわけがない。しかし、なんとも節操のない男ピエール。邸宅の敷地内でも妻をほったらかして、過去の女の誘惑に負けるわ、愛した女4人が一堂に会しても平然としているわ、並々ならぬ恋愛マスターぶりを発揮。だが、そこで女同士も声を荒立てて男を取り合わないのがおフランス。嫉妬心を募らせていようとも平静を装い見えない火花で交戦する。例えば、本妻クレールと現愛人エステルの会話。クレールが射撃を楽しんだあと手についた火薬の匂いが消えないと気にしているのだが、それを嗅いだエステルが「大丈夫、せっけんの匂いよ」と切り返す。一見何の変哲もないシーンのように感じるが、合わすようで合わさない目線の動きや、微妙なほほ笑みから女の嫉妬とプライドが入り混じった異様な空気が流れ出していることに気づき背筋がヒヤッとする。

 誰もが本音を隠しているように見え、2人目の犠牲者が出た頃から謎解きのテンポもスリルも増していく。そして、事件の終焉は“華麗なるアリバイ”が明かされることで終わりを告げるが、誰もが捜査を担当したグランジェ刑事のように騙されるだろう。とってもスマートで少し切ない恋のかけひき事件に酔いしれてほしい。
(中西 奈津子)ページトップへ
   
             
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