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★闇の列車、光の旅 (伊藤 久美子)

(C)2008 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
『闇の列車,光の旅』
〜過酷な現実を前に少女を守る、
            少年の哀しみが心を打つ〜

(2009年 アメリカ,メキシコ 1時間36分)
監督・脚本:キャリー・ジョージ・フクナガ
出演:パウリーナ・ガイタン,エドガー・フロレス,クリスティアン・フェレール,テノック・ウエルタ・メヒア,ディアナ・ガルシア

2010年6月19日(土)〜TOHOシネマズ シャンテ、
8月7日〜シネ・リーブル梅田、
10月9日〜京都シネマ他全国順次ロードショー 

公式サイト⇒ http://yami-hikari.com/

 タトゥーを入れギャングとなった少年が、真っ当な人生を取り戻す術はないのだろうか。
少女サイラは、アメリカにいる家族から引き離され強制送還されてきた父とともに、ホンジュラスから、アメリカを目指す旅に出る。途中、メキシコでギャングの少年カスペルに出会い、命を助けられるが、カスペルは、そのことが元で裏切者として組織から追われることになってしまう…。

 この映画を輝かせているのは、二人を結ぶ固い絆だ。サイラは、自分を助けてくれたカスペルを信じ、一緒に国境を越えようと想いを寄せる。死を覚悟し、追っ手を待つだけで絶望のどん底にいたカスペルも、いつしか、サイラを無事アメリカ国境まで送り届けたいと必死になっていく。サイラの純粋さとカスペルの哀しみとが、切なく胸に迫る。
 人の命をなんとも思わず、仲間でも平気で殺してしまうギャングの少年たちの姿が恐ろしい。組織を追放されては生きていけないという恐怖が、彼らをリーダーのいうままに殺人へと駆り立て、殺しを勲章のようにたたえあうようになる。年端も行かぬ少年までが、ごく自然に強い男にあこがれてギャングに入るという“負の連鎖”の実態をも映画は明らかにしていく。
  屋根に山ほどの「不法移民」を乗せて走る列車の光景に驚かされる。監督自らも乗り込んだという実体験と入念な取材を基に、移民たちの姿がリアルに描かれる。朝、顔を洗ったり、平穏な日常もある。沿線の人たちから食べ物をもらうこともあれば、石を投げつけられることもある。国境警備につかまれば強制送還されるなど数々の危険も厭わず、苦難を承知でなお「豊かな北」を目指す不法移民たちの姿に、「南」の国々の貧困がもたらす過酷な現実の有様を知らされる。夜、サイラたちが人目につかぬようこっそり乗り込んだ汽車が、闇の中、力強く動き出す映像が心に残った。

  旅立つ前に、父からアメリカの家族の電話番号を身体で覚えこまされたサイラ。その父の愛がサイラを未来へとつなぐ。ラスト、カスペルの励ましの言葉を胸に、サイラが最後にみせる微笑みに、かすかな希望を見出さずにはいられない。
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★闇の列車、光の旅 (河田 充規)

(C)2008 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
『闇の列車,光の旅』
〜監督の眼差し,その厳しさと穏やかさで〜

(2009年 アメリカ,メキシコ 1時間36分)
監督・脚本:キャリー・ジョージ・フクナガ
出演:パウリーナ・ガイタン,エドガー・フロレス,クリスティアン・フェレール,テノック・ウエルタ・メヒア,ディアナ・ガルシア

2010年6月19日(土)〜TOHOシネマズ シャンテ、夏〜シネ・リーブル梅田、秋〜京都シネマ 他全国順次ロードショー 
公式サイト⇒ http://yami-hikari.com/

 ホンジュラスに住んでいたサイラは,グアテマラからメキシコを経てアメリカを目指す。一方,メキシコではカスペルがギャングの一員として生きていた。メキシコで2人の人生が交差し,共にアメリカに向かうことになる。カスペルらが移民たちから金品を強奪したことがきっかけだった。その道中では,メキシコの子供らが移民を面罵して石を投げ付ける。ギャング同士の対立も熾烈で,敵対する組織のメンバーの生命は犬のエサの価値しかない。
 その中から決して単純ではないメキシコや中央アメリカの社会状況が見えてくる。中でもカスペルがギャングの仲間に引き入れたスマイリーの存在が厳しく脳裡に焼き付く。仲間になる儀式として13秒間焼きを入れられる。彼はぐったりしながら嬉しそうな笑顔を浮かべていた。同年代の少年たちにけん銃を見せびらかすシーンがある。フレームの外に同じような少年が何人もいて,彼らが皆ギャング予備軍であるという,不気味さが広がる。
 カスペルは,サイラと出会ったことで目標ができる。彼女が無事にリオ・グランデ川を渡ってアメリカに行き着くことだ。自らは,組織から追われ,死以外には逃れる術がないことを知っていた。「生きるあてがない」という彼の言葉が痛切に響く。生きる手段としてギャングになったはずだが,仲間によって恋人を奪われ,新たな希望の芽も摘み取られる。彼の右目の下には涙の形をしたタトゥーがある。人を殺めたことを示しているそうだ。
 カスペルがギャングに入った背景やサイラがアメリカに行く決意を固めた事情は,明確には示されていない。冒頭でそのエピソードに触れていたら,もっと吸引力が増しただろう。サイラには父や叔父の悲壮感や切羽詰まった状況があまり感じられない。だが,それは,占い師の予言を信じて自らの運命に身を委ねた者の強さなのかも知れない。ギャングに身を置く若者にも共通するところがある。自己を殺してしか生きられない世界が哀しい。
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