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★酔いがさめたら、うちに帰ろう。
『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』
〜「おかえり」のひとことが心に響く家族愛の物語〜

(2010年 日本 2時間58分)
監督・脚本・編集 東陽一
出演 浅野忠信 永作博美 藤岡洋介 森くれあ 香山美子 市川実日子 利重剛 光石研

12/4(土)〜 シネ・リーブル梅田 シネマート心斎橋 シネ・リーブル神戸
12/18(土)〜 京都シネマ

公式サイト⇒ http://www.yoisame.jp/
 人気漫画家・西原理恵子の元夫で戦場カメラマンの鴨志田穣が、重度のアルコール依存症で闘病した自身の入院生活をユーモラスに綴った同名小説を『風音』の東陽一監督が映画化。家族の献身的なサポートを支えに少しずつ病を克服していく塚原安行を浅野忠信、彼を包み込むように見守る元妻・園田由紀を永作博美が演じる。
 映画の冒頭からすでに酔いどれの塚原は「来週はシラフで家族に会う」と言って倒れこむ。だが、断酒宣言はすぐに破られ、すでに体は酒でボロボロ。吐血は10回を超えて、医師には「あの世行きにリーチ」とまで言われる始末。もう入院するしか生きのびる道はない。母や由紀に促された塚原は、二重扉で厳重に閉鎖されたアルコール病棟に身を置くことになる。
 なぜ死の直前まで酒を飲むのか。そう真面目に捉えるとシリアスになる話を「男ってバカだろー」というタッチで軽くコミカルに描いた作風が良い。問題点を深刻ぶらずに指摘して、家族との幸福な時間は陽だまりのように切り取る。そうすることで観客が抱く余計な“同情心”をうまく排除し、目の前にある本当に大切なものだけを浮き彫りにしていく。
 塚原と由紀の間には幼い子供が2人。だが、塚原のアルコール依存が原因で離婚してからは、外で時々会うのみ。それでも子供たちは塚原になついている。由紀も言葉はキツいが心の底から彼の身を案じている。酒で暴れる浅野の怪演に手ごたえを感じる一方、何事も寛容に受け止める由紀のおおらかな母性をあっさりと表現した永作の存在感が光っていた。
 飲食持ち込み禁止の病院で手作り弁当を広げ、4人でピクニックのように昼食をとるシーンは、由紀の見返りを求めない普遍的な愛が家族の絆を守っているようにも見えた。夫は彼女が暖める“うち”を信頼している。そして、帰る場所がある、家族と一緒に生きられるということは何よりも幸せなことだと、そのささいな瞬間に気付くのだ。

  ちなみに、アルコール依存症とは、飲酒のコントロールを喪失する病気で薬物依存のひとつとされる。しかし、本人の意思が弱く、だらしないから酒に溺れるんだと誤解され、病気とは別物として考えられる場合がほとんどだという。やめたいけどやめられない悪循環は病状のひとつなのだ。劇中でも、塚原が禁酒に励んでいる時、寿司屋で出された“奈良漬”を酒じゃないからと食したのをきっかけに、ずるずると酒に手がのび泥酔してしまうコントのようなくだりがあるが、初めからこれも病状のひとつとして見ると作品の印象が随分違ってくるかもしれない。風変わりな闘病記としても、家族の感動物語としても楽しめる奥深い作品だ。
(中西 奈津子)ページトップへ
   
             
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