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★預言者
預言者』 (Un Prophete)
〜どんな状況でも人間社会の本質は同じ!?〜

(2009年 フランス 2時間30分)
監督:ジャック・オディアール
出演:タハール・ラヒム,ニエル・アレストリュプ、アデル・ベンチェリフ

2012年1月21日〜ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
3月24日(土)〜第七藝術劇場、順次〜京都みなみ会館、神戸アートビレッジセンター にて公開

公式サイト⇒http://www.sumomo.co.jp/movie_201201.html

 マリクは,6年の刑で刑務所に入った19歳のアラブ系青年で,身寄りがなく孤独に生きてきた。刑務所内を牛耳るコルシカ系マフィアのボス,セザールから仲間を売ったアラブ人レイェブを殺すよう命じられる。看守もセザールの勢力下にあり,命令に従わざるを得ないことを思い知らされる。そして,想定と異なる展開になったものの,何とか目的を遂げたマリクは,仲間として受け入れられる。マリクのサクセスストーリーの始まりだった。
 セザールは,マリクに外出許可を得させて外で仕事をさせる。マリクは,仕事だけでなく,自ら“商売”を始める段取りをする。セザールの勢力が衰えマリクが成長する様子が丁寧に描かれていく。“マリク”で生きられるか?というセザールの言葉は,2人の立場が逆転する時期が迫っていることを感じさせて含蓄がある。マリクが空港での身体検査で舌を出すという,思わず口もとが緩むシーンもある。だが,その後の緊迫感は並ではない。
 マリクは,セザールの指示で会ったブラヒムから,ムショにダチがいた,レイェブだ,と言われる。マリクの命が風前の灯となるスリリングなシーンだ。もっとも,成功を手にするには本人の努力や才覚だけでなく,窮地を脱する霊的な力が必要だという,運命論的な描写が少し気になった。だが,その後マリクが再び殺しを決行するシーンでは,想定外の展開で焦燥感をあおられる上,束縛を押し返して立ち上がるマリクの状況が集約される。
 その後の刑務所内のシーンが切ない。セザールは,こっちへ来いという仕草を無視されて自分からマリクに近付こうとするが,彼の手下に阻まれる。すごすご引き返すセザールの後ろ姿がもの悲しい。一方,出所時のマリクの大きく成長した姿は輝いている。それまで手堅く重厚な語り口が続いたため,解放感が殊更身に染みる。マリクがスクリーンの手前に向かって歩いてくるため,その地位がしばらく安泰であることが強く印象づけられる。

(河田 充規) ページトップへ

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