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『聯合艦隊司令長官 山本五十六
―太平洋戦争70年目の真実―』
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聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―

(C)2011「山本五十六」製作委員会
『聯合艦隊司令長官 山本五十六
        ―太平洋戦争70年目の真実―』

〜山本五十六に見る、日本帝国の敗因〜

(2011年 日本 2時間20分)
監督: 成島 出
出演:役所広司、玉木宏、柄本明、柳葉敏郎、阿部寛、吉田栄作、
    椎名桔平、益岡徹、袴田吉彦、五十嵐隼士、坂東三津五郎、
    原田美枝子、瀬戸朝香、田中麗奈、伊武雅刀、宮本信子、
    香川照之

2011年12月23日(金・祝)ロードショー
公式サイト⇒  http://www.isoroku.jp/
 不思議な“戦争映画”を見た。帝国海軍・山本五十六長官といえば太平洋戦争中、神とまで崇められた人。 威勢の良い戦意高揚映画か、と思ったら中身は違った。五十六長官は軍人でありながら終始、世論に逆らって日独伊三国同盟に異を唱え、日米開戦に反対し続けた。70年代なら“反戦自衛官”と呼ばれたかも知れない。一度もぶれることがなかった山本五十六長官(役所広司)に感銘を受けた。 アメリカ相手に戦争を仕掛けるなど狂気の沙汰。今なら子供でも分かる無鉄砲でアホなことをやらかした軍人などどうかしている。みんながおかしくなっていた時代、日米開戦に強硬に反対する硬骨の人がいたなんて。映画やテレビで聞き知った程度の乏しい知識はあったが、驚きだった。そんな彼が、意思に反して聯合艦隊司令長官に任命され、日米開戦の火ぶたを切る真珠湾奇襲攻撃を実行するなんて、歴史の皮肉としかいいようがない。
 真珠湾攻撃は「初戦で空母を叩いて壊滅的打撃を与える」作戦、五十六長官には講和に持ち込む唯一の可能性だった。強硬に「三国同盟」締結を主張する陸軍が、海軍に銃口を向けた開巻シーンから“戦争反対”の意思は明らかだった。理由は明確、「日本がドイツと結べばアメリカと戦争になる」から。「軍人は国を守るのが仕事」「負ける戦争は避ける」という五十六長官の論理は明快だ。
 五十六と彼を理解する海軍大臣・米内光政(柄本明)、軍務局長・井上成美(柳葉敏郎)も分かっていた。海軍の反対が効いて、三国同盟は棚上げ。五十六は聯合艦隊司令長官に就く。だが、先にナチスドイツがヨーロッパで快進撃を開始し、その動きに幻惑された日本も三国同盟締結。対米戦不可避とみた五十六長官が秘かに立案したのが真珠湾奇襲。極力戦争回避を願い続けた果てに下した苦渋の決断。長官自ら「之が天なり命なりとはなさけなき次第」と天を仰いでいる。
 このように、長官就任以後、五十六長官の思惑はことごとく裏目に出た。@就任直後の三国同盟締結A真珠湾攻撃の指揮官・南雲中将が上層部の意を受け「聯合艦隊を無傷帰還させるため」第2次攻撃を中止、結果、当初の狙いである空母を逃した。B五十六長官がくれぐれも、と念を押した対米「宣戦布告」が攻撃開始より30分遅れ、結果的に「不意討ち」となって米国のヤンキー魂に火を着けた。
C本人の思惑とは裏腹に、帰国したら“神様”に祭り上げられていて「講和」などには誰も耳を貸なかった。開戦当初優勢だった日本は、米国が態勢を立て直すと次第に守勢に回る。D挽回を試み、残った総力を結集したミッドウェー海戦も五十六長官の目算とはかけ離れた惨敗。長官の「もう一度ハワイを」という作戦は、またしても南雲中将の意図的にも見える大失敗(作戦ミス)から、壊滅的打撃を受ける。

 南雲中将は遅れた“大艦巨砲主義”者で「これからの海戦は航空母艦による飛行戦」とみる五十六長官とは相容れなかった。そんな南雲中将が聯合艦隊で最も大事な「第一艦隊司令長官」になったのは海軍の“順送り人事”のため。そこに五十六長官の不幸があった。そんな南雲中将を「責めるでない」と部下に言えるのだから、大きな人物だったに違いない。
 ミッドウェーの惨敗以後、日本は敗戦への道を転げ落ちる。とある会議で「敵がどう出て来ようが、恐るるに足らず」と言う将軍に、五十六長官は「その根拠は何か」と厳しく問いただす。軍人の特徴とも言うべき精神主義=強がりなど無意味とするきわめて合理的な精神の持ち主でもあった。
 歴史に「たら、れば」はありえないが、「三国同盟」の会議から終始理路整然と正論を吐く五十六長官の考え、やり方がひとつでも通っていたら…かくも無残な敗戦にはならなかったのではないか。太平洋戦争はこうして負けた、という敗因研究映画のようでもある。山本五十六の伝記映画(長官の中学の後輩・半藤一利氏監修)だから、美化されているかも知れない。だが、近年の戦争回顧映画が軍人や戦争を美化することに重点を置いて鼻白むものが多かったのと比べると、危機的状況の中での人間ドラマとして見応えがあった。成島出監督は昨年の「孤高のメス」、今年の「八日目の蝉」に続き好調持続だ。
 今年、日本は未曾有の大震災に見舞われ、長引く不況、雇用不安、格差拡大に相次ぐ首相交代劇、と悪夢の昭和初期に酷似している。そんな時代に、五十六長官は求められる理想のリーダー像にふさわしい。だが、時代の不幸を一手に引き受けるような“舵取り役”など、ご本人は二度とご免だろう。
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(C)2011「山本五十六」製作委員会
   
             
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