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★やがて来たる者へ (注)ラストシーンに触れている部分があります!

(C) ARANCIAFILM2009
『やがて来たる者へ』
(L’UOMO CHE VERRA’/THE MAN WHO WILL COME)
〜暗闇に仄めく希望の灯を絶やすことなく〜

(2009年 イタリア 1時間57分)
監督・脚本:ジョルジョ・ディリッティ
出演:アルバ・ロルヴァケル,マヤ・サンサ

2011年10月22日より岩波ホール、テアトル梅田、
近日〜シネ・リーブル神戸、京都シネマ 他全国順次公開
公式サイト⇒  http://www.alcine-terran.com/home/

 8歳の少女の目を通して,第二次世界大戦中のイタリア北部ボローニャ近郊の山村の生活が描かれる。物語は1943年12月から始まって春,夏,そして秋へと向かうが,次の冬は来なかった。少女の名はマルティーナ。生後数日の弟が腕の中で死んでからしゃべらなくなった。だが,母レナは妊娠中で,また弟が生まれるのを,ちょっと不安そうだが,心待ちにしているようだ。彼女が学校で書いた作文が村の置かれた状況を端的に表現している。
 ドイツ人が時々やってくる。ドイツ人を追い払うために反乱軍がいる。ファシストもやって来て反乱軍を殺せと言う。皆,人を殺したいのだ。…これが少女の見た世界だった。映像も,徐々に不穏な雰囲気を増幅させていく。遠くから響いていた爆撃の音が少しずつ村に近付いてくる。遠くに見えていた兵士の影が目の前に迫ってくる。村の人々は日常生活を続けている。人間の力では抗えない大きな力がひたひたと迫ってくる感触が不気味だ。
 だが,ドイツ兵を一方的に糾弾されるべき対象としては描いていない。ドイツ兵が村人と一緒にパンを食べるシーンは,不穏な中にも安らぎを感じさせる。ある日,パルチザンがドイツ兵に自分の墓穴を掘らせ,背後から後頭部を銃撃して処刑する。その様子を見てしまったマルティーナが走って家に戻る。その姿を後ろから追うカメラの動きは,彼女の受けた衝撃だけでなく,得体の知れない恐怖が急激に広がっていく様子を映し出している。
 1944年9月29日からドイツ軍による住民の虐殺が始まった。パルチザン掃討を目的としていたが,犠牲者771名のうちパルチザンと見られるのは約50人だったという。これがマルチボットの虐殺と呼ばれる事件だ。日常の流れが断ち切られるだけでなく,目の前にあった時間が理不尽にも消し去られてしまう。そんな状況の中,マルティーナが生まれて間もない弟を連れて逃げ回る。赤ん坊を抱いて腰掛けるマルティーナの後ろ姿が唯一の救いだ。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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