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★東京公園

(C) 2011「東京公園」製作委員会
『東京公園』
〜見つめ,見つめられることで,生まれるもの〜

(2011年 日本 1時間59分)
監督・脚本:青山真治
出演:三浦春馬,榮倉奈々,小西真奈美,井川遥,染谷将太,
    高橋洋,宇梶剛士

2011年6月18日より新宿バルト9、梅田ブルク7、T・ジョイ京都、
TOHOシネマズ西宮OS他全国ロードショー
公式サイト⇒  http://tokyo-park.jp/




 



 



 光司は,大学4年のカメラマン志望で,漠然と公園で家族写真を撮っていた。小2の時に亡くなった母親の遺志を継ぐというような,明確な意思があるわけではない。幼い娘を連れて公園を散歩する百合香を撮り続けたのは,初島に頼まれたからだ。始めは彼が百合香の夫だとは思いもしなかったようだ。百合香が公園を散歩する理由に気付かず,自分が百合香に惹かれる理由も分からない。義理の姉の美咲や幼馴染みの富永の気持ちにも無頓着だ。

 光司は,身近な人の思いはもちろん,自分の気持ちさえ,真っ直ぐに見つめた経験がなかったのだろう。富永は,光司に美咲を真っ直ぐ見つめたことがあるかと問い,真っ直ぐに見つめれば美咲の心情が分かると言う。その富永も,亡きヒロへの思いに捕らわれる余り,光司への眼差しが揺らぎ,頼れるのはマジで光司だけだということに気付かない。大切な人が目の前から消えてしまった経験とどう向き合えばよいのか。これも難しい問題だ。

 ヒロは富永の元カレでこの世に存在しないという原作と異なる設定により,死=喪失との関係で生=存在の意味が明確になった。生きていくためには,美咲が言う“そこにある幸せの匂いに気付く本能”が必要だ。富永が言うように,幸せはチャンスを逃すと容易に掴めない。百合香のメッセージは,夫婦の出発点を示すと共に,渦巻きのように一本の線で繋がっていく家族を感じさせる。3人の女性の思いを浴び,光司は大きく成長していく。

 相手を真っ直ぐ見つめれば,それまで気付かなかったものが見えてくる。光司は,富永に一度美咲を真っ直ぐ見てみるように言われ,漸く美咲の部屋を訪ねていく。写真を撮る光司と撮られる美咲の間には,濃密な空気が醸成されていく。やがてカメラを通さずに見つめ合った2人に変化が訪れる。美咲が姉で,光司が弟で良かったと互いに実感する。誰にでも以前の自分とは違う新しい自分を感じるときがあるはずだ。その瞬間が映されている。
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