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★トイレット

(C) 2010“トイレット”フィルムパートナーズ
『トイレット』
〜荻上直子×もたいまさこの最強タッグで描く家族の絆〜

(2010年 日本・カナダ 1時間49分)
監督・脚本 荻上直子
出演 アレックス・ハウス タチアナ・マズラニー デイヴィッド・レンドル サチ・パーカー もたいまさこ

2010年8月28日より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、
関西では、梅田ガーデンシネマ、なんばパークスシネマ、シネリーブル神戸、TOHOシネマズ西宮OS、京都シネマ 他全国ロードショー

公式サイト⇒http://www.cinemacafe.net/official/toilet-movie/

 『かもめ食堂』『めがね』に続く荻上直子の最新作。カナダのトロントを舞台に、バラバラだった3兄弟が日本人祖母との交流を通して成長し、家族の絆を深めていく姿をユーモラスに描く。癒し系ムービーの流行を作り出した荻上ならではの、ちょい脱力した空気感が心地いい。セットや衣装、セリフの1つ1つはとても凝っているのに、それを感じさせないほど全体の動きが自然で、映像の振り幅にもゆとりがある。
 ひきこもりの長男・モーリー、実験室勤務の次男・レイ、大学生の末っ子・リサ。彼ら3兄弟は、母親が亡くなる直前にカナダへ呼び寄せた“ばーちゃんと”一緒に暮らしている。初対面からまだ日が浅いからか、言葉が通じないからか、祖母と孫の間に会話はない。兄弟で一番神経質なレイは、祖母は本当に僕たちと血がつながっているのかと疑問を持ち始める。そんなある日レイは、ばーちゃんがトイレから出てくると、いつも大きなため息をつくことに気付くのだった…。
 ばーちゃんを演じるのは、荻上作品常連のもたいまさこ。今回もまた、そこにいるだけで面白いという存在感を活かした怪演を見せている。何か裏がありそうな、本心を読み取れない眼光が鋭く光る一方で、感情のやりとりに言葉なんていらないと感じさせる独特の佇まいが、映画のテーマと重なり、とても頼もしく見えた。3兄弟が心をオープンにすることで、異質だったばーちゃんが家族の一員として溶け込んでいく。その過程がとてもコミカルに描かれていて楽しめる。時に、絆はDNAよりも確かなものに変わるのだ。
 ばーちゃんがトイレの使用後にため息をつくのは、日本の“ウォシュレット”が恋しいからなのだが、この「トイレット」と「ウォシュレット」の違いこそが、人間関係の深さを決定付けるヒントになる。日本人は物を作る時でも、それを手に取るであろう見えない相手を思いやりながら創作する。だから、何でも世界一便利に出来ている。例えば、小さなことでも「粒ガムに捨てる時用の紙が付いている、本屋でカバーを付けてくれる、タクシーのドアが自動で開く、など日本にしかない気遣いの習慣が日常に浸透している。その代表格がウォシュレットだ。さりげない優しさ、細やかな気遣い、嫌なことは水に流してしまうおおらかさ。言い過ぎかもしれないが、そんなウォシュレット的思いやりが、日々の信頼を築いて行くのだと思う。カナダで撮影した本作は全編英語で、スタッフもキャストもほとんどが外国人だが、『トイレット』の中身は紛れもない日本映画だった。
(中西 奈津子)ページトップへ
   
             
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