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★テンペスト




(C)2010 Miramax Films.All right reserved.
『テンペスト』 (The Tempest )
〜誰も死なないシェークスピアを魔法の映像で〜

(2010年 アメリカ 1時間50分)
監督・脚本:ジュリー・テイモア
出演:ヘレン・ミレン(プロスペラ),
    デヴィッド・ストラザーン(アロンゾー),
    アラン・カミング(セバスチャン),
    クリス・クーパー(アントーニオ),
    トム・コンティ(ゴンザーロー),ベン・ウィショー(エアリエル)
    ジャイモン・フンスー(キャリバン),
    アルフレッド・モリナ(ステファノー),
    ラッセル・ブランド(トリンキュロー),
    フェリシティ・ジョーンズ(ミランダ),
    リーヴ・カーニー(ファーディナンド)
2011年6月11日〜TOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開
6月11日〜テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、
6月25日〜京都シネマにて公開
公式サイト⇒  http://www.tfc-movie.net/tempest/
 シェークスピアの戯曲「テンペスト」の映画化だ。ジュリー・テイモア監督の頭の中から飛び出してきたような映像が続く。それは監督が戯曲を読みながら頭に浮かべていた情景に違いない。そう感じさせられるほど,戯曲の台詞やエピソードがほぼ忠実に綴られていく。ただ一つ,主人公プロスペローが女性のプロスペラに置き換えられた点が原作と大きく異なる。ヘレン・ミレンの名演と相俟って,物語に奥行きが増したように感じられる。
 プロスペラの娘ミランダの手の平に乗った黒い砂の城が崩れていくシーンで幕を開ける。その次のシーンでは,プロスペラの弟アントーニオらの乗った船が嵐に揉まれている。そのとき近くの島では,ミランダがプロスペラに向かって駆けていく。その嵐は,プロスペラの魔法の杖によるもので,ミラノ大公の地位を奪ったアントーニオに対する復讐の始まりだった。スペクタクル性に富んでいて迫力があり,導入部として申し分のないシーンだ。
 空気の精エアリアルの造形がなかなかユニークで,その登場シーンには目や耳を奪われる。嵐のシーンでは,火焔に化けたり分身したりして大活躍だ。また,その歌声はナポリ王の息子ファーディナンドを魅了する。彼とミランダの恋を包み込む歌声の美しさには引き込まれる。一方,エアリエルが黒い怪鳥ハービーに姿を変えるシーンには程よい不気味さが漂っている。復讐に憑かれたプロスペラの暗部を具象化したような迫力に満ちている。
 ヘレン・ミレンは,多様な表情で魅せてくれる。エアリエルや奴隷キャリバンには支配者としての厳しさを示し,ミランダには母親としての優しさを見せる。娘をファーディナンドに贈るときは,嬉しさの中に一抹の寂しさを浮かばせる。裏切り者に対しては炎に包まれて鬼と化すが,目的を果たしても心が満たされないことを知っている。そしてファーディナンドと父アロンゾーの再会シーンを迎える。ミランダが言うとおり,人間は美しい。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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