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  『幸せの太鼓を響かせて
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★幸せの太鼓を響かせて〜INCLUSION〜

(C)2011able映画製作委員会

『幸せの太鼓を響かせて〜INCLUSION〜』
〜一生懸命生きる姿に、心打たれて〜

(2011年 日本 1時間46分)
監督:小栗謙一
出演:岩本友広、高倉照一、山下禅、川ア拓也、辻浩一郎、中村義彦、森田祐司、川原慧介(以上瑞宝太鼓メンバー)、時勝矢一路他
語り:萩原聖人

2011年5月28日(土)〜角川シネマ新宿、梅田ガーデンシネマ他全国順次ロードショー
※5月29日(日) 梅田ガーデンシネマで製作総指揮細川佳代子氏の舞台挨拶あり
・インタビューはこちら
・公式サイト⇒
http://inclusion-movie.com/

 全国2位に輝いたプロの和太鼓集団『瑞宝太鼓』は、メンバーが全員知的障がいをのある人々だ。本作はそんな彼らの練習やコンサートに密着する一方で、彼らの生活をも映し出すドキュメンタリーである。厳しい練習を重ねて奏でる力強い太鼓の音色や、地域社会の中で自立をしながら、町の人たちと共に暮らす姿から、一生懸命生きようとする力強さを感じるに違いない。
 『瑞宝太鼓』のメンバーたちが暮らしている長崎県の雲仙の大自然、それはまるで優しく彼らを包み込むかのように穏やかだ。もともとは立派な入所施設があったこの地で、入居していた知的障がいのある人たちは「家へ帰る」ことを望み、以来民間のアパートを借りてグループ生活をする地域移行が行われたという。『瑞宝太鼓』団長の岩本さんも同じく知的障がいを持つ女性と恋愛結婚し、今は夫婦で子育てしながらプロの奏者として活動しているのだ。
 あるコンサートのあと、同じ知的障害のある人から恋愛についてのことが語られる。「親が交際に反対するから、好きな人がいても自分の胸にしまっている。」と深刻な面持ちで語る男性の言葉に、親から自立して家庭を持つという夢を叶えるために、大きな障害が立ちふさがっている人がまだまだ多い現実と、岩本さんたちが彼らの希望になっていることを知るだろう。

 
本作では、地域社会の中で子育てする岩本さん夫妻や、親の姿を真似て、カッコよく太鼓を叩いてみせる息子裕樹君の姿も映し出される。愛情に包まれ、イキイキしている祐樹君の姿は微笑ましく映るが、一方保育園の先生からは、成長の遅れや集中力のなさが指摘され、訓練が必要とみなされるのだ。人間の個性や能力はこんなに小さい時からある尺度だけで測られてしまうものなのかと、複雑な心境で見守ってしまった。
 『瑞宝太鼓』のメンバーたちは、太鼓と出会って自分を表現できるものを見つけたと皆目を輝かせている。本作の音楽も担当しているプロの和太鼓奏者、時勝矢一路氏は彼らのために新曲を書きおろし、愛のある厳しさで曲をモノにするための指導にあたった練習風景は音楽ドキュメンタリーとしても見応え十分だ。指導法に試行錯誤しながらも、同じプロの奏者として接した時勝矢氏の情熱と、それに応えるべく猛練習を重ねたメンバーの努力の結晶が、ラストのクライマックスへと繋がっていく。
 東京草月ホールでの新曲『漸進打波』披露公演。和太鼓の持つ音色の豊かさと力強さ、叩く姿の力強くも美しい姿、そして演奏する『瑞宝太鼓』メンバーの気迫みなぎる表情、どれもが最高に素晴らしく、忘れがたいシーンとなった。知的障がいのある人たちの自立して生きようとする姿や、さまざまな壁を乗り越えて紡ぎだされる音色が感動を呼ぶと同時に、様々な“個性”を受容する社会の在り方を考えるきっかけとなることだろう。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
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