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★ステキな金縛り (河田充規バージョン)

(C)2011 フジテレビ 東宝
『ステキな金縛り』
〜とにかく映画を観ないと何も始まらない〜

(2011年 日本 2時間22分)
監督:三谷幸喜 
出演:深津絵里,西田敏行,阿部寛,竹内結子,浅野忠信,
    草g剛,中井貴一,市村正親,小日向文世,小林隆,
    KAN,木下隆行(TKO),山本亘,山本耕史,戸田恵子,
    浅野和之,生瀬勝久,梶原善,阿南健治,近藤芳正,
    佐藤浩市,深田恭子,篠原涼子,唐沢寿明

2011年10月29日(土)〜全国東宝系ロードショー
公式サイト⇒  http://www.sutekina-eiga.com/
 法廷ミステリーという器の中に,亡くなった人々がこの世に残した思いなど色々なテイストを詰め込みながら,伏線を張り巡らせ,最後は感動オチで締め括るという,10歳で父親を亡くした主人公エミの成長物語である。2011年は三谷幸喜生誕50周年で,舞台「ろくでなし啄木」「国民の映画」「ベッジ・パードン」と高水準の作品が続き,期待度が相当高まっているのに,それを軽々という感じで飛び越えてしまうのはスゴいとしかいえない。
 俳優が三谷幸喜を敬愛しているのか畏怖しているのかはともかく,役所広司や松たか子も妻夫木聡や綾瀬はるかも登場しないが,超豪華なキャスティングで,皆それぞれインパクトのある役割を果たしている。「ベッジ・パードン」の延長のような変装が楽しい浅野和之。昔の姿で出ている佐藤浩市と篠原涼子に,いっぱしの身なりの割にとても弱い陰陽師の市村正親。「国民の映画」のときと同じく映画大好きな小日向文世。…書き切れない。

 ゴシックホラー調で開幕し,いきなり竹内結子が竹内結子を…。だからといって倒叙ミステリーではない。犯人より落ち武者の幽霊でアリバイ証人の西田敏行に注目が集まる。何しろ被告人は自分が主役じゃないといじけてしまうのだ。六角形のすり鉢状になった法廷が円形劇場の舞台のような効果を生み出している。そこで演じられるのは,ほんのりペーソスの香りが漂う,はっきり言ってかなり笑えるコメディだ。これぞ三谷幸喜の十八番。
 特に,謹厳実直風な検察官の中井貴一が西田敏行の策に落ちて馬脚を現すシーンや愛犬ラブとお別れするシーンは,爆笑ものだ。付いてなくて失敗続きの弁護士エミの深津絵里も負けていない。「ベッジ・パードン」の明るく健気で悲しい運命のアニーとはまた違った役柄で,再び観客を笑わせ,そして泣かせる。落ち武者との出会いは,少し疎遠になっていた父親の優しさに改めて触れる前触れとなり,彼女に欠けていた自信を運んでくれた。
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★ステキな金縛り (江口由美バージョン)

(C)2011 フジテレビ 東宝
『ステキな金縛り』
〜崖っぷち三流弁護士と落ち武者幽霊の
                   法廷証言大作戦!〜

(2011年 日本 2時間22分)
監督:三谷幸喜 
出演:深津絵里、西田敏行、阿部寛、中井貴一、竹内結子、
    小日向文世他

2011年10月29日(土)〜全国東宝系ロードショー
公式サイト⇒  http://www.sutekina-eiga.com/
 幽霊が出てくる作品といえばラブストーリーかホラーといったところだが、未だかつて法廷の場で証言した幽霊はいないだろう。三谷幸喜の3年ぶりとなる新作は、法廷ドラマに幽霊を登場させる、ありえない設定が騒動を巻き起こすサスペンス喜劇だ。前作の『ザ・マジックアワー』に引き続き出演する深津絵里のコメディエンヌぶりが冴えわたる。
 優秀な弁護士だった父を幼い頃に亡くし、父のような弁護士を目指して日々奮闘しながらも、なかなか一人前になれない三流弁護士エミ(深津絵里)。最後のチャンスと上司に言われ、担当したのは妻殺しで捕まった男の裁判だった。当日のアリバイが旅館で一晩中金縛りに遭っていたと証言する男の言葉のウラを取るべく旅館を訪れたエミ。そこで更科六兵衛(西田敏行)という落ち武者の幽霊を目撃し、事件当日の被告人のアリバイを証言してほしいと懇願するが・・・。
 本来なら見えない存在の六兵衛とエミとの法廷証言大作戦は、幽霊の存在を可視化させ、存在や証言能力を認めさせるまで諦めずに続けられる。そのドタバタ劇から生み出された幽霊が動かせる空気を使ってハーモニカでYes/Noを表現するというアイデアは、ラストのエミが会いたいと願い続けた人との再会エピソードにも生かされ、喜劇だけでは終わらせないところが心憎い。

 事件の真相をたどるサスペンス的な一面がある一方、死後の世界を信じるかどうかといった局面も大きくクローズアップされる。中井貴一演じる辣腕検察官しかり、非科学的な死後の世界を全く信じないと言いながらも、幽霊でいいからもう一度会いたい大事な人が別の世界で生きているとどこか信じている。そんな現世と来世の人たちとの思わぬ交流はむしろファンタスティックだ。

 他のキャストはありえなかったというぐらいはまっている西田敏行演じる落ち武者の仕草や行動に腹の底から笑わされ、深津絵里演じるエリとのやりとりの絶妙さと、深まる友情に心温まる。自分に自信がなかった三流弁護士が、崖っぷちの状況をひっくり返していく成長物語に、竹内結子をはじめ豪華俳優陣の怪演ぶりが華を添える本当に贅沢な三谷喜劇。今年一番笑えること間違いなしだ。
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