懐かしいジャッキー・チェンの出世作「ドランクモンキー酔拳」を、中国に併合され近年発展の一途を辿る香港が、あれから33年経って原点に返るかのようにリメイクされた。監督のユエン・ウーピンは「マトリックス」、「キル・ビル」の世界的アクション監督。想像以上に切れ味抜群で、度肝を抜くカンフー・アクションの連打に満腹感いっぱいだ。
1861年、清朝末期、海外列強に侵略され国はズタズタ。戦士スー・サン(チウ・マンチェク)は、反乱軍に捕らえられた親王救出で知事の座を与えられるが、妻シャイオン(ジョウ・シュン)との静かな暮らしの方を選ぶ。 5年後、知事の座を譲ったユアンがスーの父を殺害。武術の正道を外れた父親をスーの父に殺されたことから、自らも邪拳を修得し恨みを晴らしたのだ。今度はスーが父の敵を討とうとするが、ユアンの邪拳で川に転落、スーを追いシャイオンも川に飛び込み、ともに医師ユ(ミシェル・ヨー)に助けられ生き延びる…。
邪拳との戦い、勝つためのスーの超人的な猛特訓は台湾、香港の伝統的な武侠映画の十八番。復讐に燃えるスーの前に、凄腕の相手・ヒゲ仙人と武神が現われ、特訓に一段と熱がこもる。心配したシャイオンが覗くと、そこにはスーだけでしかいなかった…スーの異常さが伝わる場面だ。スーが武神を倒すと“敵”は消え、彼は妻と息子を取り戻しに行く。
クライマックスはスーとユアンの人間ばなれした激突。ジャッキーの時代が平和に思えるほど激突ぶりは凄まじい。ワイヤーアクションをふんだんに取り入れ、およそあり得ないスーパーアクションの連続。このサービス精神がブルース・リー、ジャッキー・チェン以来の香港カンフー映画の神髄だ。
最後にもう一段、エピソードが続き、そこでは酔拳を会得したスーが、武術連盟総裁率いるアントン(デヴィッド・キャラダイン)が仕切るレスラーたちとの格闘技試合に出場し、大男たちをなぎ倒し、中国の誇りと伝統の強みを見せ付ける。先日のブルース・リー映画「イップマン 葉問」、黒澤明のデビュー作「續姿三四郎」同様、アジアの伝統武術VS西洋のボクシングという図式だ。「イップマン」といい「孫文の義士団」といい、そこにGDP2位に躍進した中国の自負心、愛国心をみてしまうのは考えすぎか?
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