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★ストーン

(C)2010 STONEBURGH PRODUCTIONS,INC

『ストーン』
〜原罪と救済―人間は生まれ変われるのか〜

(2010年 アメリカ 1時間49分)
監督:ジョン・カラン
出演:ロバート・デ・ニーロ,エドワード・ノートン,ミラ・ジョヴォヴィッチ,フランシス・コンロイ

2010年10月30日(土)〜銀座シネパトス 他全国順次公開
大阪では、 12月11日(土)
〜シネ・リーブル梅田、MOVIX堺、T・ジョイ京都、他にて公開
公式サイト⇒  http://www.stone-movie.com/

 ストーン(エドワード・ノートン)は,受刑中で仮釈放を求め,審査官のジャック(ロバート・デ・ニーロ)との面談で渡り合う。最初は,ストーンが悪で,ジャックが善という装いだが,やがてその内面が姿を現し,善悪が逆転していく。ストーンは,神の声を聞くため“音”に集中し,啓示的な体験を経て周りが違って見えるようになる。その後,ジャックは,漸く自らの内面の空虚さに気付き,ストーンに耳を澄ませと諭されることになる。

 2人の男に1人の女が絡む。ストーンは,妻ルセッタ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)をエイリアンだと言う。2人の間には,長年にわたって塀の内と外に分断されていたというだけでは説明できない距離感が確かにある。ルセッタにとって神は存在しない。罪の意識のない奔放さから生まれ出る魔性がルセッタに感じられなかったのは物足りない。だが,ジャックは,彼女と絡み合う中で,おそらく意識の彼方に自らの原罪を感じ取ったのだろう。

 オープニングで,若い頃のジャックが態度を豹変させ,常軌を逸した行動に出る様子が示される。妻は,ムシの羽音が木霊する中で,まるで霊感が働いたように,ジャックに「もう耐えられない」「出て行くわ」と告げる。彼は,虚ろにテレビ番組を見ていたが,妻の言葉に逆上して2階へ駆け上がり,幼い娘を抱えて窓から落とすぞと脅迫する。その直後,閉じられた窓にムシが挟まれて羽音が消え,何かが失われたことが強く印象づけられる。

 2つの音が印象に残る。人間が“音”を聞いて神の真理を体験する,その始まりは振動のような羽音だという。それに引き換え,神の声を発信するというラジオ番組は,まるで騒音を撒き散らしているようだ。罪は人間の一部で,高潔さを自任する人間も地獄に落ちるなどと言っている。ジャックは,兄のお陰で正しく生きて来られたと思っているようだが,実際には家族に冷淡で自分さえ見えていない。それに気付いて戸惑う彼の姿が切ない。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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