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★ソフィアの夜明け
『ソフィアの夜明け』 (「イースタン・プレイ」)
〜フリストとウシュルが目指したものは…〜
第22回(2009)東京国際映画祭3冠受賞
(東京サクラグランプリ、最優秀監督賞、最優秀男優賞)


(2009年 ブルガリア 1時間29分)
監督・脚本:カメン・カレフ
出演:フリスト・フリストフ,オヴァネス・ドゥロシャン,サーデット・ウシュル・アクソイ,ニコリナ・ヤンチェヴァ

2010年10月23日〜渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開後、全国順次公開
関西では、11月13日〜シネ・ヌーヴォ、12月〜京都みなみ会館、にて順次公開

公式サイト⇒ http://www.eiganokuni.com/sofia
 フリスト(イツォ)は,美術学校を卒業し,木工所で働いている。メタドン治療を受け,ヘロイン中毒から抜け出そうとしている。体中の至る所で不安が暴れ回っていると言う。禁断症状で虫がはい回っているわけではない。恋人のニコリナ(ニキ)にも心を開けない。おそらく病んだ世の中に彼の魂が侵食されているのだ。ウシュルによると,最近の世の中は何かがどうしようもなく間違っており,自分の魂が病んでいると皆が気付き始めている。
 ブルガリアは,約500年にわたってオスマントルコの支配下にあった。今なおトルコ人に対する反感が根強く残っているようだ。ウシュルと彼女の両親は,トルコ人が俺たちの街にいるというだけの理由で襲われる。隣り合う民族や国家の間に生まれる確執は,時代や場所に関係なく,この世に人類が存在する限り続くのだろうか。フリストは,水晶になって明るい光を放ち,すべての人を愛したいのに,今はどん底で,まるでダメだと言う。
 ウシュルは,君はロボットでプログラムされたとおりに生きていると真実を告げられたとき,なぜか分からないまま何時間も泣き続けた。今はプログラムの解除中で,両親から与えられた価値観や住んでいる場所から自由になる努力をしている。彼女の故郷は太陽で,ウシュルとは輝きを意味するという。彼女も,フリストと同様に,人々を照らし,温かく抱き締める存在になりたいと願っているに違いない。だからこそ,2人の心が通じ合うのだ。
 フリストの弟も自分の行き先が見えないで迷っている。フリストは,弟と2人で高台からソフィアの街を見ているとき,古い家が壊されビルばかりになると嘆息する。だが,彼は最後に希望を見せてくれる。夜明け,トラムが走り,フリストが歩く。空は明けていき,フリストは老人に導かれていく。静かな時間が流れる。彼が安らいでいると,老人は幼子に生まれ変わっている。病んだ世界が癒され,人々が解放される。その日はきっと遠くない。
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