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★シングルマン |
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『シングルマン』
(A Single Man) 〜死を覚悟して初めて見えるものとは……〜
(2009年 アメリカ 1時間41分)
監督・脚本:トム・フォード
出演:コリン・ファース(「アナザー・カントリー」「ラブ・アクチュアリー」)、ジュリアン・ムーア、ニコラス・ホルト(「タイタンの戦い」)、マシュー・グード
2010年10月2日(土)〜梅田ブルク7,T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://singleman.gaga.ne.jp/ |
死を覚悟すると、1日がこんなにも輝いて見えるものなのか――自殺しようとする男の物語でありながら、トム・フォードならではのこだわりのセンスが散りばめられ、煌めくような映像と音楽、そして、コリン・ファースというエレガントな名優が奏でるシンフォニーは、比類なき映像世界へ誘ってくれる。
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アメリカ人のカリスマデザイナー・トム・フォードは、ヨーロッパ人が中心だったファッション界で、倒産の危機にあった高級ブランド「グッチ」を再生させ、「イヴ・サン・ローラン」に新風をもたらし、自身のブランドを立ち上げては世界にその名をとどろかせた。美の極致に挑むように次々と成功を納めてきた彼でも、物質的な人生に虚しさを覚えて苦悩したこともあったという。本作はC・イシャーウッドの同盟小説をベースにしているが、自ら手掛けた脚本に彼自身の私生活を盛り込み、映画監督に初挑戦した意欲作である。 |
1962年のLA。大学教授のジョージ(コリン・ファース)は、16年間連れ添ったパートナーのジムを8ヶ月前に交通事故で失い、深い悲しみに堪えきれずにいた。愛する人のいない人生に意味を見出せず、自ら人生に終止符を打とうと迎えた最後の日。目が覚めてから職場へ向かういつもの情景も彼の目には全てが新鮮で輝いて見える。死の支度をする彼の元に、古い女友達のチャーリー(ジュリアン・ムーア)から電話があったり、教え子ケニーの不可解な行動があったり、彼の決心が揺らぎそうになる。 |
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冒頭、凍てつく大地に投げ出されたジムに寄り添うジョージの姿が映し出される。ジムの事故死と同時に、ジョージの心も凍死してしまったかのようだ。アクティブで陽気なジムが設計した家は、全面ガラスを多用したシンプルで開放的な作りになっている。だが、ジム亡き後では孤独を増長させて閑散と見える。そんな中、几帳面なジョージが死装束を整える姿はあまりにもせつない。また、最後の授業をするため教室へ向かうジョージが学生達の流れに逆行するように歩くシーンでは、生命力溢れる若者を活写して主人公のネガティブな内面を際立たせている。 |
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さらに、あまり好意的に思っていなかった隣家の女の子と銀行で出会ったシーンがいい。真っ白なレース使いのブルーのワンピースを着てお行儀良く立っている少女を、足下から上へ舐めるようなカメラ遣いで見せ、主人公ならずともハッとするような少女の可憐さに驚かされる。ジョージを通して語られる孤独や喪失感は誰もが抱えるもの。「毎日のささやかな瞬間にこそ人生の素晴らしさが宿る」と語るトム・フォードの世界観は、シンプルで透明な美しさにあふれていた。 |
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