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父の初七日

(C) 2010 Magnifique Creative Media Production Ltd. Co. ALL rights reserved
『父の初七日』 (父後七日)
〜台湾語の“疲れた”は“父の死を嘆く”〜

(2009年 台湾 1時間32分)
監督:ワン・ユーリン(王育麟),エッセイ・リウ(劉梓潔)
出演:ワン・リーウェン,ウー・ポンフォン,チェン・ジャーシャン,
    チェン・タイファー,タイ・バオ,ジャン・シーイン

2012年3月3日〜東京都写真美術館ホール、銀座シネパトスほか全国順次公開
3 月31日(土)〜梅田ガーデンシネマ、
順次〜シネ・リーブル神戸、京都シネマ 他にて公開
公式サイト⇒ http://www.shonanoka.com/

 父が亡くなって帰省する阿梅。告別式までの7日間にわたる彼女の“人生で最高にバカげた旅”が始まった。死者に豪邸や車を贈る,年長者に先立つ罪を赦すなど,様々な儀式が執り行われる。もっとも,冒頭でイスラエルの民謡をアレンジした「ハヴァナギラ」(ハリー・ベラフォンテ)が流れ,何だかねじれた雰囲気でワクワク感が生まれる。泣けと言われたらすぐに棺の前で泣かなければならない。たとえ食事中でも歯磨き中であっても。
 開巻間もなく,阿梅が観客に向かっていたずらっぽい笑みを浮かべ,梶芽衣子の「怨み節」が流れる。そして,道士で叔父の阿義が恋仲だった美鳳に振られて数年も落ち込んだ末に阿琴と恋に落ちた,その顛末がコミカルに示される。この脇役の演劇的な人物紹介が時代掛かったメロドラマ調で可笑しく,肩すかしのような音楽と映像のギャップもまた楽しい。しかも,その後の展開でアクセントの役割を果たす阿琴の行動の伏線となっている。
 父とのデュエットの想い出,そしてマイクを持った遺影。その後,阿梅が父の写真をバイクで運ぶシーンにはきっと誰もが涙する。彼女は,バイクを停めてあれこれ考えた末,父の写真を後部座席に後向きに立てかけた。そこから回想シーンとなる。それは18歳の誕生日に父と一緒に乗ったバイクの想い出だった。いま阿梅が何を考えなぜそうしたのかに触れたとき,ズシンとくる。ありふれた情景が意外と心の奥深くにそっとしまわれている。
 台湾映画を観ていると,そこに描かれる人たちの感性が日本人とよく似ていると思うことがある。本作がその好例だ。阿梅は,いつもは父を忘れているが,ふとした切っ掛けでいつも父にタバコを買って帰っていたことを思い出し,涙が止まらなくなる。そこに被さる「ギャラクシア」(アナD)の歌声に乗せられ,ノスタルジックな世界が目の前に美しく広がっていく。7日間の“バカげた旅”が彼女の反語的表現だったことにも泣かされる。

(河田 充規) ページトップへ

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