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 『わたしの可愛い人―シェリ』
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★わたしの可愛い人―シェリ
『わたしの可愛い人―シェリ』 “Cheri”
〜ベル・エポック時代を生きた高級娼婦の恋・金・プライド〜

(2009年 イギリス=フランス=ドイツ 1時間30分)
監督:スティーヴン・フリアーズ
原作:コレット(岩波文庫刊『シェリ』)
出演:ミシェル・ファイファー、ルパート・フレンド、キャシー・ベイツ他

2010年10月16日〜Bunkamuraル・シネマ、ほか全国にて順次公開
11月6日〜梅田ガーデンシネマ 

公式サイト⇒ http://www.cetera.co.jp/cheri/
 19世紀末から20世紀初頭にかけてパリが文化的・知的発展の発信地であった頃、ココットと呼ばれる高級娼婦は今でいう“セレブ”な存在であったそうだ。自身も恋多き人生を送った女性作家コレットの代表作『シェリ』は、女性の永遠の憧れともいえる年下の男との甘美な愛とその結末を描いている。映画化が難しいと言われた本作を『クィーン』のスティーヴン・フリアーズ監督は時代を超えて共感を呼ぶ、自立した女性のストーリーとして現代に送りだしたと言えよう。
  主人公の元ココット、ミアを演じるミシェル・ファイファーは、恋に溺れず、ブライドを持って生きる賢く魅力的な女性として、文句なしの美しさを放っている。一方、同じく元ココットで引退後は資産を増やすために息子シェリの縁談を画策、放蕩息子だったシェリを価値ある男にするために、ミアに委ねることまでやってのけるマダム・ブルーの存在は、ココットの現実的な一面を垣間見せてくれる。キャシー・ベイツの演じるマダム・ブルーの富に固執する姿や、こってりと装飾された衣装、屋敷の内装は、ミアのお金に執着せず、エレガントで品のあるファッションの着こなしとは対照的で、二人の生きてきた足跡が映像からも浮かび上がってくる。
 マダム・ブルーによって仕掛けられたミアとシェリとの共同生活が、財産あるココットの娘との結婚で終末を迎えたとき、お互いに人生唯一の人と会えなくなった悲しみに打ちひしがれる。親子ほど年の離れた恋、若い娘を知ってしまったシェリに対して戻らないと諦めながらも、どこか戻ることを信じるミア。恋の達人であっても、年を重ねていても、会えない苦しみに耐える姿は儚い一人の女性そのものだ。
 人生唯一の人とお互いに気付いた二人の結末には、ミアのココットとして生きてきたプライドが滲み出ている。ベル・エポックと呼ばれる当時のパリの華やかな雰囲気や、元ココットたちの生き様を描きながら、恋をしてもがき苦しみながらも、毅然とした大人の女性であることを貫いたミアの強さを最後に感じずにはいられなかった。

 

(江口 由美)ページトップへ
   
             
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