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★サラエボ,希望の街角

(C) 2009 Deblokada / coop99 / Pola Pandora / Produkcija Ziva / ZDF-Das kleine Fernsehspiel / ARTE
『サラエボ,希望の街角』 ( Na Putu英/ON THE PATH)
〜戦争の傷跡に迫る監督の才腕が光る〜

(2010年 ボスニア・ヘルツェゴビナ・オーストリア・ドイツ・クロアチア 1時間44分) 監督・脚本:ヤスミラ・ジュバニッチ
出演:ズリンカ・ツヴィテシッチ、レオン・ルチェフ、ミリャナ・カラノヴィッチ

2011年 3月26日〜テアトル梅田、4月9日〜神戸シネ・リーブル神戸、公開予定:京都シネマ
公式サイト⇒ http://saraebo-kibou.com/
 ボスニア内戦から15年。復興を遂げ、かつての賑わいを取り戻しつつあるサラエボで、戦争が今なお人々の心に深い傷跡を残していることを静かに描き出す秀作。
客室乗務員として働くミナは恋人のアマルと同棲中。戦友に誘われ、アマルがイスラム原理主義にのめりこんでいくことから、穏やかで幸せな生活が一変。教団のキャンプ生活から戻ったアマルの変わりように戸惑うミナ。食事や衣服など日常的な生活習慣でも、厳しく戒律を守ろうとするアマルに、二人の亀裂は深まっていく…。
 妊娠を待ちわび、互いに愛し合い、幸せそうにみえた二人も、実はそれぞれ心の奥に深いトラウマを抱えていることが、物語の展開とともにわかってくる。監督は、二人に寄り添うようにして、その内面を繊細に伝え、戦争による心の傷を静かに浮彫りにしていく。その穏やかな語り口が見事だ。アマルは、かつて従軍した戦場で、弟を亡くし、戦争後遺症に苦しみ、宗教に救いを求める。ミナもまた、内戦で両親を殺され、戦争の痛ましい記憶を心の奥底に封印していた。決して癒されることのない悲しみを抱え、アマルを深く愛しながらも、自分らしい人生を見失うことのないミナの懸命な姿が胸を打つ。
 映画は、男女差別が厳しく、女性の自由を許さない教団の一面をもリアルに描き、イスラム原理主義者が社会問題化している、今のサラエボの現状を切り取る。イスラム原理主義者たちの河畔でのキャンプ生活がどこか牧歌的で、過激なテロリストのように描かないところは好感を持った。
 かつての生家を訪ねるミナの瞳からふいにこぼれる大粒の涙に、深い悲しみがあふれ、胸を締め付けられる。宗教に縛られることなく、自由に、自分に正直に、前向きに未来を模索しようとするミナの明るい笑顔に、明日を切り開く力と、サラエボの未来をみる。
(伊藤 久美子)ページトップへ
   
             
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