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サラの鍵

(C) 2010 - Hugo Productions - Studio 37 - TF1 Droits Audiovisuel - France2 Cinema
 『サラの鍵』 (Sara’s Key)
〜サラの透徹した悲しみを通して見る未来の光〜

(2010年 フランス 1時間51分)
監督・脚本:ジル・パケ=プレネール
原作者:タチアナ・ド・ロネ著「サラの鍵」(新潮クレスト・ブックス刊)
出演:クリスティン・スコット・トーマス,メリュジーヌ・マヤンス,ニエル・アレストリュプ,フレデリック・ピエロ,エイダン・クイン

2011年 12月17日 銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー
関西では、2012年1月21日(土)〜シネ・リーブル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 にて公開

・監督インタビュー⇒こちら
・公式サイト⇒
 http://www.sara.gaga.ne.jp/
第23回東京国際映画祭監督賞/観客賞W受賞!

 少女サラが弟ミシェルとベッドの上で戯れている。最初に彼女の楽しそうな表情が目に焼き付けられる。だが,フランス警察が突然やって来て,その笑顔は打ち消される。その後,サラが笑顔を取り戻すことはなかった。1942年7月16日,ユダヤ人1万3000人が逮捕され,うち8000人が屋内競輪場(ヴェルディヴ)に収容された。その日の朝,サラは咄嗟にミシェルを納戸に隠して鍵を掛けた。そのことがサラ,そしてジュリアの運命を変える。
 ジャーナリストのジュリアは,2009年のパリで夫ベルトランと12歳になる娘と暮らしていた。彼女は,ヴェルディヴ事件の取材をする中で,夫の祖母から譲り受けたアパートにかつてサラとその家族が住んでいたことを知る。その一方で,待望の第二子を妊娠したにもかかわらず,夫からは中絶を求められる。ジュリアは,ただ一人何かに突かれたようにサラの足跡を追い掛け,その深い悲しみに触れたとき,自分の未来を見出すことができた。
 サラは,生き延びてデュフォール夫婦の世話になるが,1953年に突然その前から姿を消し,2年後にレインズファードとして生きているとだけ伝える。息子ウィリアムがユダヤ人では命が危ないと言って洗礼を受けさせ,スタジンスキの名を隠し通した。父リチャードは,息子にサラと初めて会った日の話をする。彼女は私が人生で出会った中で最も美しく,最も悲しい女性だったと語る。彼女は,1966年に9歳の息子を残して再び姿を消した。

 ジュリアとウィリアムの目の前に,窓の外を見ているサラがいる。その情景は,シュールで,実に感動的だ。連綿と受け継がれてきた人類の歴史の中に確かに個人が存在する。どのような歴史であろうとそれを乗り越えて個人が生き続けてきた。過去を変えることはできなくても,それに触れることで未来への扉が開かれる。そんな想念が広がっていく。そして,いま生きている個人が過去と未来を繋ぐ存在であることの重みを実感させられる。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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