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  『再生の朝に
    -ある裁判官の選択-』
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★再生の朝に-ある裁判官の選択-

『再生の朝に-ある裁判官の選択-』 (透析/JUDGE)
〜人間らしく生きること,その重さと輝き〜

(2009年 中国 1時間38分)
監督:リウ・ジエ
出演:ニー・ダーホン,メイ・ティン,チー・ダオ,ジェン・ジェン,
    ソン・エイシェン,カオ・チュンシュエ

2011年3月5日(土)〜イメージフォーラム、銀座シネパドス
5月〜第七藝術劇場
ほか全国順次公開

(C) 2009 3C FILMS CO., LTD All Rights Reserved

 ティエンは,河北省の中級人民法院の裁判官だ。情に流されず厳格に法律を適用してきた反面,やや人間味が乏しいように見える。しかも,盗難車によるひき逃げで一人娘を亡くしたばかりで,落ち込んだ妻を抱えている。彼の内面を映すようにほの暗く静かなトーンが続く中で,ティエンと妻が食卓を挟んで座るシーンが繰り返され,2人の微妙な変化が映される。ティエンが他人の痛みを感じて開眼していく過程が巧みにすくい取られている。
 チウは,6万元相当の自動車2台の窃盗罪で起訴され,1997年7月20日に死刑判決を受ける。中国では,同年10月から改正後の刑法が施行されることになっていた。チウの罪は,旧法では死刑に値するが,新法では死刑は適用されない。ティエンは,裁判時には旧法が適用されるので死刑はやむを得ないと判断した。情にほだされない謹厳実直な人物像が浮かび上がる。一方,チウは,高級人民法院での刑の減軽を望み,臓器提供を申し出ていた。
 中国では臓器提供のドナーの9割以上が死刑囚だという。リーは,チウから生体腎移植を受けるため,裁判所に車2台を寄付すると申し出るが,ティエンの反対で裁判所の同意を得られない。そこで,死刑執行後に腎臓をもらおうと考え,チウの同意を得るため遺族に礼金10万元の支払を提案する。チウの弟の「兄の腎臓を売るのと同じだ」,リーの婚約者の「腎臓のために死ぬなんて」という台詞は,監督の頭に浮んだ疑問の表白に違いない。
 ティエンは,娘の死で痛手を受けた妻のために小犬を飼っていた。だが,許可を得ておらず,警察の取締りで犬を取り上げられそうになる。明日登録すると言っても,待ってもらえない。この体験がティエンを変える。一方,チウは,二審でも死刑が維持され,1週間以内に刑が執行されるという。その執行場所は屋外で、カメラが漸く大地の広がりを映し、明るい陽光に包まれる。その奇妙な開放感もまた,ティエンの心を映しているようだ。
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