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  『再会の食卓』
  武部好伸バージョン
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★再会の食卓 (武部好伸バージョン)
『再会の食卓』 (原題:APART TOGETHER)
〜美味しい料理が三角関係を解消!?〜

(2010年 中国 1時間38分)
監督:ワン・チュエンアン
出演:リサ・ルー、リン・フェン、シュー・ツァイゲン
2011 年2月26日〜梅田ガーデンシネマ、4月2日〜シネリーブル神戸、4月〜京都シネマ他全国順次公開
2010年度ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品

公式サイト⇒ http://shokutaku.gaga.ne.jp/

 これは尋常な話ではない。40数年前、国共内戦によって新婚の夫と生き別れ、上海で新しい夫や子供、孫たちと暮らす女性の元に、台湾へ逃れた元夫がやって来て、彼女を“略奪”しようというのだから。今の旦那は面子が丸つぶれ。惨め、可愛そう。きっと壮絶な三角関係に発展すると思いきや、意外や意外、いたって穏やかなムードで物語が展開する。

 それは今の夫の人間性だけではなく、料理に負うところが大きい。事あるごとに食卓を囲むシーンが映し出され、刺々しくなりそうな場の空気をやんわりと和らげる。魚介類をふんだんに使った上海料理の数々。彩りも鮮やか。「招かれざる客」である元夫も一緒になって箸を突っつく。ハリウッド映画なら、殴り合いになっているケースなのに、ここでは感情をストレートにぶつけず、それぞれの気持ちを尊重しようとする。ご馳走の力ってすごい。そして礼節を尽くすことの大切さもよくわかった。これぞ大人の世界。
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★再会の食卓 (江口由美バージョン)
『再会の食卓』 (原題:APART TOGETHER)
〜分裂の歴史のはざまを生きた夫妻に甦った時間〜

(2010年 中国 1時間38分)
監督:ワン・チュエンアン
出演:リサ・ルー、リン・フェン、シュー・ツァイゲン
2011 年2月26日〜梅田ガーデンシネマ、4月2日〜シネリーブル神戸、4月〜京都シネマ他全国順次公開
2010年度ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品

 公式サイト⇒ http://shokutaku.gaga.ne.jp/

 『トゥーヤの結婚』や『紡績姑娘』(大阪アジアン映画祭2010にて上映)で困難に直面する女性の姿を丹念に描き出してきたワン・チュエンアン監督。本作では、中国と台湾の分裂の歴史に翻弄された主人公に『ジョイ・ラック・クラブ』のベテラン女優、リサ・ルーを起用し、夫婦がそれぞれに生きてきた歴史とその行方を映し出す。

 上海で暮らすユィアー(リサ・ルー)のもとに、生き別れとなって台湾にいる夫イェンション(リン・フェン)からの便りが届く。今の夫シャンミン(シュー・ツァイゲン)はイェンションの来訪を快く受け入れるが、子どもたちは複雑な気持ちで来客を迎える。その後、イェンシェンが、ユィアーに台湾で一緒に暮らすことを申し出たことから、家族の中に大きな波紋が広がっていくのだが・・・。
 失った時間を取り戻すかのように心が動いていくユィアーとイェンション。妻の願いを叶えようと明るく振る舞うものの心底では寂しさを感じているシャンミン。もう若くはない夫妻に突然訪れた“再会”は、それぞれが口には出さずに胸の内にしまってきた思いを吐き出すきっかけとなり、お互いに意外な一面を垣間見るのだ。
 上海の下町、古いけれど大きな台所での歓迎会、家族で出かけたレストラン、路地にテーブルを並べたお別れ食事会など、ユィアー一家がシャンミンのために集まった食卓を通して、家族に与える波紋や感情の変化が、生々しく描き出される。一方、建築中の高層マンションや、その後立ち退きのため高層マンションに引っ越したユィアーたちの姿も捉え、変わりゆく上海の姿と変わる家族の姿をオーバーラップさせている。「新しい家になって広くなったのに、誰も遊びにこない。」と嘆くユィアーの言葉は、胸に残る。開発によって失くしていくのは、まさに食卓を囲む家族の風景かもしれない。
 長年連れ添った主人か、若き日に愛し合いながら離れざるを得なかった主人か。究極の選択を迫られたユィアーの姿は苦しいはずなのに、まるで乙女のような輝きを放っていた。過去を乗り越えて前を向いて生きていく祖母や祖父の背中を見て、子や孫たちは何を感じたのだろうか。変わりゆく上海を舞台に、ワン・チュエン・アン監督が描いた“世代を越えて伝承していくべきもの”が観ている者にもしっかり感じられるだろう。
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