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★Ricky リッキー

リッキー役のアルチュールちゃん (生後8ヶ月位)
『Ricky リッキー』
〜夢と現実の間のシュールさをさり気なく〜

(2009年 フランス 1時間30分)
監督:フランソワ・オゾン
出演:アレクサンドラ・ラミー,セルジ・ロペス,メリュジーヌ・マヤンス,アルチュール・ペイレ

2011年1月22日(土)〜梅田ガーデンシネマ、2月5日(土)〜神戸元町映画館、京都シネマ にて公開
公式サイト⇒ http://www.alcine-terran.com/ricky/
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(C) Eurowide Film Production - 2008 - Tous droits reserves
 カティは7歳の娘リザと2人で暮らしている。ルーチンワークに埋没したような生活が映し出される。変化のない日常に少々疲れ気味だ。カティが今日は仕事に行きたくないと言い,リザが赤ちゃんの人形を投げ付ける。2人とも幸せから取り残されたようだ。そんな母と娘が新しい父親を得て人との繋がりを確信する。3人が一つの輪で結ばれるラストが美しい。彼らが普通の幸せを取り戻す過程が虚実を綯い交ぜにしてシュールに描かれる。
 シーンの展開が小気味よい。ジェットコースターのような流線ではなく,順に明滅していく光点のような感覚だ。急に離れた箇所に飛んだり意外な方向で点灯したりする。カティが勤め先の同僚パコと「結婚するかも」と言ってからリッキーの誕生まで,スピーディで鮮やかな手際だ。そして,カティとパコが口論し,リッキーの肩胛骨付近にアザができ,不穏な空気が流れる。そこには,人生の起伏や哀楽が凝縮されたような時間が流れている。
 リッキーのアザの部分から翼が生えてくる。だが,天使のようなポエティックなイメージではなく,鳥の羽根が成長するような生々しい現実感をもって描かれる。しかも,カティはリザにリッキーが皆と違うことを内緒にするように言う。非現実的な出来事が起こっているはずだが,それを予期された現象のように受け止めている。そこから生み出される夢と現実の間のような独特の雰囲気に酔わされる。その後の展開に対する興趣が湧いてくる。

左から、アレクサンドラ・ラミーとアルチュールちゃんを抱くオゾン監督
 さらに一捻り加えられている。プロローグでは,福祉の相談をするカティの表情と言葉が生々しい。生活が苦しくて子供2人を育てる気力がないと言っている。一方,エピローグでは,パコがバイクの後ろにリザを乗せて出掛け,家に残ったカティのお腹は膨らんでいる。リッキーの存在自体が曖昧なものにされている。湖の畔でカティが体験した奇跡もまた,彼女の空想だったのかも知れない。幸せは,人々の心から生まれてくるものなのだ。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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